第21章–3
2話連続投稿の2話目です。
尚、アンナと小林亨二の結婚ですが、1941年2月初めのことです。
その為に、この頃になってから、カテリーナとカルロは妹の結婚を知ることになりました。
そんな想いを米内仁がしていたすぐ後の頃、カテリーナ・メンデスは、弟のカルロを呼び寄せて、半ば密談をすることになっていた。
その理由だが、自分達からすれば末妹になるアンナが、急きょ結婚すると言う一大事を、手紙で自分達に知らせてきたことだった。
更に言えば、アンナの相手だが、カルロにしてみればともかく、カテリーナにしてみれば、知らぬ仲とはとても言えない米内洋六の縁者、ややこしい説明になるが、米内洋六の愛人で亡くなった小林千代(米内藤子の実母でもある)の長兄の次男になる小林亨二と結婚することになっていた。
そして、アンナは小林亨二と結婚することで、日本人になり、そうしたことから、帝国女子医学専門学校の軍医士官養成課程への入学試験に合格できた。
何れは軍医士官として、兄姉の役に立ちたい、ともアンナは手紙に書いてきたのだ。
「アンナが軍医士官になるなんて」
カルロは、自分の目の前で、途方に暮れたような声を挙げている。
「何で、そんな決断をしたんだ。戦場では何が起こるか分からない。軍医士官と言えど、戦闘に巻き込まれる危険性が絶無とは言えないのに」
カルロは、更に自分に、姉のカテリーナに愚痴って来ていた。
「恐らくだけど、色々な事情が絡んでいるわね」
カテリーナは、自分の頭の中、考えを整理する為もあって、カルロに低い声で言った。
「事情?どんな事情がある、というの?」
自分程は頭が回らないカルロは、さっぱり事情が分からない、という声を挙げた。
「まずは結婚相手よ。私も貴方も、小林亨二を知っていた?」
「いや、全く知らない」
カテリーナの問いかけに、カルロは即答した。
「ということは、誰かが急に妹のアンナに、小林亨二との結婚を勧めたのよ」
「一体、誰が勧めたのさ」
姉の言葉に、弟は驚いたように言った。
「恐らく米内藤子が動いて、勧めたわね」
カテリーナは、断定するように言った。
「米内藤子って誰?」
米内藤子を知らないカルロは、戸惑うしか無かった。
「貴方は知らなくて当然よ」
斬り捨てるように言って、カルロからのそれ以上の質問を、カテリーナは拒んだ。
カテリーナの気色というか、機嫌から、カルロは沈黙を強いられた。
カテリーナは、カルロを沈黙させた上で、アンナからの手紙の内容を、頭の中で反芻した。
小林亨二は、本当に色々な意味で良い人らしいが、近視と乱視があり、視力が裸眼では0.3程度、かなり強度の眼鏡を使って、やっと0.7といったところらしい。
だから、日常生活に差し支えは無く、普通に事務系の仕事は出来るのだが、徴兵検査では丙種合格さえ無理で、それこそ地元の横須賀が軍港都市ということもあり、肩身の狭い想いをしているらしい。
そうしたことから、アンナとの縁談が小林亨二に持ち上がった。
自分は軍人には成れないが、妻のアンナは軍医に成りたい、と言っている。
それを夫として積極的に支援したい、と言うことで、自分も愛国者の一人だ、と小林亨二は、周囲に訴えたいようだ。
そして、そういった事情から、小林亨二とアンナは結婚にまで至ったのだ。
更にそれを誰が裏で画策したのか。
カテリーナの脳裏では、米内藤子の姿がチラついてならない。
自分は歯牙にも掛けず、むしろ養父になる米内洋六に惹かれてならなかったのだが、米内仁は自分に対して、かつて交際を申し込んでおり、仁の許嫁の藤子が気を揉む事態が起きたのだ。
そして、アンナと自分はよく似ている。
仁がアンナに交際を申し込み、更には自分との婚約破棄をするのでは、と危惧した藤子が動いて、小林亨二とアンナを結婚させたのだろう。
「全く女衒ね」
藤子が芸妓の置屋の孫娘なのを思い起こし、カテリーナは鼻を鳴らして言った。
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