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第六十四話

突然、霧が割れ、黒い影が現れた。昨日と同じ漆黒の黒髪と燃える赤い瞳の少女が、ゆっくりと私に近づいてきた。

心臓が一瞬止まりそうになり、「…敵」と私は呟いた。

狩猟刀を手に持つ準備をしながら、殺意に備えた。

だが、彼女が数歩近づいた瞬間、突然その冷たい殺気や害意が消えた。

代わりに、幼い少女らしい柔らかい無邪気な笑顔が、私に向けられた。

「へぇ、本当に無表情なんだね、私の妹は」と彼女が言った。その言葉に、心がざわついた。「…妹?」と私は呟き、混乱が広がった。

ミリアの視点

柱の陰からリリィを見守っていた私は、霧の中から現れた暗殺ホムンクルスに息を呑んだ。漆黒の黒髪と赤い瞳、昨日リリィを襲ったあの少女だ。

心臓が激しく鼓動し、「…また来た! リリィちゃん、危ない!」と私は呟き、杖を握る手に力を込めた。だが、次の瞬間、彼女の雰囲気が一変した。

殺意が消え、幼い少女のような笑顔がリリィに向けられ、「へぇ、本当に無表情なんだね、私の妹は」と衝撃的な言葉が飛び出した。私の頭が真っ白になり、「…妹!? 何!?」と心の中で叫んだ。杖が震え、足がすくんだ。

彼女は二歩下がり、やや長めのスカートを摘み上げる優雅な所作で頭を下げた。


「申し遅れました、わたしはそちらのリリィの姉にあたるロザンナと申します。気軽にロザリーと呼んで下さい。…姉といっても双子の…ですが」と彼女が言った。

その瞬間、私は唖然とした。双子? リリィとあの暗殺者が? 頭が混乱し、「…信じられない。リリィちゃんに、そんな姉がいたなんて…」と呟き、杖を握る手が汗で濡れた。


リリィの視点

ロザンナと名乗った少女の笑顔が、私の紫の瞳に映った。同じ顔、同じ背格好。

だが、瞳と髪の色が違う。心の中がざわめいた。

「…双子? 私と同じ?」と私は呟き、狩猟刀を握る手を緩めた。彼女の無邪気な笑顔に、敵意が感じられなかった。

冷たい殺意が消えたことが、体の緊張を解いた。

ミリアが柱の陰から出てきて、警戒した声で

「私はミリア、リリィちゃんの相棒よ」と答えた。

ミリアの緑の瞳が鋭く光り、杖を構えているのが見えた。

ロザンナがクスクスと笑い、私たちの様子を眺めた。


「そんな警戒をしなくても大丈夫です、昨日はほんの挨拶…本気で殺すつもりなんてありませんでした。そして今日はリリィとミリアさん、あなた方と仲良くなりにきたの」と彼女が言った。心の中が揺れた。

「…仲良し? 昨日、戦ったのに?」と私は考え、彼女の赤い瞳を見つめた。

ミリアが「そんな言葉信用できるとでも?」と鋭く返すと、ロザンナは「もちろんただで信用してほしいなどと思っていません、武器はここに置いていきますし、ミリアさん、あなたの魔法でデバフをかけていただいて構いません」と答えた。


ミリアの視点

ロザンナの言葉に、私は一瞬戸惑った。

仲良くなりに来た? 昨日リリィを襲った暗殺者が? 頭が混乱し、「…罠かもしれない。信じられない」と心の中で呟いた。

だが、彼女がハルバートを奥の壁に投げ、突き刺したのを見た瞬間、わずかな安心感が広がった。

冷たい石の壁にハルバートの刃が刺さり、金属音が静寂に響いた。

彼女の優雅な所作と無邪気な笑顔が、暗殺者としての過去と矛盾し、私の心を揺さぶった。


「ご理解ありがとうございます」とロザンナが言うと、私は即座に重圧の魔法をかけた。

杖から青白い光が広がり、彼女の体に制限を加えた。彼女の動きがわずかに鈍り、赤い瞳が私を見た。


「それで? ロザンナ、あなたはリリィちゃんと仲良くなりたいと思っているそうだけど、あなたは何人も何の罪もない人を殺しているのだけど」と私は厳しい声で尋ねた。

ロザンナの表情が一瞬悲しげになり、目を伏せた。

「残念ながら仕事なのです、秘密を知った者を消すという…わたしが生きていくためのね」と彼女が答えた。

その言葉に、胸が締め付けられた。

「仕事…? 暗殺が生きるため?」と私は呟き、杖を握る手に力がこもった。


ミリアとロザンナの会話を聞いていた。心の中がざわめいた。

「…仕事? 暗殺?」と私は考え、初めて口を開いた。「仕事…?」と呟くと、ロザンナが私の方を向いた。


「ええ、リリィ…あなたは魔王軍の襲撃を免れ、辺境の心優しいご両親に育てられました。ですがわたしは一度魔王軍の手に落ち、人間相手の暗殺者として育てられたあと、先代の勇者様に魔王が重傷を負い眠りについたところで路頭に迷い、暗殺ギルドに拾われ、暗殺の技術を見込まれて暗殺者として生きてきました。そんな折に魔王を撃ち倒し、右腕のクロノスを倒した勇者パーティに私の姉妹がいると情報がもたらされました。そしてわたしは気になりました、わたしの妹とはどれだけ強いのか? どれだけかわいいのか」と彼女が言った。

心が揺れた。「…姉? 私と同じ、作られた?」と私は呟き、彼女の赤い瞳を見つめた。

ロザンナが私に近づき、リリィの手を取る。

「リリィ、わたしと今日一日デートしていただけませんか?」と尋ねた。

その言葉に、頭が混乱した。

「…デート? 戦った相手と?」と私は考えたが、ミリアが反対しようとした前に、「…うん」と私は答えた。

ミリアの驚いた顔が見えたが、決めたのだ。ロザンナの笑顔が、私の心に奇妙な安心感を与えた。

ミリアの視点 - デートの始まり

リリィが「うん」と答えた瞬間、私は言葉を失った。

「…リリィちゃん!? ダメよ、そんな危険な…!」と叫びそうになり、杖を握る手に力を込めた。

だが、リリィの紫の瞳が私を見つめ、静かな決意を感じた。ロザンナが無邪気な笑顔でリリィの手を取り、帝都の街へと繰り出した。私の心は焦りでいっぱいだった。

「リリィちゃんを一人にできない…!」と呟き、すぐ後を追いかけた。

街に繰り出したリリィとロザンナは、正反対の雰囲気だった。

明るいロザンナと冷静なリリィは、瞳と髪の色以外は全く同じ造形。双子と言っても差し支えないほどで、街の人々は誰も疑わなかった。

市場の喧騒が二人の周囲を包み、露店の色とりどりの布が風に揺れた。

私の胸は不安で締め付けられ、「…ロザンナ、信用できない。リリィちゃんを危険に晒すなんて…」と呟きながら、遠くから見守った。


帝都の街をロザンナと歩く。

市場の香辛料の匂い、石畳に響く足音、子供たちの笑い声。心の中が奇妙に穏やかだった。

ロザンナが「リリィ、こっち見て!」と笑い、露店のアクセサリーを見せた。赤い瞳が輝き、黒髪が風に揺れる。同じ顔なのに、彼女の笑顔は私と違う。

「…無表情、と言われた」と私は呟き、彼女の笑顔を見つめた。

彼女が私を「妹」と呼ぶことが、頭から離れなかった。

露店で一緒にパンや果物を買い、公園のベンチに座った。

太陽が雲に隠れ、冷たい風が吹く。ロザンナが「リリィ、美味しい?」と笑い、パンを差し出した。心の中が温かくなった。


「…うん。美味しい」と私は呟き、パンを食べた。彼女の優しさに、敵だった記憶が薄れた。

だが、暗殺者の過去が頭をよぎる。

「…仕事、殺す?」と私は尋ねた。ロザンナの笑顔が一瞬曇ったが、「今日は仕事じゃない。妹と過ごす時間だよ」と答えた。


リリィとロザンナが市場を歩く姿を見ながら、私は柱の陰や遠くのベンチから見守った。

彼女たちの双子らしい姿に、街の人々が微笑む様子が不思議だった。私の心は不安でいっぱいだった。

「ロザンナ、暗殺者なのに…リリィちゃんを騙してるの?」と呟き、杖を握る手に汗が滲んだ。

彼女がハルバートを置いたこと、重圧の魔法で制限をかけたことが、少しだけ安心感を与えたが、信じるには時間がかかる。


公園のベンチで二人がパンや果物を食べる姿を見たとき、ミリアの心が揺れた。

「リリィちゃん、楽しそう…。でも、ロザンナの真意が分からない」と呟き、気配察知の魔法を維持した。

彼女の赤い瞳がリリィを見つめる瞬間、暗殺者の気配が消えているように見えた。

だが、過去の殺人が頭を離れず、「…仕事と言った。リリィちゃんをどうする気?」と不安が広がった。


夕方、太陽が地平線に沈み始めた。

ロザンナが私から一歩離れ。

「今日はここまでです。一緒にデートできて楽しかったです。ではまたお会いしましょう」と笑った。

心の中が穏やかだった。

「…楽しかった」と私は呟き、彼女の赤い瞳を見つめた。

彼女が踵を返し、霧の中へ歩いて行く。

黒髪が風に揺れ、姿が見えなくなった。

ミリアが私のそばに寄る。

「リリィちゃん、大丈夫?」と呟いた。

ロザンナの意図が分からない。敵だったのに、妹として接してきた。心の中では、微かな温かさと疑問が混じった。

「…姉? 敵じゃない?」と私は考え、紫の瞳で霧を見つめた。

ミリアの気配が近くにあり、安心感があった。

彼女を信じられるか、まだ分からない。

でも、今日の時間は、嫌ではなかった。


ロザンナが去り、霧に消えるまで見送った。私の心は複雑だった。

「リリィちゃんの命を脅かすものじゃない…?」と直感に近い感覚が広がった。彼女の笑顔、双子らしい絆、暗殺者としての過去――全てが矛盾し、頭を混乱させた。

リリィが「楽しかった」と呟いた言葉に、胸が温かくなった。


「リリィちゃん…ロザンナを信じていいのかな?」

と呟き、彼女の白銀の髪を撫でた。

杖を握り直す。

「次に会ったとき、真相を確かめるよ。リリィちゃんを守るためなら、どんな敵とも戦う」と私は決意した。

リリィの紫の瞳が私を見つめ、静かな信頼を感じた。一行はロザンナの再訪に備え、警戒を強める覚悟を固めた。

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