第18章―20
そんな様々な想いを、自らの妻の米内久子や、又、カテリーナ・メンデスがしていること等、二人の傍にいない米内洋六少佐にしてみれば、詳細が分かる訳が無かった。
それに洋六自身が、(次章で詳細を後述するが)それこそ自らが所属する海兵師団の再編制、及び戦力増強に手一杯であると言う現実も絡んでいたのだ。
だから、様々なつながりから小耳に入ってくる、かなり精確性の欠ける噂話等を聞いて、色々と妻の久子やカテリーナのいる現地の状況を憶測するしかないのが、洋六の現実と言っても過言では無かった。
それでも、洋六は色々と、そう言った情報から考えざるを得ないことが増える一方だった。
妻の久子は、色々と過酷な状況に置かれているようだ。
自分が知る限りだが、妻のような状況に置かれては、かなり熟練した整備員でも無理ですと喚き散らすような状況下にまで、一時は陥っているようだった。
とはいえ、様々な援助があった為に、文字通りに何とか切り抜けられたようで、陸軍が航空隊の整備兵を欧州に派遣して来るという情報が、ほぼ確実で間違いなくなりつつあることから、本来の任務である海軍航空隊の整備に戻れるようになりそうだ、とのことで、素直に自分は喜ぶべきなのだろうが。
その一方で、海軍航空隊は、本格的に重爆撃機装備を推進しつつあるとのことで、このまま行けば、戦略爆撃任務、極論すればドイツ本国等の都市に対する爆撃任務に就くことになるとの情報が、自分の耳に入りつつある。
本当にそんなことになったら、妻の久子は、心を痛めることになるのではないだろうか。
夫として洋六は、久子が実は弱い人間であることを熟知している。
何かと言うと、娘の藤子に久子が辛く当たってきたのは、最愛の息子の仁を藤子に取られるのではないか、と勘繰ったことからだ。
そして、二番目の子を死産して、又、洋六の兄でもある最初の夫の正一が亡くなったのを、周囲に散々に責められたのを、久子は切り抜けてはいるが、それは酒がほぼ飲めなかったのが、一因だった気が自分はしてならないのだ。
下手に酒が飲めたら、酒に逃げて(当時で言えば)重度のアル中に、久子はなっていた気が自分はする。
だから、心が弱いことから、久子は女性補助部隊に、本来は志願すべきでは無かったのに、邪推から暴走して、女性補助部隊に志願することになり、とうとう下士官にまでなってしまった。
本当に今更だが、久子が壊れねば良い、と自分は願うしかない。
そして、カテリーナだ。
カテリーナも、其処まで深く考えて英軍所属のユダヤ人部隊に志願してはいなかった。
あくまでも安住の地を得るための方便だったのだ。
だが、訓練を重ねるにつれて、優秀な軍用機操縦士として、素質を花開かせることになり、今ではユダヤ人部隊どころか、英本国空軍上層部にまで、カテリーナは名を知られる事態が起きているらしい。
そうしたことから、カテリーナは間もなく最前線での戦闘任務に投じられるのではないか、と自分も考えざるを得ないのだが。
そこまで彼女のことを深く知らないので、完全な自分の憶測になるのだが、最前線に赴いて、敵機を攻撃することになれば、彼女も悩むのではないか。
彼女は、父をドイツ軍に殺されたようなモノ(細かく言えば、上海事件でのことで、実際に手を下したのは中国国民党軍だが、その背後にドイツ軍がいたのは公知の事実だ)で、その復讐だとして、ドイツ軍を攻撃するのだ、と割り切れば良いのかもしれないが。
彼女は下手に頭が良いだけに悩む気がして仕方がない。
洋六は、其処まで考えを進めたが、その一方で、自分にはどうにもならないこと、と彼女達二人の今後に諦念を覚え、無力感に捕らわれた。
これで、第18章を終えて、次話から新章、第19章になります。
第19章では、この世界の日本海兵隊に関する話が主になります。
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