第11章―5
実際、余り表立っては出ないことではあるが、この食事問題は、それなり以上に欧州に赴いている日本軍内部では問題になっているのが、現実ではあった。
「味付け問題まで言い出したら、どうにも収まらなくなることではあるが、そうは言ってもだな」
「とはいえ、欧州では食材が思うように手に入らないのは当然だからな。我慢するしかない」
そんな会話が、欧州に赴いている日本軍の面々の間では交わされることになった。
1940年4月現在、日本本国から欧州に派遣された日本軍の面々は、英本土に多くが集っている、といっても過言ではない状況にあった。
ドイツ軍のノルウェー侵攻作戦に対処するために、1940年2月から奮闘する事態が、日本軍の面々には起きていた。
そして、それなり以上に奮闘した結果として損耗する事態が起きたことから、日本陸海軍航空隊の一部はノルウェーの最前線(具体的にはベルゲン近郊)において、現状でも奮闘を続けてはいたのだが。
その大半は、損耗した結果として、英本土に帰還して再編制等を図ることになっていたのだ。
再編制を行うとなると、日本本土から補充兵を送り込み、更には訓練等を行わざるを得ない。
それなりに覚悟を固め、準備をしていたとはいえ、そうは言っても、という事態が起きるのは、どうにも避けられない事態としか、言いようが無かった。
そんなことから、様々な部隊の再編制に、日本軍は苦労する事態が起きていたのだが。
更なる難題では無いが、微妙に食事に不満を零す面々が出るのも必然的ではあった。
それこそ、それなりに余裕がある状況に、英本土の日本軍があったのも、宜しく無かった。
これが食べれられるだけでも文句を言うな、という極限状況ならば、却って不満が噴出しなかっただろうが、それなりに余裕が、この当時はあったのだ。
その為に却って、真面な食事をしたい、と不満が噴出する事態が起きたのだ。
そうしたことから、欧州に派遣されている日本軍内部では、真面な食事が出来るように、と様々な配慮が行われる事態が、この後で起きることになり、この後々まで、それは続くことになった。
そして、米内洋六少佐は、それを歓迎することになり、又、妻の久子や子どもの仁や藤子らの手紙を読んでは、お前達の気持ちももっともだ、と寄り添うような手紙を送る事にもなった。
更に言えば、こういった日本軍内部の大騒動は、それなりに周囲、英仏軍等の内部にも広まるのは、どうにもならないことではあった。
「日本軍内部で食事について、大騒動が起きているようですよ」
「そうなんですか」
日本軍内部の騒動は、1940年5月に入る頃には、英国軍内部のユダヤ人部隊にまで、半公然と広まる事態にまで至っており、カテリーナ・メンデスは、周囲の面々とそんな会話を交わしていた。
カテリーナは想った。
彼、洋六が言っていたことだが、日本内部でも食事、料理は地域によって、本当に様々に違うらしい。
それが欧州に日本軍が派遣されることで、噴出する事態が起きているのだろう。
彼は、騒動に巻き込まれていないだろうか。
その一方で。
「食事の準備が調いました」
「ありがとう」
士官扱いということで、それなりの処遇を自分は受けられている。
そして、ユダヤ人部隊であることから、食事に関しては十二分な配慮が為されてもいる。
カテリーナは、色々と考えざるを得なかった。
皮肉なことに、ユダヤ人部隊の士官になったことから、自分は食事のタブーを考えずに済むようになった現実がある。
本来的には、素直に喜ぶべきなのかもしれないが。
そうは言っても、戦争と言う状況にあっては自分は素直に喜べない。
本当に食事は、色々と悩ましい問題を引き起こすモノだ。
これで第11章を終えて、次話から独軍のオランダ侵攻問題を主に扱う第12章になります。
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