第17章―11
更にドイツ空軍の戦闘機乗りというか、多くの軍用機搭乗員の間で、怖ろしい噂が流れている、ともカテリーナ・メンデス少尉は、又聞きの又聞きと言う形で聞かされもしていた。
そして、それが根も葉もない噂では済まず、実際に起きているらしいとも聞いていた。
ノルマンディー、ブルターニュ半島橋頭堡から陸路を介して、又、ドーバー海峡に面した港等を介して、コマンド部隊が北フランス各地に潜入して、様々な裏工作を試みつつあるらしいのだ。
何故に少尉に過ぎないカテリーナの耳にまで、そんな話が入るのかというと。
そのコマンド部隊の一部は、英軍の外人部隊であるユダヤ人部隊から選抜されているからだ。
そして、ユダヤ人内部の繋がりから、完全な噂だけどね、と前置きされて、カテリーナの耳にまで届く事態が起きている。
そのコマンド部隊だが、ドイツ軍の占領下にある北フランスを中心として編制されつつあるレジスタンス部隊に対する様々な物心両面からの支援(つまり、武器の提供や軍事訓練等々)を基本的に行う為に送り込まれているとのことだが。
その支援任務の一方、密やかにドイツ軍の後方における様々な破壊工作も、そういったコマンド部隊は行っているらしいのだ。
更には、ドイツ軍の軍人に対する攻撃までも。
カテリーナの耳には、北フランス上空で機体に損傷を受けたことから、機体を捨てて、落下傘による地上降下を行なった搭乗員がコマンド部隊の一員に攻撃され、殆どが絶命する事態が起きている、という噂が入ってきている。
更には、ドイツ空軍内部にまで、そういった噂が流れており、又、全く根も葉もない噂とは言い辛く、実際に落下傘降下した搭乗員の殆どが絶命しているらしいとも。
勿論、落下傘降下に失敗して絶命している例もあるのだろうが、余りにも死亡率が高いとして、ドイツ空軍内で士気の低下が起きているらしいとも。
もし、それが本当ならば、ドイツ空軍の搭乗員達が、北フランス上空で機体を捨てての落下傘降下を躊躇うのは当然のことだ。
それこそ搭乗員と言えど、自衛の為もあって拳銃位は携行しているだろうが。
(実際に自分も25口径とはいえ、自衛の為の拳銃を携帯して、ブルターニュ半島へのフェリー任務に就いていたのだ。
尚、現在は英本土内でのフェリー任務に専念しているので、自分は拳銃を携帯してはいない)
コマンド部隊ならば、それこそ短機関銃やライフル銃等を装備しているだろうから、ドイツ空軍の搭乗員が拳銃で立ち向かうのは極めて困難だろう。
更に言えば、コマンド部隊の一員ということは、それこそ陸軍内では精鋭扱いされて当然の面々が揃っているだろう。
そういった相手に、ドイツ空軍の搭乗員が銃撃戦なり、格闘戦なりで通常は勝てる訳が無い。
そして、カテリーナなりに考えることがあった。
ユダヤ人のコマンド部隊の一部は、積極的にそういったドイツ軍への攻撃を、密やかに行なっているのではないだろうか。
こういった事態が多発すれば、それこそドイツ軍としては、積極的にコマンド部隊対策を行わざるを得なくなるだろう。
そして、その対策となると、北フランスの住民に対する強圧的な捜査が多発するのは当然だ。
だが、このことは半ば必然的に北フランスの住民に、ドイツ軍への反感を高めることになる。
それこそ不当な侵略をドイツは行っているのだ。
そうした中で、そんな強圧的な捜査が行われては、益々住民が反発するのは当然だ。
それによる憎悪の連鎖を、ある意味では悪用し、北フランスの住民の多くをレジスタンス活動等に駆り立てようと、ユダヤ人のコマンド部隊の一部は策しているのでは。
カテリーナは穿ち過ぎ、と考えつつも、背中に冷や汗が流れた。
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