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第15章―7

 こうした背景から、ベネルクス三国やフランス等からのユダヤ人難民が、満州国を大量に目指す事態が引き起こされることになったのだが。

 だからと言って、全てのユダヤ人難民が満州国に受け入れられる訳が無かった。

 というか隠微な事態さえも引き起こされることになった。


 どうのこうの言っても、ドイツ国籍を持つユダヤ人は、ドイツ人である。

 だから、ドイツ国内からの迫害を逃れて国外に亡命したにも関わらず、敵国のドイツ人であるとして、英仏日等の国々から、様々な迫害を大小はあったが受ける事態が引き起こされたのだ。


 この頃の自分達の境遇について、アンネ・フランクは自らの日記の中で、(要約すればだが)このように描いている。

「やっとの想いで、私達は文字通りに疲れ果てた状態で、ブルターニュ半島に設けられた仮設の難民キャンプにまで、オランダから歩いてたどり着けた。

 でも、そこは全く安住の地では無かった。


 それこそ様々な事情から放棄された農地ということで、仮設キャンプの設置がフランス政府や、その土地の地方自治体から認められたのだが、それは仮設キャンプの設置を、あくまでも黙認するということで、決して文書によって公認されたこと等では無かった。

 だから、難民キャンプに住んでいるユダヤ系の住民と、予てからこの土地に住んでいた住民との間でいさかいが起きるのは、それこそ日常茶飯事と言って良かった。


 その為に、難民キャンプから、更に別の土地を目指そうとする人が圧倒的多数なのが現実だった。

 そして、ユダヤ系のオランダ人等のベネルクス三国の人や、ユダヤ系のフランス人等は、別の土地として満州国を目指していくことが多かったのだが。

 私達、ユダヤ系のドイツ人にとっては、満州国は決して目指せない土地になっていた。


 どうのこうの言っても、満州国は日本の傀儡国家、属国と言っても過言ではない。

 そうした中で、日本とドイツが大戦を行っていては、満州国がドイツ人は敵国人であるとして、ユダヤ系のドイツ人を受け入れてくれる訳が無かったのだ。


 私が半分噂として聞いたところに依れば、こうした状況にあったことから、米国政府等はユダヤ系ドイツ人を、満州国で受け入れるように働きかけてくれたらしい。

 だが、日本とドイツが交戦中であることを理由にして、日本と親密な関係にある満州国としては、ユダヤ系ドイツ人を受け入れられない、という主張が為されると共に。


 其処まで言われるのならば、ユダヤ系ドイツ人を米国が受け入れるべきではないか、と日本や満州国政府が主張すれば、途端に様々な理由を挙げて、米国政府はユダヤ系ドイツ人の受け入れを拒絶する有様だったとのことで。

 私としては、自分達、ユダヤ系ドイツ人にとって、安住の地は何処にあるのだろう、という想いが私の中で浮かんでならない事態が、この頃には起きてしまっていた」


 尚、こういったアンネ・フランクの想い、考えだが、正直に言って、この1940年夏のこの当時の世界の状況を踏まえれば、全く間違っていないとしか、言いようが無いのが現実だった。


 ドイツ政府から迫害を受けて亡命をしている以上、ユダヤ系のドイツ人を保護すべきだ、というのは正論としか言いようが無いが。

 だからと言って、自国がそれによって様々な問題に巻き込まれるのは御免被る、自国民をまずは優先すべきだ、という声が極めて高い事態が起きるのが、それこそ21世紀の現実世界でも、よくあることではないだろうか。


 そうしたことから、ユダヤ系のドイツ人は、それこそ安住の地を求めるものの、何処にも安住の地が無い、という事態が引き起こされることになったのだ。

 アンネ・フランクらは苦悩するしか無かったのだ。

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― 新着の感想 ―
フランク家の皆さん気の毒だが、「苦労してブルターニュまで来ました。無事に、すぐ安住の地に迎えられて、ハッピーエンド。」では、アンネの日記にならない。最終的にハッピーエンドになるにしても、まだ苦難が続か…
 ユダヤ人と言えども出自からの格差•差別がある中で最悪の貧乏くじなドイツ系の人々( ;ω; )本来頼れる母国こそが自分達にとって死地であり逃げる先の国々は母国ドイツが無闇矢鱈と戦火をふっかけているせい…
アンネ・フランクはなんとか難民キャンプに着いたのですね、しかしこのままだと満州までは今のところは難しいですね。彼女の日記に日本海兵隊の米内少佐は出てきたりする出来事が今後起きるかな。 ドイツ系ユダヤ…
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