第18章―11
実際、地上から見る限り、カテリーナの目からしても、百式戦闘機にハリケーン戦闘機では勝ち味は薄いようだった。
スピットファイア戦闘機ならば、何とかならないだろうか、そんなことをカテリーナが考えていると、いつの間にか、カテリーナの考え、想いが周囲に漏れていたらしい。
「お姉ちゃんも、操縦士かい」
加藤少佐の部下の一人が、カテリーナに声を掛けてきた。
「ええ」
「戦闘機に乗ったことがあるのかい」
その加藤少佐の部下にしてみれば、女性のカテリーナが戦闘機を操縦したこと等は無く、恐らく輸送機等を操縦しているのだろう、此処には通訳として来ただけだろう、と予断を持っていたのだ。
そうしたことから、心なしか、揶揄するような口調で、カテリーナへ話しかける事態が起きていた。
「スピットファイアにも、ハリケーンにも乗ったことがあります」
揶揄されたと感じたカテリーナは、冷たくそう答えた。
「ほう」
そのやり取りが聞こえた加藤建夫少佐が、声を掛けてきた。
「君の腕前は、どの程度だ」
「そろそろ戦闘機に乗って、実戦に投入できそうな程の腕前です。フェリー任務で、かなりの飛行経験を積み重ねていますし」
部下を揶揄されたと感じたユダヤ人部隊の一人、カテリーナの上官が、カテリーナに肩入れするように口を挟んだ。
「そうか」
加藤少佐は、少し考え込んだ。
「君の腕前を見たい。ハンデとして、スピットファイア戦闘機を英本国空軍から借りてこよう。それで、百式戦闘機と模擬戦闘をやってくれないか。その相手は、こいつにやらせよう」
考えから覚めた加藤少佐は、カテリーナにそう言い、相手として、カテリーナに声を掛けてきた部下を指名した。
「分かりました」
カテリーナは即答した。
実際、カテリーナにしても、腕がうずいている、と言っても過言では無かった。
通訳を主にせねばならない為、カテリーナ自身の飛行訓練が、儘ならない事態が起きていたのだ。
更に言えば、ユダヤ人部隊はハリケーン戦闘機装備であり、百式戦闘機相手では、歯が立たないことはないが、かなり劣勢なのを、ユダヤ人部隊の面々の多くが、痛感してもいたのだ。
そうしたことから、ユダヤ人部隊内では、それこそ百式戦闘機を導入したい、との声が挙がりつつあったが、その一方で、日本本国内での需要を満たすのが、現状では手一杯と聞かされてもいる。
そして、スピットファイアならば、どうだろうか、とユダヤ人部隊の面々の多くが考えているところに、日本陸軍から労を取ってくれる話が飛び込んできたのだ。
今回の模擬空戦について、カテリーナを止めるどころか、カテリーナを後押しする声が、更にユダヤ人部隊内部で挙がるのは当然のことだった。
「決まりだな」
加藤少佐は、そう言って、英本国空軍に声を掛けて、カテリーナの為にスピットファイアを借りて来ることになった。
その準備に、ほぼ一日掛かったことから、結果的に翌々日の午前に。
「それでは始める」
加藤少佐の号令の下、カテリーナの操るスピットファイア戦闘機と、加藤少佐の部下の百式戦闘機は、模擬の単機戦闘を行なうことになった。
カテリーナには秘策があった。
バトルオブブリテンで、増槽をドイツ空軍機が中々捨てなかったこともあって、英本国空軍のスピットファイア戦闘機は格闘戦で勝利を掴もうとし、そして、実際に勝利を収めてきていた。
だが、地上から観察する限り、百式戦闘機相手に格闘戦をスピットファイア戦闘機で挑むのは、勝算が極めて乏しい、とカテリーナは判断していた。
では、どうするか。
百式戦闘機は高速ロール性能に劣るようでもある。
高速を基本的に発揮して、一撃離脱に徹することで、自分は百式戦闘機相手に勝利を掴もう。
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