第17章―7
ともかく充分な戦闘機の護衛が乏しい中で、ドイツ空軍の爆撃機乗りは、英本土へと出撃せざるを得ないのが現実だった。
取り敢えずは、英空軍の目となる電探基地を潰し、その上で飛行場を叩いて、航空撃滅戦を優位に進めていこう、とドイツ空軍の上層部は考えて、部隊を展開させた。
更に電探基地が(相対的にだが)飛行場よりも小さい目標であることから、急降下爆撃機、具体的にはJu87を主力として、電探基地に対する空襲を行わせることにしたのだが。
これは、Ju87の搭乗員の多くにとって、地獄への片道飛行になった。
この当時のJu87は固定脚ということもあり、爆弾を搭載していない状態でも、最高速400キロも出ない鈍足の急降下爆撃機だった。
(後に改造されて、400キロ以上出せるようになるが、それでも410キロが精一杯だったとか)
そんな鈍足であったことから、Ju87は本来的には味方の制空権下にあるか、緊密な戦闘機の護衛があるかする中で運用すべきだったのだが。
バトルオブブリテンは、そういった条件が欠けており、Ju87は大苦戦を強いられる事態が起きた。
先走った話になるが、8月下旬以降はJu87は、英本土への出撃が禁止される程の被害を被る事態が起きる程だった。
補充機が届いているので、実際には全滅してはいないのだが。
「7月末までに英本土攻撃の為に準備されていたJu87全機が、8月20日までに失われており、Ju87は北フランスにおいては全滅しました」
と公式にドイツ空軍の書面が残されるような悲惨な戦況とあっては。
Ju87の英本土への出撃禁止命令が出るのも当然だった。
(尚、細かいことを言えば、全て空中戦でJu87が失われている訳では無く、それこそ離着陸時の事故や機体故障、更には地上、飛行場にいる際に破壊されたこと等で失われた機体も、それなりにはある。
だが、英本土へと出撃する度に過半数が失われるのが当たり前、と言われるようになっては。
Ju87の英本土への出撃禁止命令が出るのも当然だった)
こういった現状に、爆撃機部隊の指揮官等は大不満を抱えて上層部に訴えることになったが、戦闘機部隊は戦闘機部隊で、指揮官等は頭を抱え込む事態が起きていた。
本来的には空中戦が始まった時点で、使い捨て式の増槽を捨てて空戦を行うのが当然なのだが。
Bf109の航続距離の乏しさから、増槽を捨てての空戦を躊躇う搭乗員が続出したのだ。
Bf109の搭乗員にしてみれば当然のことだった。
英本土上空で増槽を捨てて空戦をしては、北仏の飛行場に帰還する際に空戦に巻き込まれては、自分は燃料不足でほぼ確実に撃墜されるのだ。
それを避けるとなると、増槽を抱えたままで戦うしかない、という理屈である。
だが、増槽を付けた状態のBf109では、ハリケーン戦闘機でさえ苦戦は必至と言え、スピットファイア戦闘機が相手ともなると。
「ブリテン上空の七面鳥撃ち」
と米国の新聞には書かれ、
「英本土上空の野鴨撃ち」
という表題の新聞記事を、日本では米内藤子が読む惨状を呈する事態が起きた。
この事態にヒトラー総統は激怒することになり、ドイツ空軍首脳部に当たり散らすことになったが。
ゲーリング以下のドイツ空軍首脳部にしてみれば、当然の事態としか言いようが無かった。
結局のところは、ドイツ空軍首脳部にしてみれば、英本土に対する航空撃滅戦は、ドイツ空軍の能力を超える作戦としか言いようが無かったのだ。
そうしたことからすれば、こうした結果が起きるのが当然だった。
だが、このことは第二次世界大戦におけるドイツの勝利を、益々遠いことにしているのは間違いなく、カナリス提督らは苦悩するしかなかったのだ。
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