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第10章―8

 正確に言えば、後で分かったことだが、この時に第二水雷戦隊の攻撃で、ドイツの巡洋戦艦、「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」は共に撃沈されてしまった。


 そして、海の男として、第二水雷戦隊は、ドイツの巡洋戦艦から脱出できたドイツの海軍軍人を、何とかして救助しようと努めたのだが。


 ドイツの巡洋戦艦2隻が沈んだ付近の海面を、約1時間余り、少しでも生存者を救おうと第二水雷戦隊主力に属する軍艦に乗り組んだ面々で、協力できる者全員が努めたにも関わらず、結果的に誰一人、生きた溺者を見つけることは出来なかった。

 日本海軍の軍人達が見つけられたのは、冷たい北の海に投げ出されて絶命したドイツ海軍軍人の僅かな遺体ばかりだった。


「溺者救助を打ち切りましょう」

「そうだな。止むを得まい。この冷たい北の海では、誰も生きてはいまい」

 そして、各艦からの報告を取りまとめた上で、第二水雷戦隊の参謀はそのように提言し、第二水雷戦隊司令長官である五藤存知少将は、それに同意する言葉を発することになった。


 その場に居る全員が、思わず同じ海の男の仲間として、ドイツ海軍軍人の死を悼んでいた。

 戦争でお互いに戦死者を出すのは当然のこととは言え、こんな北の冷たい海に投げ出されては、恐らく10分も生きてはいられまい。

 自分達の攻撃によるモノとはいえ、本当に急速にドイツの巡洋戦艦2隻は沈んでいき、救命艇を降ろす等の余裕は全く無かったのだ。

 それを想えば、このような結果になったのも当然か。


 余りにも厳しい北欧の冬の海の現実に、戦闘で大勝利を収められたという興奮から、その場にいる全員が冷めてしまい、中にはドイツ海軍軍人の死を悼んで、想わず涙を零す者までいた。

 自分達が海に落ちた場合、同様に速やかに冷たい海で溺死する現実に想いを馳せてしまったのだ。


 だが、そんな想いに何時までも浸る訳には行かない。

 

 その後、日本の遣欧艦隊の水上打撃部隊は、速やかにナルヴィク沖合に急行することで、ドイツ軍のナルヴィク上陸作戦を阻止することに成功した。

 未だにドイツの駆逐艦10隻が健在だったとはいえ、金剛級戦艦4隻を含む日本艦隊に勝つのは、困難というよりも不可能な話だった。


 更に言えば、ドイツの駆逐艦全てには上陸部隊を運ぶために、砲弾等を定数一杯は積んでいなかったのだ。

 そして、上陸部隊に必要な物資の一部は、甲板上に止む無く置かれており、駆逐艦が自衛の為の砲雷撃を行う際の妨げになる有様で、物資等を慌てて海に投棄した上で反撃する有様だった。


 ここまでの悪条件が積み重なっては、ドイツの駆逐艦が懸命に奮闘しても、とても金剛型戦艦4隻等を揃えた日本艦隊に勝てるモノではない。

 日本艦隊にしても、水雷戦隊主力は魚雷を半分、発射した後であり、補充が為されていなかったが、戦艦4隻の攻撃力は圧倒的で、探照灯照射による主砲射撃までが行われては、ドイツの駆逐艦が日本の戦艦に対して雷撃を行うどころではない。

 そして、駆逐艦の主砲で、戦艦を傷つけることが出来るかと言うと。


 結果的に、古賀峯一中将が座乗した戦艦「金剛」が先頭に立って探照灯照射を率先して行ったため、ドイツ駆逐艦の集中砲撃を浴びたことから、小破する事態が起きたが、それと引き換えにドイツの駆逐艦は全艦が沈没することになった。

 幸いなことに、10隻中6隻は少しでも陸兵や乗組員を救おうと座礁という非常手段を採ったことから、ドイツ海軍の軍人全員が戦死という事態は免れたが。


 そうはいっても、乗組員まで入れると、ドイツ軍2000名程が戦死することになり、辛うじて生き延びた者も過半数が傷ついた状態で、ノルウェー軍と戦う事態に陥ることになったのだ。 

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巡洋戦艦2隻轟沈の凱歌、しかしそれは一瞬。全員溺死の現実に戦慄。 北原も五稜郭見学のついでに訪れた函館市北洋資料館で興味を持って北洋漁業の事を調べたり、母方の親戚にその業界の関係者がいて(既に引退)…
シャルンホルスト級の乗員は全員死亡。冬の極寒のノルウェー近海では仕方ないにしてもやるせないですね。収容した遺体も引き渡して名声を得れるでしょうし。 全力発揮できない駆逐艦10隻では金剛型戦艦の突撃は…
 史実では南洋を中心に殴りあった太平洋戦域と異なり峻厳寒冷な北極圏が目前の北海では救難活動もままならず「沈没=乗員総戦死」な非情な結果となってしまったナルヴィク沖海戦の顛末(´;ω;)コレには太平洋海…
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