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第3章―2

 そうした中で、米内洋六少佐の親族(?)である米内光政中将は、更なる出世をしていた。

 横須賀鎮守府司令長官から1936年12月に連合艦隊司令長官に就任、だが、僅か2か月後に林銑十郎内閣の海軍大臣に転じていたのだ。

 更に1937年4月には、お手盛り人事と言われそうだが、海軍大将に昇進してもいる。


 その背景だが、米内少佐の下に送られてきた米内大将からの私信によると。

(以下は、その私信の要約である)


 林首相としては、予てから親交のある艦隊派の末次信正海軍大将を、海軍大臣にしたかったらしい。

 だが、海軍上層部の多くが、末次海軍大臣案に猛反発した。

 当時の海軍を握っていたと言えるのは、伏見宮博恭王軍令部総長だが、伏見宮総長の信認を、この当時の末次大将は失っていたからだ。


(史実を交えて描くが)以前は艦隊派の同志ともいえる二人だったのだが、1932年頃以降は徐々に二人の仲が悪くなっていた。


 5・15事件の黒幕の一人として末次大将の名が挙がったことが、艦隊派の後押しをしていた犬養毅首相を暗殺するような事件を引き起こすとは、と伏見宮総長の機嫌を損ねたらしい。

 更にどちらが先か不明だが、現役海軍大将でありながら、政治的活動に末次大将が前向きになっているのを知った伏見宮総長は末次大将を更に嫌うようになり、伏見宮総長の機嫌を損ねたことを知った末次大将は政治的活動でそれを取り返そうと、更に政治的活動に前向きになる悪循環も起きていた。


 そうしたことから、山本五十六海軍次官らが動き、伏見宮総長の同意を得て、「海軍の総意」として末次大将と犬猿の仲である、連合艦隊司令長官である米内中将を林内閣の海相に押し込んだのだ。


 尚、米内大将自身の米内少佐への私信におけるボヤキによれば、

「海軍軍人として最高の栄誉といえる連合艦隊司令長官から、一属吏といえる海軍大臣への異動等、本音では嫌だ、と言いたかった。でも、そんなことを公言しては、卑怯だ、と周囲から袋叩きの目に遭いそうで受けるしかなかった」

とのことである。


 後、余談に近いが、末次大将と米内大将が犬猿の仲になった原因だが。


 末次大将が5・15事件を起こした海軍青年将校を支持している、と米内大将らが睨んでいたのが大きい。

 実際に、5・15事件に多大な影響を与えた藤井斉海軍少佐は、信頼する上官として末次大将を挙げ、又、5・15事件を起こした海軍青年将校らは、末次大将の主張した「統帥権干犯」を、事件を起こした理由として挙げている。

 こうしたことからすれば、末次大将が幾ら否定しても、米内大将らが末次大将を疑うのも無理はない。


 又、海軍は伝統的に現役軍人たる者は政治不関与だ、をモットーとしてきたが、末次大将が民間右翼等と接近し、政治的活動に励んでいたのも、米内大将の不快感を高めることになった。


 そんなことが絡み合い、少なからず先走った話になるが、近衛文麿首相から内閣参議として、内閣に協力して欲しい、という要請を受けた末次大将は、

「軍令部総長に自分が成れないのなら、内閣参議になる」

と放言し、その放言が伏見宮総長の逆鱗に触れたことから。

(伏見宮総長にしてみれば、末次大将が軍令部総長から伏見宮は引退しろ、と言っているように受け取られたのだ)

 伏見宮総長の意を受けた米内海相によって、末次大将は予備役編入処分を受けて、海軍軍人としての生命を絶たれる事態が引き起こされた。


 更に後述するが、近衛首相を巡る大醜聞が起き、末次大将は近衛首相に近しいと見られていたことから、これ幸いと海軍内から生け贄に近い扱いを受けることになった。


 話が先走り過ぎたので戻すが、米内海相の誕生は歴史を後に動かすことになる。

 この辺りの米内提督の言動や末次提督の行動等は、色々とツッコまれそうですが、ほぼ史実に准じています。


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