第六三話
昨日、帝都アルテミスの路地裏で、赤い瞳の少女――暗殺用ホムンクルスと戦った。
その戦いの記憶が、頭の中で鮮やかに蘇る。
朝の光が薄い霧を切り、冷たい風が石畳を撫でる中、私はミリアと共に昨日の戦場へと向かった。
白いワンピースは昨日の泥でまだ汚れ、青いボトムスが足に馴染む感触が、私を戦士として目覚めさせていた。心の中では、微かなざわめきがあった。
「…昨日、負けなかった。でも、勝てなかった」と私は呟き、紫の瞳で前を見た。
路地裏の開けた場所に着くと、昨日の戦いの痕跡が残っていた。地面に突き刺さったハルバートの跡、砕けた石の破片、かすかに残る血の匂い。冷たい空気が私の肌を刺し、背中に昨日感じた殺意がよみがえった。
「…ここで、戦った」と私は呟き、スカートから二振りの狩猟刀を取り出した。金属の冷たさが手に伝わり、戦士としての本能が目覚めた。ミリアは少し離れた場所で、私を見守っている。
彼女の緑の瞳が心配そうに光るのが、遠くから見えた。
狩猟刀を手に持つと、昨日と同じ動きを繰り返し始めた。ステップを踏み、刀を振り下ろす。
赤い瞳の少女がハルバートを振るう姿を思い浮かべ、彼女の太刀筋を頭に刻む。
「…速い。強い。でも、隙があった」と私は呟き、刀を左に振って横に斬る動作を繰り返した。
彼女がハルバートを防ぐ瞬間、わずかな硬直があった。その隙を突くイメージが頭に浮かんだ。
心の中では、戦いの勝ち筋を見極めようとしていた。
「…次は、勝てる。仲間と一緒なら」と私は自分に言い聞かせ、汗が額に滲んだ。
石の地面に足跡が刻まれ、風が白銀の髪を揺らす。
昨日の戦いの感覚が体に残り、筋肉が自然と反応した。赤い瞳の少女の冷たい笑み、殺意の重圧――それが私の動きを鋭くした。
「…同じ顔。でも、敵」と私は呟き、刀を両手で構えた。
彼女との再戦が近づいている気がした。心の奥で、微かな恐怖が蠢いたが、ミリアの存在がそれを抑えた。
「…ミリア、守る。自分も、守る」と私は決意を新たにした。
私は少し離れた石の柱の陰から、リリィの姿を見守っていた。朝の薄い霧が彼女の白いワンピースを淡く包み、青いボトムスが彼女の小さな体を際立たせていた。
彼女が狩猟刀を手に持つ姿は、昨日戦った暗殺用ホムンクルスとの戦いを思い起こさせ、心をざわつかせた。
私の心は、リリィへの愛情と不安でいっぱいだった。
「リリィちゃん…昨日、あんな戦いを乗り越えて…」と私は呟き、杖を握る手に力を込めた。
正直に言うと、私は近接戦闘では他のメンバー――レオンやガルドに比べて格段に劣る。
棒術の心得はあるものの、平の兵士とやっと打ち合える程度で、ゴブリンに一対一でなんとか勝てるくらいの能力しかない。
それでも、リリィの動きを見ていると、彼女の成長が目に見えて分かった。
わずか一日の間に、彼女のステップはより鋭くなり、刀の振り方が洗練されていた。
「…リリィちゃん、こんなに強くなってる。信じられないくらい」と私は呟き、緑の瞳に驚きが広がった。
彼女の無表情な顔が、戦士としての輝きを放ち、私の胸を熱くした。
リリィがイメージトレーニングを続ける中、私はこっそりと気配察知の魔法を展開していた。空気に魔力を流し込み、周囲の動きを感知する。
薄暗い路地裏の静寂が、魔法の波に乗って私の耳に届いた。
すると、突然、魔法陣に微かな反応が現れた。
心臓が跳ね上がり、「…何!?」と私は呟き、視線をその方向へ向けた。霧の中から、黒い影が浮かび上がった。
昨日戦った暗殺用ホムンクルス――漆黒の黒髪と燃える赤い瞳の少女が、静かに立っていた。
冷たい殺意が空気を重くし、私の背筋が凍った。
視線を気配の方向へ向けると、霧が割れ、黒い影が浮かび上がった。昨日戦った暗殺用ホムンクルス――漆黒の黒髪と燃える赤い瞳の少女が、静かに立っていた。私の息が止まり
「…また来た! リリィちゃん、危険!」
と私は呟き、杖を構えた。彼女の赤い瞳がリリィを睨む姿は、昨日と同じ殺意に満ちていた。
リリィが狩猟刀を手に持つ準備をするのが見え、彼女の小さな体が戦士として輝く瞬間だった。
だが、心の中では
「リリィちゃんを一人にできない…! レオン、ガルド、早く!」と焦りが広がった。
赤い瞳の少女が霧の中から現れた瞬間、心が跳ねた。
「…同じ顔。敵」と私は呟き、紫の瞳で彼女を捉えた。漆黒の黒髪が風に揺れ、ハルバートを手に持つ姿は、昨日と同じだった。
冷たい殺意が私の肌を刺し、背中の感覚が強くなった。
「…危険。でも、戦う」
と私は決意し、狩猟刀を両手に構えた。スカートから取り出した刀の冷たさが、手に馴染んだ。
彼女の赤い瞳が私を捉え、冷たく光った。霧が彼女の姿をぼやけさせ、静寂が重くなった。
心の中では、昨日の戦いを思い出した。
彼女の太刀筋、ハルバートの重さ、殺意の圧力――それが頭に浮かび、「…次は、勝つ」と私は呟いた。
ミリアの気配が近くにあり、レオンとガルドの気配も感じられた。
仲間がいる安心感があったが、彼女の存在が私を緊張させた。
「…何を考えている?」と私は呟き、彼女の次の行動を待った。




