第15章―6
さて、カテリーナ・メンデスの聞いた話、希望すればユダヤ人の難民を満州国が受け入れるという話だが、本当の話だった。
これは様々な諸国の思惑が絡み合ったこともあって起きたことであり、人によって喜ばしいと見る人もいれば、酷いと見る人もいる、何とも複雑な話でもあった。
さて、何故にこんな事態が起きるのかと言えば。
満州国というか、日本にとって、満州国を諸外国に国家として正式に承認させることは悲願に近いこととしか、言いようが無かった。
満州事変の行きつく果てとして、満州国建国が為されたが、事実上の国家と扱う諸外国政府はそれなりにいたが、正式な国家承認となると、それこそ日本の侵略を是認することになるとして、国家承認を世界の殆どの国、政府が拒んでいるのが現実だった。
そして、そんな状況が10年近く続いていたのだ。
こうした状況に風穴を開けたのが、ドイツ政府のユダヤ人迫害の動きだった。
ドイツ国内で迫害されたユダヤ人の多くが、外国への亡命を図ることになったのだ。
だが、実際問題として、当時の欧米を中心とする世界では、反ユダヤ主義が通底している現実があり、こういった外国への亡命を図るユダヤ人の受け入れを、殆どの国が冷たく拒むのが現実だった。
そうしたことから、ドイツ国内から外国への亡命を図ろうとするユダヤ人は亡命先に苦慮する現実が、この当時には多発していたのだ。
(だが、メタい話になってしまうが、この世界の)日中戦争で起きた上海事件、いわゆる上海ゲットーで起きたユダヤ人を中心とする虐殺事件が、色々な意味で世界の世論を変えることになった。
ドイツ等から亡命しようとするユダヤ人を援けるべきではないか、という世論、声が高まったのだ。
だが、その一方で、だからと言って、自国にユダヤ人が大量に押し寄せるのは困る、という世論、声がそれなりにあるのも、現実だった。
こうした状況から、吉田茂外相等の提言を受けて、米内光政首相率いる日本政府は、(どうのこうの言っても、本音ではユダヤ人を始めとする外国人を受け入れたくない)満州国政府に対して、様々な硬軟の圧力を掛けることで、満州国政府に人道的観点からユダヤ人難民を積極的に受け入れる、という声明を出させて、実際にビザ等の発給を行わせる事態を引き起こしたのだ。
この満州国、日本政府の行動だが、それなり以上の見返りがあった。
満州国が出したビザ等を、その国の政府が公に認める、ということは満州国を正式な国として、その国の政府は事実上は承認することになる、と言っても過言ではない。
だから、本来的には国としては、満州国が出したビザ等は認め難い代物なのだ。
その一方で、ユダヤ人が殆どを占める難民問題は深刻であり、人道的な観点からも早急な対応が迫られているという現実がある。
そして、フランス等、そのような難民に居座られたくないという国内世論が噴出している国があると言う現実がある以上は。
こういった状況からの妥協として、あくまでも人道的な観点からの、緊急避難的な行動であるとして、英仏米等の主要国は満州国の発給するビザを承認することになった。
だが、そうは言っても、満州国の発給するビザ等が、英米仏等の主要国から承認されたという事実は大きく、日本や満州国はこの事実を報じた。
そして、それに基づいて、多くのユダヤ人の難民が、フランスを始めとする欧州から満州に向かう事態が引き起こされることになった。
更には米国政府を中心に集められた様々な義援金が、こういったユダヤ人の難民の避難行に際して活用される事態が起きることになり、そういった義援金は、この避難行に協力した日本の企業等を潤すことにもなったのだ。
この辺り、小説上の御都合主義にも程がある、と言われそうですが、現実社会でも、それなりにある事態ではないでしょうか。
正式な国家承認は様々な絡みからできないが、事実上の国家承認を行うのが稀ではないのが、現実ではよくあることでは?
(それこそ中華人民共和国と中華民国(台湾)の関係等からして、よくあることの気が私はします)
そういった事態が、この世界でも起きているということで、平にお願いします。
ご感想等をお待ちしています。




