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第3章―4

 近衛文麿首相の家庭、成育歴等の話になります。

 くどい、と言われそうですが、意外と知らない人が多いようですし、史実の近衛首相の行動に多大な影響を与えているようなので、この話で描くことにしました。

 米内洋六少佐は、どうしても上海にいることから生じることだが、新しく誕生した近衛文麿内閣、特に近衛首相個人に対する様々な情報について、もう少し詳細に知りたいものだ、という隔靴搔痒の想いをせざるを得なかった。


 米内少佐の知る限り、近衛首相は、それこそ五摂家筆頭を務める近衛家の当主であり、名門中の名門の出身としか言いようが無い存在だった。

 その一方で、家族関係は微妙としか言いようが無く、近衛首相には信頼できる身内は乏しいとも、米内少佐は色々な筋(新聞や雑誌、更には海軍軍人同士の噂等)から聞いている。


 何故にそうなっているのか、というと。

 まず近衛首相の実母だが、近衛首相を産んで、そう間を置かずに亡くなったとか。

 その為に、その妹(近衛首相からすれば叔母)と近衛首相の実父は再婚することになり、近衛首相は継母に育てられたのだが。


 表向きは、継母は立派に実母のように近衛首相を育て上げたらしいが、裏に回れば、あの子、文麿が死ねば、私の産んだ子が近衛家の当主に成れるのに、と触れ回っていたらしい。

 そして、近衛首相は成人するまで、実母が亡くなっていたのを知らず、実母と慕っていたのは継母で、しかも、そのように継母が触れ回っていたのを、周囲から教えられたとか。


(尚、この辺りを聞いた米内少佐は、自分の妻の久子と娘の藤子の関係を想起せざるを得なかった。

 自分としては、藤子が成人してから真実を教えるつもりだったのだが、久子が早くに藤子に自分が継母なのを伝えたのは、結果的にはだが、良かったのではないか。

 そう自分としては考えざるを得なかったのだ)


 更には、近衛首相が12歳の時に実父が亡くなり、多額の借金を相続する羽目にもなった。

 そうしたことが、

「この世のことは嘘ばかりだ」

というのが、近衛首相の口癖になった原因との雑誌記事を読んだ覚えがある。


 ともかく、そうしたことが(異母)弟妹との疎遠な関係を、近衛首相に生じさせているとか。

 最も、妻の千代子(毛利高範子爵の娘)とは恋愛結婚したようで、妻子関係は良好とも言われている。


 そして、東京帝大に最初は入学したが、京都帝大に移り、共産主義者の河上肇に指導を受けたことから、社会主義思想に被れたという新聞記事を読んだこともある。


 1916年に25歳になったことから、近衛首相は、公爵家当主として貴族院議員になった。

 更に第一次世界大戦終結に伴って開催されたパリ講和会議に随行した経験、更には大アジア主義者として知られた実父の間接的な影響もあって、反白人主義者、革新主義者として、近衛首相は徐々に周囲に知られていくことにもなった。


 そして、五摂家筆頭の近衛家当主という家柄、更には東京帝大や京都帝大に入ったという高学歴、180センチを超す高身長と端正な風貌、更にタカ派の明確な主張を好んで行ったことが、近衛首相の人気を高めることになり、40歳になる前後から、

「将来は日本の首相に成るだろう」

と多くの人から目されることになり、その家柄も相まって、42歳の若さで近衛首相は貴族院議長に就任することになった。


 それに相前後して、近衛首相は自らが首相に就任した際、いわゆる政策ブレーンを確保しようとして、昭和研究会を創設するようなこともしている。


 だから、こういった経緯から2・26事件直後の新首相として有力視されたが、その頃の近衛首相は心情的には皇道派寄りだったことから、皇道派を斬らざるを得ない首相に成るのを拒否したらしい。

 そして、廣田内閣に因って皇道派への粛軍が為されて、林内閣が倒閣した後、近衛内閣が成立することになったのだが。


 米内少佐には何となく癇に障るモノがあり、それが当たることになった。

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