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第18章―2

 細かいことを言えば、加藤建夫少佐が飛行第64戦隊の戦隊長を務めるのには早過ぎるのですが。

 そこは歴史の流れが変わった影響と言うことで、緩く見て下さい。

「やれやれだな」

 1940年10月初め、飛行第64戦隊の戦隊長を務める加藤建夫少佐は部下達を引き連れて、ブレスト(近郊)で日本海軍が管理している飛行場にたどり着いた後、溜息を吐きつつ呟いていた。


 尚、自分もそうだが、飛行第64戦隊に所属している部下全員が、日本陸海軍の最新鋭戦闘機と言える百式戦闘機に搭乗して、この地に赴いている。


「我が日本の最新鋭戦闘機である百式戦闘機と、英米の戦闘機の模擬空戦を行なう等して、百式戦闘機の優位を英米諸国に知らせると共に、我が日本陸軍が採用するに相応しい戦闘機を見出してほしいか」

 加藤少佐は、改めて陸軍上層部からの指示を思い起こしていた。


 更に加藤少佐は、それなりにこの指示の裏の臭いも嗅ぎ取っていた。

 結局のところ、陸軍上層部としては、本来は海軍の艦上戦闘機になる筈だった百式戦闘機を、陸軍の陸上戦闘機として採用することに不満なのだ。


 とはいえ、日中戦争の敗北で軍事予算が削られ、当然に新型機開発費も削られる事態が起きている。

 だから、陸軍も百式戦闘機を採用せざるを得なくなった。

 その一方、(二式単戦「鍾馗」と後に名付けられる)新型戦闘機の開発に陸軍は励むことになった。


 この辺り、政府にも海軍にも、それなりの理屈が陸軍なりに立つ理由があった。

 日本本土防空を基本的に担うのは陸軍であり、百式戦闘機は、そうした場合に防空任務を行なうには不満がある以上、より高速で、高火力、更には高高度爆撃にも対応可能な重戦闘機が必要不可欠だ。 

 そう陸軍航空関係者は主張して、新型戦闘機開発に狂奔することになったのだ。


 だが、それを加藤少佐は、少し冷めた目で見ざるを得なかった。

 火力についていえば、20ミリ機関砲2丁と7.7ミリ機関銃2丁を、百式戦闘機は搭載しているのだ。

 その一方、陸軍が開発中の新型戦闘機は、12.7ミリ機関砲2丁と7.7ミリ機関銃2丁を搭載する計画と自分は聞いている。


 この辺り、海軍内部からもスイスのエリコン製をライセンス生産した20ミリ機関砲に対する様々な不満(低初速であり、弾道性能が悪い等)があることから、陸軍が米国のブローニング製をライセンス生産した12.7ミリ機関砲を搭載した新型戦闘機を開発することに表立って苦情を海軍は言っていないが。


 自分の耳には、完全な噂だが、と前置きされた上で、12.7ミリ機関砲に対する不満が、陸軍内から漏れ聞こえる事態が起きている。

 確かに12.7ミリ機関砲は、高初速で低伸弾道を誇って命中率が良いのだが、ベルト給弾を採用していることから、日本の工業力基盤にも問題があるのだろうが、米国製でさえ装弾不良を引き起こしがちで、いざと言う時に発砲できない事態が多発しているらしいのだ。


 そうしたこともあって、米軍では12.7ミリ機関砲を4丁以上装備する戦闘機が当然になりつつあるという噂まで、自分の耳に入ってくる。


 陸軍の航空技術関係者は、やせ我慢なのだろうが、日本独自の技術で、12.7ミリ機関砲用の炸裂弾を開発することで、20ミリ機関砲と同様の威力を発揮しようとしているようだが。

 何処まで出来るのだろうか、自分としては疑問でならない。


(尚、余談に近い話になるが、この辺りは弾倉式とベルト給弾式の差というか、この当時の問題点も表れていた。

 エリコン製は弾倉式を採用しており、装弾不良問題を無視できるレベルに抑えていた。

 一方、ブローニング製はベルト給弾式を採用していたことから、装弾不良問題が多発する事態が起きていたのだ。


 この辺り、航空機関銃(砲)としては、何方が妥当と言えるのか、当時の製造等も含めた技術レベルを交えた大論争になりかねないことだった)

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