第23章―10
さて、少なからず場面は変わる。
日本陸海軍航空隊の一部が、ドイツ本土への戦略爆撃に注力していた1941年春の頃、ユダヤ人航空隊の主な任務は何かというと。
「我が(ユダヤ人部隊の)爆撃機部隊の主力が、日本製の99式襲撃機を装備するとはね」
カテリーナ・メンデスは、自らはPー39戦闘機を操りつつ、そんなことを呟いていた。
実際問題として、爆撃機部隊の主力が99式襲撃機を装備するのは悪い判断とは言い難い。
ユダヤ人航空隊の主任務は、地上部隊に対する直協任務だ。
その任務を遂行する航空機として、99式襲撃機はそれなりに優秀なのだ。
(尚、メタい話をすることになるが、この世界の)99式襲撃機の火力は(史実より)強化されている。
日中戦争で敗北した戦訓から、襲撃機に対して少しでも火力強化を求める声が高まった為だ。
そうしたことから、翼内機関砲は12.7ミリ2丁に強化されており、後部座席に装備された旋回機銃も12.7ミリ1丁を装備するようになっている。
更に史実と同様、日本製の12.7ミリ機関砲は炸裂弾が使用可能なようになっていた。
(全くの余談をこの際にすれば、米国製のブローニング12.7ミリ機関砲は炸裂弾を持っておらず、こうしたことから、史実の米軍は、しばしば日本軍の12.7ミリ機関砲を20ミリ機関砲と誤認する事態が引き起こされている。
我が米軍の12.7ミリ機関砲より、日本軍の12.7ミリ機関砲の方が、弾に威力があるとは考え難い、との米軍内での偏見が、そのような事態を史実では引き起こしたのだ)
更に言えば、99式襲撃機は15キロ小型爆弾12発か、50キロ爆弾4発を搭載可能だった。
(大よそだが、15キロ小型爆弾は105ミリの軽榴弾砲弾に、50キロ爆弾は155ミリの榴弾砲弾とほぼ同等の重量、威力を誇る)
だから、99式襲撃機が12機で一斉に爆撃を行なえば、105ミリの軽榴弾砲ならば144門、155ミリの榴弾砲ならば48門の一斉射撃を行ったのと同等の威力があると言えるのだ。
そして、これだけの爆撃が行われたら、戦車部隊であっても、それ相応の損害が出るのは必至だった。
更に、そこに12.7ミリ機関砲の銃撃が行われては。
戦車は何とか耐えられても、補給物資を運ぶトラック等に、それなりどころではない損害が出るのは当然としか、言いようが無い。
こうしたことが、ユダヤ人部隊に99式襲撃機を積極的に採用させる事態を引き起こしたのだ。
そして、99式襲撃機は、ユダヤ人部隊の期待に応えるだけの活躍を示しつつある。
単純で頑丈な固定脚は、少々の不整地等を苦にしない離着陸性能を発揮しており、又、防弾にもそれなり以上に配慮(胴体下面等には6ミリの防弾鋼板を張り、燃料タンクは自動防漏タンクになっている)されていることから、文字通りに戦場の蛮用に耐える襲撃機だった。
尚、日本がユダヤ人部隊に99式襲撃機を提供したのは、それなりの見返りを期待したからだった。
カテリーナは、爆撃機部隊の知人から聞かされた話を思い起こしていた。
「実戦で得られた戦訓を、日本軍に対して無償で提供するように指示を受けているの。訓練や演習等で、実戦を想定することで得られる戦訓もあるけど、やはり実戦に勝る戦訓は無いから。まあ、これだけの機体を提供されている以上、それ位は安い対価と私は考えているけど」
知人はそう言ったのだ。
カテリーナは考えた。
多くのユダヤ人が住みつつある、満州国の大地。
その地における最大の脅威がソ連軍だ。
ソ連軍の侵攻を阻止するとなると、航空優勢を確保し、有効な地上襲撃が必要不可欠だ。
そうしたことからすれば、ユダヤ人部隊が協力するのは当然か。
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