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第七十三話

 帝都アルテミスの廃墟地帯は、朝の陽光が雲に遮られ、薄暗い空に不気味な影を投げかけていた。

 崩れた石壁が風にさらわれ、雑草が地面を覆う中、静寂が重く漂っていた。

 私は廃墟の陰に立ち、白いワンピースを着ていた。

 スカートに隠した狩猟刀の冷たい感触が太ももに残り、森での戦いの記憶が遠くに響いていた。

 紫の瞳が周囲を見渡し、心の中には昨日までの準備とロザンナの決意が渦巻いていた。

 ロザンナの怪我が全快し、彼女の赤い瞳が再び輝きを取り戻していた。

 優雅なローブを脱ぎ、ハルバートを手に持つ彼女の姿を見ると、胸が温かくなった。

「…姉さん、強い」と呟き、紫の瞳が彼女の赤いペンダントを捉えた。

 首に掛けた白銀のロケットペンダントが朝の光に反射し、絆の証として重みを増していた。

 だが、心の奥にざわめきがあった。

「…髑髏の仮面。勝てる?」と呟き、彼女が語った戦いの記憶が頭をよぎった。

 廃墟の中央で、ミリアが杖を手に持つ気配を感じた。

 レオンが剣を構え、ガルドが大剣を肩に担いでいた。

 心が揺れ、「…戦う時間?」と呟き、静かに仲間たちへ近づいた。

 風が瓦礫の間を抜けるたび、不気味な唸り声が耳に届き、朝の静寂を破った。

 

 廃墟の奥から、髑髏の仮面を被った人影が現れた。

 黒いローブに包まれ、剣を手に持つその姿は、薄暗い陽光に照らされても不気味な影を落としていた。ロザンナがハルバートを構え、赤い瞳が鋭く敵を捉えた。

「…髑髏の仮面、来る」と呟き、心が緊張で締め付けられた。ミリアが「リリィちゃん、タイミングを見て!」と叫び、青白い光が視界を確保する魔法を広げた。

 レオンが「今だ!」と合図し、ガルドが前に飛び出した。

 

 ロザンナがハルバートを振り、髑髏の仮面と正面から打ち合いを始めた。金属音が廃墟に響き、彼女の赤い瞳が決意に満ちていた。

 

 スピードと力――ロザンナの言葉が頭をよぎり、心が不安で揺れた。

「…姉さん、大丈夫?」と呟き、紫の瞳が戦いを見つめた。

 髑髏の仮面が剣を素早く振るい、煙幕を放つたび、ロザンナがそれをかわす姿に胸が締め付けられた。

 

 髑髏の仮面がロザンナとの戦いに集中し、動きが一瞬止まった。

 心が跳ね、「…今!」と呟き、狩猟刀を手に持った。足が自然に動き、廃墟の影から背後へ飛び出した。紫の瞳が敵のローブを捉え、静かに息を整えた。

 ハルバートの音が遠くに響き、髑髏の仮面の隙が開いた瞬間、狩猟刀を振り下ろした。

 刃が背中に深く斬り込み、血が黒いローブを染めた。

「…当たった」と呟き、胸に安堵が広がった。

 

 だが、髑髏の仮面が振り返り、赤い目が私を捉えた。

 驚く間もなく、足が勢いよく伸び、私を蹴り飛ばした。体が廃墟の壁に激しくぶつかり、痛みが背中を走った。

「…痛い!」と呟き、紫の瞳が敵を見つめた。

 体勢が崩れ、立ち上がれぬまま、髑髏の仮面が剣を振り上げて斬りかかってきた。

 心が凍り、「…避けられない。死ぬ?」と呟いた。静かな湖面に大きな石が沈む感覚が広がり、覚悟が胸を満たした。

 

 その瞬間、ロザンナが間に割って入った。ハルバートを捨て、彼女の体が私の前に立ちはだかった。

 髑髏の仮面の剣が彼女の胸を貫き、血が廃墟の地面に滴った。

 

 心が止まり、「…姉さん!?」と呟き、紫の瞳が彼女を捉えた。ロザンナの赤い瞳が弱々しく私を見、口元に微笑みが浮かんだ。

 ミリアが「ロザンナさん!」と叫び、杖を振ってヒールの魔法を放った。

 青白い光が彼女を包んだが、傷は深すぎて回復が間に合わなかった。

 髑髏の仮面が剣を抜こうとした刹那、ロザンナが最後の力を振り絞り、倒れたハルバートを手に取った。

 彼女の震える手が刃を振り上げ、髑髏の仮面の首を切り飛ばした。

 血が噴き出し、敵の体が地面に崩れ落ちた。

「…勝った」と呟き、胸に安堵が広がった。だが、ロザンナが膝をつき、血が彼女のローブを赤く染めた。

 心が痛み、「…姉さん、ダメ!」と叫び、彼女の側へ駆け寄った。

 

 ロザンナが地面に倒れ、赤い瞳が薄れていくのが見えた。私の手が彼女の肩を支え、涙が頬を伝った。

「…姉さん、生きて!」

 と呟き、紫の瞳が彼女を見つめた。

 ミリアが涙を堪えながら魔法を続け、レオンとガルドが呆然と立ち尽くしていた。

 ロザンナの息が弱まり、彼女の震える手が私の頬に触れた。

 血に濡れたその手が、温かさと共に私の涙を拭った。

「…ほら、泣かないの。妹を守るのがお姉ちゃんの役目なんだから…これくらいなんともないわ」

 と彼女が呟いた。声は弱々しく、笑顔が儚く浮かんでいた。心が締め付けられ、

「…姉さん、嘘だ。生きて!」

 と叫んだ。だが、彼女の赤い瞳が閉じ、息が止まった。胸に静かな痛みが広がり、涙が止まらなかった。

「…姉さん、死んだ」

 と呟き、彼女の体を抱きしめた。

 

 戦場に静寂が戻った。陽光が雲から漏れ、廃墟に柔らかな光を投げかけていた。

 髑髏の仮面の亡骸が血に濡れ、ロザンナの体が私の腕の中で冷たくなっていた。

 ミリアが「…リリィちゃん、ごめんね」と呟き、杖を下ろした。レオンが剣を地面に刺し、ガルドが大剣を落とした。

 心が空っぽになり、「…姉さん、行った」と呟いた。

 白銀のペンダントが陽光に輝き、ロザンナの赤いペンダントが彼女の胸で静かに横たわっていた。

 絆の証が、今は別れの重みを増していた。

 胸に静かな波紋が広がり、森で初めて自分を見つめた日の記憶が蘇った、答えはまだ見えない。

 だが、姉さんの犠牲が私の道を照らすのかもしれない――そんな予感が、涙と共に胸に宿っていた。

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