第18章―6
ともかく、そういった余波が広がった結果として。
「カテリーナ・メンデス少尉は、日本語が堪能だったな」
「ええ。日本に住んでいましたから」
「日本人の恋人までいた、という噂が流れているぞ」
「それは誤解です。男性の友人はいましたが」
「そうか」
カテリーナは、上官にいきなり呼ばれて、そんな話をすることになっていた。
「それなら、尚更、好適だな。男性と話すのにも、問題は無いだろう。メンデス少尉、ブレスト(近郊)に日本陸軍の試験的飛行隊が展開することになった。そこで、我が英領パレスチナ部隊の航空隊が交流を行なうことになったので、通訳を兼ねて、その部隊に参加するように」
「えっ、私がですか」
カテリーナは驚く羽目になった。
「何か問題があるのか」
「いえ、ありませんが」
カテリーナは、上官にそう答えつつ、内心で考えざるを得なかった。
自分自身が聞き耳を立てて、更にそれなりのところに、表立って言えない形で、それなり以上の数のコネを作ったことから、欧州に派遣された日本軍について、様々な情報が自分の耳に入ってくる事情があるが。
この辺りだが、完全にグレーゾーンのことで、細かいことを言えば、スパイ行為と言われかねないが。
自分が、秘密の日本人の想い人(米内洋六少佐のこと)がいるのをコネを作った相手に仄めかしたことから、コネを作った相手の方が気を利かせ過ぎで、それなり以上の情報を自分に秘密裏に教えてくれることが起きているのだ。
(コネを作った相手にしてみれば、禁断の恋(妻子のいる男性への想いを諦めきれない自分)というのは、色々と応援したくなると言うか、味方したくなることらしい。
更に、相手の男性の妻(久子のこと)が、乳飲み子を放り捨てて、夫を追い掛けて欧州にまで赴いたというのを、結果的に察する事態が起きて、どれだけのいい男なのか、と気になって、更に情報収集に熱心になる事態を招来しているらしい。
とカテリーナは、色々な話を聞く内に察する事態が起きていた)
本当に、色々な意味でグレーな状況にあるな、とカテリーナは考えつつ、日本軍の現状を考えた。
第二次世界大戦勃発に伴い、欧州に派遣されることになった海兵隊護衛の為の日本艦隊は、艦載機部隊と共に、日本に完全に帰国する事態が起きている。
それこそ、戦闘機を中心として新型機に部隊を改編すると共に、様々な補充等を行なう為らしい。
その一方で、日本海軍の基地航空隊が、徐々に欧州に派遣されつつある。
その主力になっているのが、陸攻隊や飛行艇部隊だが、欧州に到着次第、米国からのレンドリースによる機種改編、具体的には米国製重爆撃機を装備する部隊への改編を積極的に行いつつあるとか。
表向きは対独戦を遂行するに際して、重爆撃機が必要不可欠だが、日本の様々な航空機技術の現状から、日本製の重爆撃機開発が遅延しており、米国製の重爆撃機でお茶を濁す事態が起きている為らしいのだが、裏では、日本海軍の一部が、将来の対米戦に備えて、重爆撃機部隊を整備すべきだ、と主張しているからだとか。
この辺り、自分自身が米内少佐から様々な話をこれまでに聞いて来た限り、全くの事実無根の話とも考えられないのが現実だ。
だが、その結果として、久子が所属する女性補助部隊までも、重爆撃機部隊の地上整備を行なう為に欧州に派遣される事態が起きているらしい。
更に言えば、その女性補助部隊がいるのが、ブレスト(近郊)ということは、自分が現地に赴いては、お互いに色々と気まずい事態が起きそうな気がしてならない。
とはいえ軍命である以上、カテリーナに拒否権は皆無で。
最終的には、カテリーナは他の面々と共にブレスト(近郊)に赴くしか無かった。
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