第15章―4
そんな想い、考えを米内久子がしていることを知る由もなく、カテリーナ・メンデスは、微妙に実戦に投入されていると言われても仕方がない事態に巻き込まれていたのだ。
「フェリー任務に参加して欲しいですか」
「ああ、最前線を支えるに足る程に訓練した面々を、少しでも前線に送り込む必要があることを考えれば、止むを得ないことだ」
「しかし、フェリー任務は後方と言えば後方ですが、それこそ実戦に参加する事態が起きてもおかしくない任務ではないでしょうか。私や他の面々の練度が、フェリー任務に参加できるとは考えにくいですが」
「確かにその通りだが。そうは言ってもだ。他のユダヤ人を救う為にも参加してくれ」
「其処まで言われるのならば、参加せざるを得ません」
そんなやり取りを、1940年6月末にカテリーナは自らの教育担当の上官とする事態が起きていた。
さて、ここで出て来るフェリー任務だが。
(細かく言えば、他の任務のことを指すこともあるのだが、メタい話をこの際にするならば)後方の工場で造られた軍用機を、最前線の飛行場に運ぶ任務のことを指している。
実戦において、最前線の飛行場では、パイロットは生き延びているが、軍用機は損傷を受けて出撃不能になることが稀ではない。
そうした状況下において、後方の工場から速やかに軍用機が届けば、パイロットはそれに搭乗して戦闘に参加することが出来る。
そうしたことから、後方の工場から最前線の飛行場に軍用機を運ぶ必要があるのだ。
とはいえ、最前線の飛行場に軍用機を運ぶ以上、それなり以上の危険がある。
それこそ敵軍の航空隊との空戦を行わざるを得ない事態が起きてもおかしくは無いのだ。
そうしたことから、カテリーナは難色を示した次第だった。
だが、こういった事態が起きた裏事情を、この際に描くならば。
それこそ外人部隊であるユダヤ人部隊の弱みを、英国政府が衝いたとしか、言いようが無かった。
どうのこうの言っても、ユダヤ人部隊は外人部隊であり、英国政府にしてみれば、容易に捨て石にできる部隊である。
そうしたことから、危険性の高いフェリー任務を行うように、英国政府はユダヤ人部隊に求めることになり、ユダヤ人部隊は、それに応ぜざるを得なかったのだ。
ともかく、そうしたことから、カテリーナは、ブルターニュ半島に展開している英空軍部隊へのフェリー任務に参加せざるを得ない事態が、1940年7月以降に起きることになった。
尚、フェリー任務なので戦闘に巻き込まれる危険が皆無とは言えないことから、フェリー任務の軍用機には機関銃弾等がフル装備された状態で、任務が遂行される事態が起きた。
こういった事情が組み合わさったことから。
「敵機発見。どうしましょうか」
「先手必勝よ。幸い私達が乗っているのはスピットファイアよ。やられる前にやりましょう」
「了解」
偵察任務を行う為に、ブルターニュ半島上空を飛んでいたBf109相手に、カテリーナは積極的に空戦を挑む事態が起きた。
そして、2対1という数的優位にあったのもあるが、カテリーナは初撃墜を挙げたのだ。
(尚、フェリー任務である以上、積極的に空戦を挑むべきでは無かった、とカテリーナは訓戒を受けることにもなった)
その一件以降。
「撃墜記念よ。私の愛機には撃墜1機毎に、アーモンドの花1輪を描くことにするわ」
カテリーナは、敢えて明るく周囲に言っていた。
アーモンドの花は、ユダヤ教徒にとって特別な花といえる。
そうしたことから、カテリーナの言葉は周囲から好意を持たれたが。
その一方、カテリーナとしては桜の花を描く代償だった。
カテリーナの本音では、米内洋六少佐への想いを桜の花を描いて示したかったのだ。
分かる人にしか、分からないネタに奔って、本当にすみません。
アーモンドの花ですが、ユダヤ教徒にとっては特別な花と言っても過言ではありません。
その一方で、アーモンドの花は、桜の花に似た五弁の花であり、そうしたことから、トンデモ、陰謀論の話になりますが、日本とユダヤは同祖なのだ、という主張が為されることがあるとか。
そういった裏まであることから、カテリーナはアーモンドの花を撃墜記念に描くことに。
(更に言えば、日本海軍の象徴は桜に錨でもあり、カテリーナにしてみれば、表向きは英空軍所属である以上、英空軍の自分が日本海軍の象徴の桜を描く訳にはいかない以上、アーモンドを代わりに描こうと考える事態が起きました)
そんな裏があるのですが、どうか緩く見て下さい。
ご感想等をお待ちしています。




