第20章―5
第5話はカナリス提督視点が、主な話になります。
そんな想いを米内洋六中佐やその家族、周辺の人達がしている頃。
カナリス提督は、色々と物思いに耽らざるを得なかった。
本当にどうしてこうなっているのだろうか。
自分の記憶が正しければだが、この頃のドイツは、史実だとノルウェー等を完全征服し、フランスにヴィシー政府を樹立し、イタリアが同盟国として参戦し等、欧州の覇者と言って良い現状にあった筈だ。
そして、1941年5月半ばを期して、対ソ戦に踏み切る準備を着々としていたのだ。
だが、自分が歴史に介入した結果。ベネルクス三国(本国)こそ征服できたが、ノルウェーは二分されており、そういった事情から、スウェーデンは反ドイツの中立国となり、鉄鉱石等の輸出を止めた。
又、フランス正統政府は、今もノルマンディー、ブルターニュ半島一帯を固守しており、そこを反攻拠点として、フランス本国全土の奪還を呼号している。
イタリアは、むしろこの方が良かったのかもしれない、という考えが自分の脳裏を掠めてならないが、未だに中立を維持している有様だ。
そして、この世界のバトルオブブリテンは、私の情報分析が正しければ、という大前提が付くが。
(こういった戦争中の敵味方の損害というのは、お互いに都合の良い情報を発信し合うことから、完全に食い違った情報が乱れ飛ぶのが現実で、そう言ったことから、精確な情報分析が必要不可欠になる)
どう見ても、ドイツ側の大敗に終わったようだ。
その結果、北海からベネルクス三国、フランス本国上空の航空優勢は、完全にドイツ空軍から失われる事態が起きているようだ。
実際、ドイツ陸軍はフランス本国内では、ほぼ夜間行軍を強いられているらしい。
昼間行軍を行なっては、それこそ英空軍を主力とする空襲による損害が懸念されるのが現状だとか。
ゲーリング元帥は、
「今から一月後には、新型戦闘機を投入できる。又、新兵の技量が訓練で向上するのも相まって、フランス本国等での航空優勢を、我がドイツ空軍は速やかに完全奪還できる」
と獅子吼しているが。
それこそヒトラー総統にさえ、ゲーリング元帥は、
「バトルオブブリテン終了直後から、貴官は毎日、同じことを言っているではないか」
と呆れ返られており、ドイツ陸軍上層部、多くの将軍達からは、
「ゲーリング元帥は、ほら吹き元帥だ」
と嘲られているのが現実だ。
本当にどうしてこうなっているのだ。
中国国民党政府に肩入れして、我が祖国のドイツは日本と手を組まないようにすべきだ、という私の考えが誤っていたのだろうか。
では、どうすれば、私は良かったのだろう。
史実から振り返る限り、日本と我が祖国ドイツが手を組むのは、破滅の路を歩むのは間違いない。
だから、日本の敵に回り、中国国民党政府を介して、米国と我が祖国ドイツを同盟させよう、と私は考えたのだが、私は何処で間違えたのだろうか。
本当にどうすれば、良かったのだろうか。
自分なりに考える程、どうにも分からなくなる現実がある。
そして、この状況で歴史が流れていくならば。
「恐らく、1941年春以降、我がドイツ本土に対する英仏日等の連合軍による戦略爆撃は本格化し、更に史実と異なり、ベルリン上空まで連合軍の戦闘機が舞う事態が起きるだろうな」
カナリス提督は、冷徹に今後のことを考える程に、そう考えざるを得なかった。
そして、そうなっては、ドイツ軍の勝算は絶無になる。
「自分が転生者としては、極めて無能な人間だったということか。ベルリン陥落の際に自裁して、自分なりの責任を取るしかないな」
カナリス提督は、そう内心で呟くしか無かった。
我が祖国ドイツを第二次世界大戦で勝者にするなら、どうすれば良かったのだろうか。
誰か教えて欲しい。
これで、事実上の第2部完結になります。
一月程、幾つかの別作を描きながら、事実上の第3部の大プロットを立てた後に、今のところは、第二次世界大戦終結までを描く第3部の投稿を開始する予定です。




