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閑話―2 1940年3月下旬の仁の想い

 さて、義妹にして許嫁(?)の米内藤子の行動だが、実は米内仁の耳にまで、それなりに所々、間違った形ではあるが、すぐに届く事態が起きていた。


 さて、何で江田島にある海軍兵学校の生徒である仁の耳にまで、藤子の行動(というか、やらかし)が届いているのか、というと。

「横須賀鎮守府司令長官の長谷川清大将の耳にまで、藤子の行動が入るとは。藤子は酷いやらかしをしたものだ。まあ、自分も母の行動には呆れているから、母にとっては良い薬になるだろう」

 仁は、そう独り言と言うか、愚痴をこぼすことになった。


 そう、藤子の行動で流れた噂だが、巡り巡って、横須賀鎮守府内にまで広がり。

 更には、海軍軍人のつながりから、海軍兵学校内にまで届く事態が起きていたのだ。


 その背景を少し述べるならば。

(言うまでも無いが、陸軍も女性補助部隊編制に奔ってはいるのだが)海軍の女性補助部隊編制を、米内光政内閣が法律化したとはいえ、そう容易に女性補助部隊編制が進む訳が無かった。


 幾ら御国の為に、という大義名分、スローガンを掲げようとも、(この当時の日本社会において)女性は家庭の中にいるものだ、幾ら補助部隊とはいえ、女性が戦場間近に赴くのはどうなのか、という声が、日本国内で挙がるのは、ある意味では当然極まりない話だった。


 だが、そうした声を少なからず吹き飛ばしたのが、米内久子の海軍女性補助部隊志願で、更にそれが新聞等で報道された結果として。

 

 それこそ夫婦揃って、海軍の一員として精励するとは。

 御国の為に働く臣民の鑑だ。

 女性と言えども、積極的に女性補助部隊に志願すべきだ。

 そんな報道が垂れ流される事態が起きて、それに煽られて、女性の補助部隊志願者が増える副産物まで起きる事態が起きてしまった。


(それこそ子どもを預けられる祖父母を始めとする身内がいるならば、そういった身内に積極的に子どもを預けて、女性の補助部隊に志願するのが、女性の臣民の鑑ではないか。

 そんな報道が垂れ流されては、未婚女性のみならず、子持ちの既婚女性までが女性補助部隊に志願する事態が起きるのは当然としか、言いようが無かったのだ)


 だが、その内実(実母の久子は、夫の米内洋六が、カテリーナ・メンデスと浮気するのではないか、という嫉妬心から女性補助部隊に志願していた)を知る仁にしてみれば。

 こういった事態は、どうにも冷めた目で見ざるを得ない事態である。


 とはいえ、仁が真実を暴露しようとも、実母の久子が、それを認める筈がない。

 それこそ、

「御国の為に奮闘するのが、大日本帝国の女性の務めです。それを邪推するとは言語道断です」

と実母の久子が言い張って、それを新聞等が、

「全く以てその通りだ。誹謗中傷をするな」

という報道をすることまでが、仁には思い浮かんでならなかった。


 そんなことから、冷めた目で現状を仁は見る一方で、藤子らの弟妹に気づかいをしつつ、今後の自らの進路について、この頃の仁は色々と考える事態が起きていたのだ。


「色々と言われそうだが、やはり自分としては、カテリーナ・メンデスの想いに寄り添い、何処かにユダヤ人の安住の地を作るのに協力したいな」

 散々に悩んだ末、仁はそんなことを考えるようになっていた。


「だが、この自分の考え、思いを日本政府は受け入れてくれるのだろうか」

 そんな考えが、仁の内心で浮かんでならない。

 実際問題として、仁の考えだが、日本政府の国益を無視した考え、と言われても当然の代物である。


 そこまで考えが進む一方、それでも、という考えが浮かぶのも、仁の内心の現実だった。

「本当にカテリーナ・メンデスが安樂に暮らせる場所を作りたいものだ」

 そう仁は考え、後に奮闘することになる。

 少し補足を。

 米内藤子の行動ですが、それこそ藤子が物心着いた頃から共にいた米内洋六や久子、仁には、藤子の真意が垣間見えていますが、最近、藤子と同居を始めた母方祖母等には、藤子の真意が全く分からないことで、そうしたことから、この後の閑話の事態が起きることになりました。


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― 新着の感想 ―
やっぱり世の中的には国に奉公する立派な人と言われますよね、実態は違うのですけどね。 あと仁くんのユダヤ人に安息の地をというのはいかにもヒューマニズムに溢れた思いですが、こっちの世界でのイスラエル建国…
 やはり海軍さんは横の繋がりが強い、たぶんだけど藤子ちゃんの実のお母さんの死に米内少佐の同期の人たちは「全くの親切心から縁切りする方向に持っていっていたので」後ろめたさを感じ親戚のおじさんレベルに藤子…
>何処かにユダヤ人の安住の地を作るのに協力したいな」 米内仁さん、第二次世界大戦には間に合わず、第一次中東戦争で義勇軍として活躍? >日本政府の国益を無視した考え、と言われても当然の代物である。 …
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