第23章―7
ともかく、そういった様々な背景が絡んでいることから、加藤建夫少佐率いる日本陸軍の百式戦闘機部隊は、結果的にルール工業地帯直前まで日本海軍の重爆撃機部隊の護衛を担う筈が、ルール工業地帯上空まで護衛を行なうことになっていた。
加藤少佐にしてみれば、色々と考えざるを得なかった。
自分がドイツ空軍の防空戦闘機部隊の指揮官ならば、ルール工業地帯到達前に日本海軍の重爆撃機部隊の迎撃を行なって、少しでも重爆撃機部隊の戦力を削ろう、と試みるだろうに。
だが、ドイツ空軍の防空戦闘機部隊は、ルール工業地帯上空での迎撃に全てを賭けつつあるようだ。
これは裏返せば、フランス本土に展開しているドイツ空軍の戦力が、かなり低下しているということではないだろうか。
本来ならば、フランス本土で、それなりにドイツ空軍の戦闘機が迎撃してくるだろうに。
だが、ドイツ空軍の戦力が低下しつつあることから、フランス本土上空で日本陸海軍航空隊を迎撃するのを断念する事態が起きているのだろう。
何しろ、フランス本土上空では、別の形での空戦が多発しつつある、と自分は聞いている。
そうした背景から、ルール工業地帯まで、今日の自分達は順調にたどり着けることになったのだろう。
実際、加藤少佐の考えは、それなり以上に当たっていた。
それなりの数が確保されないと、フランス本土に展開しているドイツ空軍の防空戦闘機部隊は、日本陸海軍航空隊の戦略爆撃を迎撃するのを断念する事態が起こりつつあった。
フランス本土のドイツ空軍の防空戦闘機部隊にしても、全てが日本陸海軍航空隊の戦略爆撃に対する迎撃任務に充てられている訳では無い。
それこそ、詳細は後述するが、1941年春現在、フランス本土上空は蜂の巣をつついた、と言っても過言ではない程に、英仏空軍や日本陸海軍航空隊の戦術攻撃が跳梁する事態が起きており、フランス本土に展開しているドイツ空軍の防空戦闘機部隊の主力は、それへの対処を主任務にするようになっていた。
そして、その主任務に対処するとなると、日本陸海軍航空隊が行う戦略爆撃への対処が、どうしても疎かになるのは止むを得ない事態だった。
そして、このフランス本土における戦術攻撃を、ドイツ空軍の防空戦闘機部隊は軽視できなかった。
確かに大量の損害を被ることは少なかったが、そうは言っても、英仏日等によるブルターニュ橋頭堡からの反攻作戦を阻止するために、それなり以上と言える陸軍が展開しており、それを維持する為の補給物資等を輸送するのは、必要不可欠だ。
だが、英仏空軍や日本陸海軍航空隊の戦術攻撃は、そういった部隊への直接攻撃や補給物資等に対する攻撃を繰り返しており、軽視できない損害を与えているのだ。
その為に、ドイツ陸軍はフランス本土内において、物資等の不足から防御陣地の構築が、予定通りには進捗しない等の状況さえも起きつつある。
他にも、ドイツ陸軍の移動や様々な物資の輸送についても、英仏日等の戦術攻撃の脅威から、出来る限りは夜間に行うことが奨励、というよりも義務化されつつあり、そうしたことが、フランスに展開しているドイツ陸軍の士気を下げ、不満を高める要因になっている。
更に言えば、これまでの経緯も相まって、ドイツ陸軍内においてドイツ空軍に対する不信感が爆発寸前にまで高まっていると言う現実があっては、現場に近いフランスに展開しているドイツ空軍の面々程、ドイツ陸軍に対する配慮を行わざるを得ず、その為に戦闘機部隊を展開する必要から、日本陸海軍航空隊が行う戦略爆撃部隊への迎撃を躊躇する事態が起きつつあったのだ。
(更にもう一つの理由もあって迎撃を躊躇うのだが、それは後で描く)
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