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第22章―3

 そう言った状況に、(この世界の)ユーゴスラヴィア王国は、1941年春にあった訳だが。


 皮肉なことに、この世界のドイツ政府は、対ソ戦どころではなく、日米を背後に控えた英仏等の本格的な反攻に備えざるを得ない状況にあった。

 だから、ユーゴスラヴィア王国を始めとする東欧諸国の各国政府に対して、ドイツ政府は、自らと軍事同盟を結ぶように圧力を掛けられる状況ではなく、むしろ、東欧諸国が、自らへの好意的中立を保つように外交努力を尽くしていた。


 そして、東欧諸国の各国政府にしても、ドイツ政府の外交姿勢は好ましいモノだった。

 客観的に見る限り、ドイツ政府は徐々に泥船状態に陥りつつある。

 何年先になるかは分からないが、ドイツは、今度の世界大戦でも敗北するだろう。

 だから、ドイツと軍事同盟を締結したり、ドイツ側に立っての参戦は論外だ。

 とはいえ、英仏等がすぐに救援に駆けつけられる状況ではない以上、ドイツ政府に対して、あからさまな敵対の態度を、自国政府が執る訳にはいかない。


 そう多くの東欧諸国の各国政府の最上層部は考えており、それこそ地中海方面からの英仏等の大規模な支援が期待できるギリシャ政府が、敢えて言えば、というレベルで反ドイツの態度を執っているくらいで、それ以外の東欧諸国の各国政府は、親ドイツの好意的中立を崩そうとはしていなかった。


 だが、このことは、ユーゴスラヴィア王国からの分離独立を訴えるクロアチア人が結成したウスタシャ等のユーゴスラヴィア王国内の反政府過激派、というか、武装勢力にしてみれば、昏い未来を予感させることでもあった。


 ユーゴスラヴィア王国が、セルビア人主導になったのは、第一次世界大戦でセルビア王国が英仏側で勇戦敢闘しことが大きかった。

 それに対して、クロアチア人は、第一次世界大戦時は、オーストリア=ハンガリー二重帝国の国民だったのであり、そうしたことが、この頃の英仏政府等が、基本的にセルビア人に好意的な態度を執る背景としてあったのだ。


 更に言えば、ウスタシャ等のユーゴスラヴィア王国内の反政府過激派は、ヴラド・チェルノセムスキーを実行犯として、1934年にフランス、マルセイユで、時のユーゴスラヴィア王国国王、アレクサンダル1世とフランス外相ルイ・バルトゥーの射殺を果たすというテロ事件を行ってもいた。


(尚、このテロ事件だが、ユーゴスラヴィア王国内の反政府過激派が行ったのは間違いない、とされるのだが、ウスタシャがやったのか、内部マケドニア革命組織がやったのか、更に両者が連携してやったのか等の詳細については、(史実でも、この世界でも)21世紀現在も、謎のままである)


 そうした背景からすれば、ドイツが第二次世界大戦で敗北した場合、ユーゴスラヴィア王国側に英仏政府等が積極的に加担して、クロアチアの分離独立は夢となり、更にはドイツやイタリアの圧力によって成立したクロアチア自治州さえも廃止に追い込まれるのでは、という危惧を、ユーゴスラヴィア王国内の反政府過激派の主な面々は抱くようになっていたのだ。


 こうした背景が、1941年4月10日、ウスタシャ等のユーゴスラヴィア王国内の反政府過激派の武装蜂起を引き起こすことになった。


 ユーゴスラヴィア王国内の反政府過激派は、クロアチア、マケドニア等の分離独立を宣言し、臨時政府を樹立して、ドイツ政府やイタリア政府に対して、独立を維持する為の軍事協力を求めたのだ。


 カナリス提督の未来知識では、全く起きなかった事態であり、カナリス提督は第一報を聞いた時、想わず呆然自失することになった。

 その一方、ヒトラー総統を始めとするドイツ政府は、対応に苦慮することになった。

 何故にウスタシャ等が暴発したのだ、と一部の読者の方々に考えられそうなので補足説明すると。

 

 このまま何もせずにいては、ナチスドイツは崩壊し、後ろ盾を無くしたウスタシャ等は、世界大戦に勝利した英仏等から親ナチス勢力と見られて、その支援を受けたユーゴスラヴィア王国政府によって徹底した武力弾圧を受けて崩壊するだろう。

 それならば、現段階で武装蜂起することで独立国になり、英仏軍が迫った段階で降伏した方がまだマシだ、と考えたことから、ウスタシャ等は武装蜂起して、独立宣言をしたのです。


 御都合主義にも程がある考え方で、小説的過ぎる、と言われそうですが、世界史を細かに見ていくと、それなりにあるのが、何とも言えません。


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― 新着の感想 ―
ユーゴスラビアでの内戦に際しては英独ともに時期的にも投入戦力も微妙としか言えませんね。 ただバルカン半島のギリシャが連合国寄りなのが幸いしそうですけど史実とは逆にギリシャを拠点にユーゴに関与するんで…
 ドイツもイギリスも「表玄関が騒がしいから裏口は静かにしててくれよ」と願ってたのにボヤが発生!ダンケルクって無いしフランスも脱落して無いので余力はあるけどグルリ地中海は距離が遠いイギリスと陸路で距離は…
地中海に第二戦線が来ちゃう?
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