第24章―4
戦車の話が長引いたので、他の話をするならば、戦車大隊長である米内洋六中佐の直属の上官は、第四海兵師団長の栗林忠道中将だった。
これは戦車大隊が、師団司令部直轄部隊扱いになっていることから、起きていることだった。
欧州に派遣されている日本海兵師団においては、師団付属の戦車大隊を適宜に集中、分割することで、戦場に対応しようと考えていたのだ。
そうなると、師団司令部直轄部隊とするのが相当とされた次第だった。
そして、戦車部隊は、ある時は戦場における矛先として、ある時は敵の反攻を食い止める盾として、使われることを想定して訓練に励むことになった。
更に言えば、その訓練内容については、陸軍から派遣された面々でさえ、目を剥く程のモノに成らざるを得なかった。
実際、西住小次郎大尉でさえ、
「付いていこうとするのが、やっとの気がしますよ。ここまでの訓練が、欧州では必要になっていたのですか。日本で行っていた訓練が、如何に時代遅れの代物だったか、痛感します。実際には、ここ数年で急激に進歩したのが、頭では分かるのですが、何だか10年以上前の頭で、訓練等をしていた気がします」
と米内中佐に、(流石に部下の前で言ってはならないと自制して)陰で言う有様の訓練になっている。
さて、その訓練の内容だが。
「通信機は必ず整備しろ。通信が戦場では重要極まりない」
米内中佐自身がヘッドセットを付けて、部下達に指示を下しながら、戦車の運用訓練をしている。
というか、それこそヘッドフォンと咽喉マイクを組み合わせないと、どうにも会話が成り立たない、と言っても過言ではない程の騒音が、戦車内では溢れている。
その為に怒鳴り声を挙げるのが、かつては稀では無かったようだが、今ではヘッドセットの為に、かなりどころではない状況改善が為されており、乗員間の意思疎通が順調に行えるようになっている。
そして、様々な通信を行なうことで、様々に連携して戦うのが、当然になっている。
「航空支援は、どのように行われる」
「向こうからの連絡によると、北側から南側に抜けるような形で、今日は行うとのこと」
「了解したと返信しろ」
通信士(兼前方機銃手兼副操縦手)とやり取りをしながら、米内中佐は、ふと考えた。
一式中戦車は5人乗りだ。
砲塔内に3人、車長、砲手、装填手が乗り込み、車体内に2人、操縦手、通信士が乗り込んでいる。
97式中戦車までは4人乗りで、砲塔内は2人が基本だった。
その為に、車長が砲手を兼ねており、敵を射撃しつつ、指揮も執らねばならなかったが、一式中戦車に成ったことから、車長は基本的に指揮に専念できることになった。
本当に便利になったモノだ。
(とはいえ、実際には、乗員が負傷したり、病気になったりしたことで、車長が砲手を行なうことも、それなりにはある。
これは、車長>砲手>装填手>操縦手>通信士の序列で、序列が下の者が負傷等したら、すぐ上の者が代われるように訓練等が基本的に行われており、資格授与等も為されている。
とはいえ、それこそ急造訓練、付け焼刃が稀ではなく、米内中佐にしても、砲手を何とか務められるものの、部下の西住大尉に言わせれば、
「全く以て言い難いことですが、大隊長の腕では、砲手試験の資格に合格できません」
と言われてしまった。
(本来は、戦車の乗員になるには、順番に資格試験に合格する必要がある。
だが、米内中佐の場合、階級の問題と、戦車の操縦が出来て、装填は問題なく行えることから、車長になった。
尚、西住大尉は元からの戦車乗りであり、当然に砲手資格を持っている)
そういった裏事情はあるが、米内中佐は車長として、基本的に指揮に専念できるようになっていた。
この辺りの戦車の乗員の役割分担ですが、私なりに調べた結果ですが、この辺りに私は詳しくないので、間違っていれば緩い指摘を平にお願いする次第です。
ご感想等をお待ちしています。




