第19章―1 日本海兵隊の再編制と拡大
新章の始まりで、日本海兵隊の拡大、装備の充実が主な話になります。
さて、少なからず時が相前後することになる。
日本海兵隊は、英本土で再編制を行なうと共に増援を受け取ることになっていた。
これまで1個師団体制だったのが、戦時ということから2個師団体制を採ることになる筈だった。
だが、日本陸軍等が横槍を入れたことから、日本海兵隊は急きょ4個師団体制に、1940年3月までに拡大することになったのだ。
これは幾つかの事情が絡み合った結果だった。
「米国政府、軍もケチですな」
「自分がルーズベルト大統領の立場でも、同じことをするから、人のことは言えないが。君がハル国務長官の立場ならば、どうするかね」
「当然、同じことをしますよ。何か問題が」
米内光政首相と吉田茂外相は、閣議の場でそんな会話をし、それを畑俊六陸相や堀悌吉海相は、複雑な表情を浮かべて聞く事態が、1940年秋、つまり(この世界の)欧州での西部戦線が、ドイツによるベネルクス三国征服、ノルマンディー、ブルターニュ半島を除く仏本国領の大半の征服と言う事態が起きた直後に起きていた。
畑陸相が、渋々といった感じで口を開いた。
「満蒙防衛の為、という理由では、米国からのレンドリースは受けられない、ということですか」
「そういうことです」
吉田外相が、(何時ものことだが)傲岸不遜な表情で言い放った。
「ソ連の脅威を米国政府上層部の面々に懸命に訴えましたが、あの国の政府上層部には、それなりに共産主義者がいるようでした。それを指摘したら、(近衛文麿)首相がソ連のスパイだった日本政府に言われたくない、と逆鱗に触れたようでして」
何処まで悪いと考えているのか、そんなことまで葉巻をふかしながら、吉田外相は言った。
「それで、この秘密提案ですか」
堀海相が、それこそ自分の嫌いな食べ物を我慢して全部食べろ、と親に言われたような子どものような口調で、言い出した。
海軍としても、本音では受け入れたくないが、他に手段は無い、と言っても過言ではない。
それこそ陸戦訓練を受けた海軍士官や下士官は数少ないのだ。
急速に海兵隊を拡張するとなると、無理難題を受け入れるしかない。
その為に、さしもの堀海相でも、一言、陸軍に嫌味を言わねば気が済まなかった。
「陸軍の師団を、欧州に派遣して貰えませんか」
「それは不可能です。陸軍は皇国の防衛の為にいるのであり、欧州派兵は、全く想定していません」
畑陸相の内心も、ほぼ堀海相と同じなこともアリ、仏頂面で言葉を返してきた。
更に衆議院議員出身の閣僚、米内内閣の一員に至っては、
「全く以てその通り」
「陸軍を欧州に派遣すべきではない」
と畑陸相の尻馬に乗る発言をし出した。
それを横目で見ながら、吉田外相は考えた。
陸軍が欧州派兵に反対し、衆議院議員が反対するのは当然だ。
陸軍は郷土師団制度を採用している。
その為に、日本の国益に直接は関わらない事態に、陸軍を派遣することになれば、故郷の連隊、師団が派遣されかねない事態が招来されかねない。
そうなった場合、表向きは御国の為に、という派兵の大義名分から反対できない、という却って鬱屈した想いが、派遣された地元では溜まる事態が起きるのだ。
そして、それこそ隣県の部隊は派遣されないのに、自分の故郷の部隊は派遣されたのか、隣県の部隊も派遣すべきだ、という主張が裏で巻き起こることになり、日本の輿論は戦争拡大一直線になりがち、という事態が引き起こされるのだろう。
そういった背景から、陸軍が欧州派兵に反対し、衆議院議員出身の閣僚は陸軍に賛同するのだろうな。
皮肉がきつすぎる、と言われかねない考えであると言われて当然のことなのだろうが。
そんなことを自らの眼前の光景から、吉田外相は考えざるを得なかった。
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