第13章―2
ともかく、こういったオランダ軍の内実は、それこそドイツ政府、軍上層部にしてみれば、既知のことと言っても過言では無かった。
こうしたことから、オランダ占領作戦を断行するには、ドイツからすれば西方正面から4個歩兵師団と1個騎兵師団を投入して、それにベルギー方面に突進する部隊から、柔らかい横腹といえるオランダ南方方面からの侵攻作戦の為に1個装甲師団を転用し、又、1個空輸師団、に加えて空軍の1個降下猟兵師団を空挺作戦でオランダ本土へと投入して、更に万が一の為の予備部隊として武装SSのSSーVT師団、合計9個師団を基幹とする部隊で充分だろう、と判断されることになった。
勿論、余りにも質量共に兵力が少なすぎるのではないか、という危惧を抱いた者がドイツ軍上層部内にいなかった訳ではない。
だが、オランダ軍の内実に加え、それこそ劣等民族である日本海兵隊やユダヤ人部隊など我が優秀なるゲルマン民族から成るドイツ陸軍の攻撃を受ければ鎧袖一触の筈だ、ひとたびドイツ戦車が砲撃を浴びせれば、ユダヤ兵等はすぐに逃げ散る、と獅子吼するヒトラー総統を、殆ど誰も諫められないのが現実というものだった。
それでも、尚、ヒトラー総統を諫める人間が全くいなかった訳ではない。
カナリス提督は、その数少ない一人で、ノルウェー戦の経緯からして、日本海兵隊を端倪すべからざる存在である、とヒトラー総統を諫めたが。
我がドイツ陸軍は、日本海兵隊に勝てないというのか。
陸戦で我がドイツ陸軍が、日本海兵隊に勝てないと公言する等、ドイツ軍人でありながら、ドイツ軍を公然とカナリス提督は侮辱するのか、と本来ならば、同じ軍人であるとして味方になる筈のドイツ陸軍の多くの面々が、カナリス提督に対して激怒する事態を却って引き起こしてしまった。
更にはこうしたことから、アプヴェーアの長官から、カナリス提督を更迭しようという動きまで起きる事態となってしまった。
そうした背景から、カナリス提督は最終的には口を噤まざるを得ないことになった。
だが、メタい話にどうしてもなってしまうが。
このオランダ侵攻作戦は、史実よりも不利な点が多々あることになるのは避けられなかった。
まず、最大の相違点は、史実よりも早期にノルウェー侵攻作戦が断行され、又、史実以上の損害をドイツ陸海空軍が被ってしまったことだった。
例えば、ドイツ海軍は、それこそ装甲艦や巡洋戦艦を全て喪失する羽目になっており、それ以外の補助艦艇、駆逐艦等も大損害を受けたことに加え、スウェーデンが事実上鉄鉱石を禁輸したことから、
陸軍を重視するヒトラー総統直々に、
「ドイツ海軍は事実上解散する」
と宣言される状況に陥っていた。
又、ドイツ空軍の損害も軽視できなかった。
それこそノルウェーに展開するドイツ軍等への補給作戦の為に、輸送船というより舟艇部隊が動員されてはいたが、とても充分な補給が為されているとは言い難い現実があった。
こうしたことから、輸送機部隊もこの補給作戦の為に併用されていたが、これは当然のことながら輸送機の様々な損耗を伴うのは避けられなかった。
この為に、オランダ侵攻作戦の“要”である大規模な空挺部隊を投入すると言うのは、現場に様々な無理を引き起こすのは避けられないことになった。
空挺部隊を輸送するために数を揃えるために予備機まで動員されることになり、又、いわゆる後方の教育部隊で新人パイロットの錬成に当たっている教官の多くが、輸送機部隊の搭乗員に転用されることになった。
そして、この多くの教官が転用され、輸送機部隊の搭乗員に動員されたことは、後に搭乗員の錬成に大きく響く事態が引き起こされることになった。
少し補足説明を。
ノルウェーで日本海兵隊とドイツ陸軍は戦っているのでは、と言われそうですが。
それこそ渡洋侵攻作戦で重装備を保有していなかったから、更に制空権の無い中で戦ったから、ドイツ陸軍は苦戦を強いられた。
実際、第二次上海事変で日本陸軍は惨敗している、日本海兵隊はそれより弱い筈だ、我が優秀なる装甲部隊を以てすれば、鎧袖一触だ等の主張が、この当時のドイツ陸軍内では横行していたのです。
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