第10章―17
「そうは言っても、実際のところは無視できない攻撃だな。更に言えば、英海軍の本国艦隊まで、ベルゲン沖に駆けつけていて、地中海艦隊等まで、英海軍は動員しようとしている、とあっては。ドイツ本国から、増援部隊を送り込むのは、極めて困難なことになるのは当然か」
「ええ、ドイツ軍はデンマーク本土等を制圧したことから、カテガット海峡等を押し渡って、増援部隊等をノルウェー本土に送り込める態勢を整えることができましたが、それが良かったとは単純に言える状況ではないようですね」
米内洋六少佐と佐藤准尉の会話は、更に皮肉を深めることになった。
実際問題として、日英協働の海空軍というか、艦隊と航空隊の様々な共同攻撃は、ドイツ本国からノルウェー本土への輸送作戦に多大な損害を与える事態が起きている。
それこそ何とかノルウェー本土にドイツ陸軍の部隊や、部隊維持の為に必要な様々な物資、それこそ糧食や弾薬、燃料等々を送り届けても、そういった部隊や物資の揚陸となると、それなりの時間が必要不可欠なのは言うまでもない。
更に、何とか揚陸任務を果たしても、それからドイツ本国に艦船が帰還できないのでは、それこそ地獄への片道切符と言われても当然の事態になる。
米内少佐の下に届く様々な情報の中で、佐藤准尉からの情報が最も詳細なのが、米内少佐にしてみれば何とも皮肉としか言いようが無いが。
それこそ、ノルウェーへの兵員や物資の輸送任務に当てられている輸送船で、ドイツ本国から出航して、無事に帰国できるのは、2割を切る事態が起きているらしい、という情報が複数届くのが現実だ。
更には、ドイツの占領下にあるポーランドの沿岸部や、ドイツのバルト海沿岸部に、機雷を航空機を駆使することで投下することで、そういった輸送作戦を更に困難にしよう、と英軍は策している。
そうした現状に鑑み、具体的な声明等は出されていない段階だが、スウェーデン政府は、内々にドイツ政府に対して鉄鉱石を始めとする様々な物資の輸出を取り止めるという打診をし出したらしい、という噂が、希望的観測がかなり入っているのだろうが、ベルゲンの日本海兵隊内で流れ出しつつある。
米内少佐や佐藤准尉の目からしても、そういった噂が本当になる可能性は極めて高い。
何しろ、スウェーデンからドイツに対して、この冬季に鉄鉱石等を輸出しようにも、ベルゲンやトロンハイムといった不凍港は、ドイツと交戦中のノルウェー正統政府や軍が抑える事態が起きている。
そして、夏季の解氷期になる頃には、英軍のバルト海沿岸部への機雷敷設作戦は、ベルゲンを一大前進拠点として、それなりの成果を挙げる公算が極めて高い。
そうなった場合、スウェーデンからどれだけの鉄鉱石等が安全にドイツへ輸出できるだろうか。
そう言った状況に陥れば、スウェーデン政府は英仏日政府の歓心を買うためにも、ドイツへの鉄鉱石等の輸出禁止を決断することになるだろう。
こうした考えは、余りにも先走り過ぎなので、目の前のノルウェーにおける対ドイツ軍戦闘から考えていくのが相当なのだろうが。
そういった状況も、時間は英仏日側の味方、といってよい状況になりつつあるようだ。
(メタい話になるが、上記に書いているように)ノルウェーにドイツ本土から送り込まれる兵員や物資等で、無事に届いているのは、兵員が6割で、物資に至っては半数以下と言う現状がある。
更に言えば、ノルウェーに無事に物資を輸送した後で、無事にドイツに生還できる輸送船は2割といったところらしい。
細かに言えば、舟艇機動を行っている部隊は、かなり成功率が高いらしいが、それでは大型物資、戦車や重砲等の輸送は不可能なことだ。
ノルウェーへの輸送任務に成功しても、ドイツ本国に生還できる可能性が2割では。
それこそ地獄への片道切符ではないか、と言われても、当然の気が。
そんなことから、ノルウェー戦線は膠着することになります。
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