第23章―13
更にカテリーナ・メンデスは、戦果報告後に司令官室に別途、呼び出されることにもなった。
「おめでとう。カテリーナ・メンデス中尉。昇進と叙勲の連絡だ」
「えっ」
司令官室に入室し、司令官に対して敬礼をした瞬間の司令官の言葉に、カテリーナは非礼とは考えたが、思わず絶句してしまった。
自分が中尉になるとは。
尚、目の前の司令官は男性で、元は英空軍に所属しており少佐だったが、ユダヤ人部隊の編制に伴って出向し、更に中佐に昇進した人物だった。
(これはユダヤ人部隊を、急速に拡大させる方便という側面からでもあった。
ユダヤ人部隊も軍隊である以上、階級制度を採らざるを得ない。
とはいえ、いきなり新人を高級士官に任命等は出来ず、それなりの教育等が必要不可欠だ。
その為にユダヤ人部隊に志願したり、出向したりした面々は、一階級昇進した階級に任ずることで、少しでもユダヤ人部隊を拡張しようとすることになったのだ)
「中尉に昇進するとは想わず、非礼な態度を執り、申し訳ありません」
慌ててカテリーナは、謝罪したが、司令官は妹を見るかのように慈愛に満ちた態度で言った。
「何を言う。我がユダヤ人航空隊初のエースにして、世界初の女性のエースだ。胸を張りたまえ。そして、更なる奮戦を引き続き期待する」
「はっ、ありがとうございます」
カテリーナは、型通りと言えば型通りの挨拶をしながら、考えた。
自分が中尉に成れるとは思いも寄らないことだった。
「尚、中尉への昇進に伴い、今後は4機を率いる小隊長ということになる。引き続き、部下の錬成等にも励んでくれ。とはいえ、君の指導が上手いことは、私も含めて皆が知っていることだ。そうでなければ、僚機が2機撃墜という戦果を挙げられていないだろう」
「過分な御言葉です」
「謙虚になる必要は無い。それこそ君の名は、我がユダヤ人部隊内のみならず、英空軍や日本を始めとする諸外国の空軍、航空隊関係者にまで知られつつあるからな。今回の一件(エース、撃墜王の資格を取得し、更に昇進、受勲したこと)は、君の名を更に高めることになるだろう」
二人は、更なるやり取りをした。
実際、司令官の言葉は、カテリーナを称賛する余り、少なからず大袈裟になっていたが、必ずしも全てが誤りとは言い難かった。
カテリーナは、以前にスピットファイア戦闘機というハンディを貰えたという側面もあるが、日本陸軍航空隊の檜与平少尉が操る零式艦上戦闘機相手の模擬戦闘で、事実上の勝利をユダヤ人部隊どころか、英空軍関係者の眼前で示したのだ。
更に、そういった技量から、日英米の各種単座戦闘機の試験飛行任務にも駆り出されることになり、更にその際に、出来る限りは公平な審査態度を示したことから、周囲の評価が上昇する事態が起きた。
そして、1941年1月以降、英仏日等の連合軍航空隊(その中には、ポーランドやオランダ、ベルギーといった亡命政権所属の面々や、表向きは存在しないことになっている米陸海軍の義勇兵の面々までいたが)による、ドイツ軍の事実上の占領下にあるフランス本土への戦術爆撃が本格化した中で。
カテリーナは少尉として二機分隊の長機になり、P39戦闘機を操って、度々、爆撃機部隊を援護する事態が起きたのだ。
その際にカテリーナは、部下に対する心配りを常に心掛けることで心服させて、共同で戦果を挙げている。
その為にカテリーナと部下の合計戦果は、不確実まで入れれば10機を超えており、文句なしにユダヤ人部隊の二機分隊としては、トップを占める現状にある。
司令官(及び更に上層部)は、そうしたこともあって、カテリーナを高く評価し、この際に中尉に昇進させて、叙勲することにしたのだ。
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