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第18章―14

 少なからず先走った描写までありますが、どうか緩く見て下さい。

 このカテリーナ・メンデス少尉と檜與平少尉の単機模擬戦闘の結果だが、すぐにブレスト(近郊)基地内に広まることになり、更には基地の外にまで伝わることになって、最終的には米内光政首相の耳にまで届くことになるのだが。


 取りあえず、それを聞いた米内久子は、色々と複雑な想い、考えをせざるを得なかった。

 気に食わない泥棒猫のような女だが、本当に戦闘機の操縦士としては極めて優秀なようだ。

 これまで百式戦闘機は、世界最高峰の戦闘機の一つ、とこれまでの百式戦闘機が優勢な模擬戦闘の結果から、自分達は誇りを持って考えていたが、彼女は、その誇りを打ち砕いたのだ。


 加藤建夫少佐は、この結果を踏まえて、改めて部下に以下のように訓示したという。

「相手を女だから、と言って見下すようなことはするな。そして、戦闘機の戦術等、自らの得意戦術だからと言って、それに頼り過ぎるな。ある意味では、戦術等はジャンケンのようなものだ。相手がもっと得意な戦術であれば、それに乗らず、自分が苦手な戦術でも選ばねばならないことがある、とそう考えろ」

 そして、その言葉を聞いた部下達も、それに肯かざるを得なかったとか。


 又、英空軍やユダヤ人部隊でも、メンデス少尉の模擬戦闘の結果を受けて、百式戦闘機相手に格闘戦を挑むのを止めて、一撃離脱戦を挑む者が増えており、それによって、百式戦闘機は、英空軍やユダヤ人部隊に対して、徐々に不利な結果が出つつある、と自分は聞いている。


 こうしたことから、何れはだが、一撃離脱戦に対応できるように、百式戦闘機の改修が行われるのではないだろうか、と言う噂までもが、自分達の周囲では流れつつある現実が起きている。


 その一方で、彼女は近い将来というか、このブレスト基地を去ってすぐに、恐らく最前線で戦闘機操縦士として戦うことになるだろう。

 何しろ腕の良い戦闘機操縦士だ、と多くの人に印象付けられる結果を出したのだ。

 英空軍と言うか、ユダヤ人部隊が、彼女を最前線に送り込まない訳が無い。


 でも、それは彼女の本意ではないらしい。

 夫の言葉を信じれば、自分と同様に補助任務に就くつもりで、ユダヤ人部隊に志願したところ、操縦士としての適性を見出されて、更に戦闘機乗りとしても見込まれたことから、今に至るとか。


 自分も同じように考えて、補助部隊を志願した身なので、文字通りにブーメランで却ってくるのだが。

 本当に人殺しになる覚悟が無かったのに、人殺しになっていき、しかも、それが得意になるとは。

 彼女はどう考えているのだろう。


 本当は戦場に、最前線には赴きたくないのではないだろうか。

 でも、実際に戦場に赴かされては、彼女は戦わざるを得ないのだ。

 彼女は、何処までの覚悟を持って戦うことになるのだろうか。


 久子は、そんなことまで考えを進めてしまった。


 だが、この時の久子は知らないことだったが、数か月後に久子も似たような苦悩を抱えることになる。


 結果的にだが、このような泥縄式は良くないと言う声が、日本本国の陸海軍内部で高まり、更に陸軍が実際に米軍機等を導入した場合に備える必要もあるとの声まで上がったことから、陸軍からも整備部隊が本格的に欧州に派遣されることになったのだ。


 又、米国製重爆撃機への機種転換訓練が、それなりに進捗したという事情もあった。

 その為に、久子らの女性補助部隊は、本来の任務と言える米国製重爆撃機を装備した部隊の整備任務に戻ることになったのだ。


 そして、重爆撃機部隊は、ドイツ本土等に対する戦略爆撃任務を遂行することになり、それによって民間人までもが大量に死傷しているという報道を、久子は見聞きすることになって。

 しばしば、久子は苦悩することになった。

 この世界では、日本本土に対する戦略爆撃をドイツが行える訳が無く、そうしたことから、米内久子らを始めとする一部の日本軍の面々は、戦略爆撃に対する報復として自らも戦略爆撃を行い、その結果として民間人を殺傷すると言うのを受け入れられない事態が起きたのです。


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― 新着の感想 ―
米内首相の耳まで届くとは百式の改修にも繋がることになるのは想像できましたが、総理までとは。元々海軍機なので総理も自信を持っていた戦闘機の弱点が出てきたのでこれはこれでいいのではないかね。総理直々に改修…
>しばしば、久子は苦悩することになった。 冷たい言い方ですが、自分で選んだ道ですから。殆どの将兵は悩む余裕も無いと思います。更に言えば勝っているから悩める。負けていたら悩めません。
 バトルオブブリテンの余波で「相手の都市への爆撃」を双方が応酬した結果「戦場の日常的光景」と化し、連合国側としては助っ人的立場で自身の本土が安泰な日本人には「民間人を巻き込んでの災禍」に忌避感を抱いて…
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