第17章―8
最もこの辺りは、ドイツ空軍首脳部の想わぬ誤算も、実はあったのだ。
それが何かと言うと、Bf110戦闘機の存在だった。
長距離侵攻作戦において、爆撃機の護衛を行うのは、ドイツ空軍の本来の構想から言えば、Bf110戦闘機の任務であり、Bf109戦闘機の任務では無かったのだ。
だが、実戦において、ドイツ空軍の本来の構想、Bf110戦闘機を長距離侵攻作戦の際の爆撃機の護衛に使用するというのは、実は夢想と言って良いのが判明することになったのだ。
だが、これをドイツ空軍首脳部の無能によるモノと、単に糾弾することは実は難しい。
この当時の多くの空軍、陸軍航空隊が、Bf110戦闘機類似の戦闘機が、必要不可欠であるとして開発し、更には実戦投入しているからだ。
例えば、史実を絡めて言うことになるが、日本陸軍で言えば、二式複座戦闘機「屠龍」がある。
日本海軍で言えば、夜間戦闘機「月光」がある。
米陸軍航空隊も、結果的には違う形になったが、Pー38戦闘機の原型の構想は似たようなモノと言っても過言ではない。
フランス空軍も、ポテ戦闘機を開発、量産している。
さて、何でこんな戦闘機が構想され、開発、量産にまで至ったのか、というと。
1930年代後半、双発複座戦闘機万能論が、世界中の空軍関係者の間で強かったのだ。
詳細を語り出すと、それこそ論文になるので、かなりの部分を端折って説明するが。
双発複座の戦闘機を開発できれば、
①双発なので、高馬力になって、高速化と航続距離の長大化を両立できる。
②双発なので、エンジンの無い機首に大口径機関砲等を搭載できる。
③双発なので、爆弾も大量に搭載することができ、多用途な使い方ができる。
④複座なので、搭乗員の一人が、航法士や偵察員等の任務を遂行でき、長距離飛行における問題を大いに低減できる。
等々、傍から見れば、良いことづくめにしか思えないことだったのだ。
そうしたことから、双発複座戦闘機が、多くの国で量産化まで至ったのだが。
実際に実戦に投入してみると、(史実を交えて)説明するが。
結局のところ、双発戦闘機なので、単発戦闘機と比較した場合、どうしても鈍重になり、格闘性能では明らかに劣ることになる。
速度性能にしても、エンジンの高性能化が進んだので、双発機の方が単発機より明らかに高速とは言い難い事態が生じることになったのだ。
そうなると、双発複座戦闘機よりも、単発単座戦闘機を造った方が遥かにマシだ、といわれる事態が各国の空軍上層部等で生じるのは当然のこととしか、言いようが無かったのだ。
何しろ双発機を製造するには、エンジンが2基必要だが、単発機なら、エンジン1基で済む。
そういった製造過程や、費用対効果を考える程に、双発複座戦闘機の利点は乏しくなるのだ。
(更に双発複座戦闘機の最大のメリットとされた航続距離にしても、使い捨ての増槽を併用した為とはいえ、(史実を絡めて言うことになるが)零戦の方が、Bf110に勝るという現実があっては、益々双発複座戦闘機のメリットは無い、と言われて当然になるのだ)
そうした背景が相まったことから、バトルオブブリテンで、Bf110の評価は暴落する事態が引き起こされることになった。
それこそ、本来は戦闘機の筈なのに、1940年8月末には、
「Bf110を護衛する為の戦闘機、具体的にはBf109が出撃の際には必要不可欠だ」
とドイツ空軍の最前線の航空隊で、噂が公然と流れる事態まで引き起こされてしまった。
尚、この後に夜間戦闘機に転用されることで、Bf110の評価は上がることになるのだが、ともかく1940年8月末の時点では、Bf110の評価は散々な代物になっていたのだ。
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