表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

209/355

第18章―4

 そうしたことが、加藤建夫少佐率いる飛行第64戦隊が、ブレスト(近郊)の飛行場にたどり着いた初日に起きることになり、加藤少佐達は、海軍所属の女性補助部隊の歓迎に心から満足することになった。


 その一方、ほぼ同じ頃の海軍所属の女性補助部隊の身に、何が起きていたのか、というと。

「一応、予備の部品等も併せて届いてはいるけど、これは大変ね」

「新型機なら付き物とはいっても、故障しがちで、稼働率確保が大変そう」

「本当にどっちがボロなのか。百式戦闘機の方が、B-18よりボロの名にふさわしい気が」

 加藤少佐達がこの地に搭乗して持参してきた百式戦闘機の整備に、早速、米内久子以下の女性の整備部隊の面々は、そのように零しながら、頭を痛めることになっていた。


 久子は考えた。

 旧式機だ、と上の方の評判は悪いが、B-18の整備は、自分達が行ってきた97式飛行艇の整備より遥かに容易な代物だった。

 そして、基本的に人間というのは、楽を覚えると、元に戻るのに苦痛を更に感じてしまうモノなのだ。

 そんな感じで、百式戦闘機の整備は、大変なことになりそうな気がする。


 ここ欧州に派遣されて、色々と痛感したことだが、日本の工業力は本当に酷いモノだ。

 米国製の軍用機は、本当に整備がしやすく、更に予備の部品等も潤沢にあるようだ。

 勿論、日本と欧州の距離は遠く離れており、それを想えば、部品等が中々届かないのは仕方がない。

 だが、それにしても、日本製の軍用機は整備が本当に大変で、稼働させるのが大変だ。


 そして、更に考えを進めるならば、質的に劣る上に、量、生産力に至っては米国と、今の日本では10倍余りの差があるのだ。

 こんなに質量共に劣るのに、対米戦を行なう気に日本海軍上層部はなっていたとは。


 久子やその周囲は、憑き物が落ちたような想いまでもしながら、これは悪戦苦闘することになりそうだ、と覚悟を決めて、百式戦闘機の整備を行なう事態が引き起こされていたのだ。


 だが、これは久子達にしてみれば、悪戦苦闘の始まりに過ぎなかった。

「えっ、他の機種も整備しないといけないのですか」

「ああ、無理を頼む」

 更に数日後、久子達はそんなやり取りを上官とする羽目になっていた。


「取り敢えず、米国製のP-39、F2A、英国製のスピットファイア、ハリケーン」

「更に4種類の戦闘機を整備しろってことなの」

「取り敢えずと言うことは、更に戦闘機等の種類が増える可能性が」

「現場に無理を押し付けすぎよ」

「全面ストライキものよ」

「いえ、暴動を起こしても良い気さえするわね」

 久子達、現場の整備員の面々は、物騒極まりない話を内々でする程に鬱憤を溜めることになった。


 久子は内心で考えた。

 確かに理屈は分かる。

 日本陸軍が、米軍戦闘機の導入までも視野に入れており、更には百式戦闘機の性能が、世界に通じるモノなのかを、ここで試したいと言うのは。


 ソ連が順調に工業化を推進しているらしい、との噂が漏れ聞こえてくるのだ。

 そして、万が一、日ソ戦になった際、日本陸軍としては、制空権確保は至上命題といってよい。

 何しろ陸軍の質はまだ何とかなるだろうが、量に関しては絶望的だ。

 ソ連陸軍は平時でも約200個師団もいるらしいが、日本陸軍は懸命に師団数を増やしているが、平時21個師団、戦時42個師団が精一杯な現実がある。


 つまり日ソ間には10倍近い兵力差があるのだ。

 こうした状況を補う為に満州国軍が編制されつつあるが、ユダヤ人を中心とする外人部隊まで入れても満州国軍は6個師団がやっとだとか。

 満蒙を護れ、と言う日本国内の声は強いが、それが現実に可能か、と言われると。

 久子の目からは難しいとしか、言いようが無いのが現実だった。

 時代的には、全面ストライキではなく、全面同盟罷業と書くのが相当かもしれませんが、私の書きやすさ、又、読者の分かりやすさ優先ということで、平に緩く見て下さい。


 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%…
>フィンランドの(タンペレ)国立工廠を巻き込んだ事態 スウェーデンでなくフィンランドで生産されるとは。ミルスキ戦闘機との生産調整があったりするんでしょうかね。ソ連からするとかなりイヤでしょうね。 ス…
>日本製の軍用機は整備が本当に大変で、稼働させるのが大変だ。 日米の基礎的工業力の差が勿論、主原因だが、それ以前の問題がありますね。 米国の技術者(理系知的エリート)の考え 現場の作業員(ワーカー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ