第五十四話
帝都アルテミスでの準備を終えた勇者一行――レオン、ガルド、ミリア、そしてリリィ――は、戦術家クロノスの拠点である森の砦へと向かっていた。
影の森の奥深くに位置する砦は、クロノスの最後の隠れ家であり、そこにたどり着くまでの道のりは過酷を極めることが予想された。レオンが「クロノスは術の使い手だ。森には罠や魔物が待ち受けているだろう。気を引き締めろ」と呟き、剣を手に持った。
ガルドが「へっ、魔物だろうが罠だろうが、俺がぶっ壊してやるぜ!」と叫び、大剣を肩に担いだ。
ミリアが「リリィちゃん、私が道を案内するから、一緒に頑張ろうね」と笑うと、リリィが無表情で「…ミリア、ありがとう」と呟き、スコップを握り直した。
一行が影の森に足を踏み入れると、すぐに異様な雰囲気が漂っていた。
森は魔法によって作られた霧に覆われ、視界がほとんど効かないほどだった。
霧は方向感覚を狂わせる作用があり、木々の間を抜ける風が不気味な唸り声を上げていた。
レオンが「この霧…魔法の仕業だ。ミリア、魔力探知で道を頼む」と呟くと、ミリアが「うん、任せて!」と呟き、目を閉じて魔力を集中させた。
彼女の金髪が微かに光り、魔力探知の魔法が森の奥へと続く道を照らし出した。
「…この方向よ。みんな、ついてきて!」とミリアが叫び、一行は霧の中を進み始めた。
森の奥へと進むにつれ、魔物が次々と現れた。
牙をむき出しにした狼型の魔物や、木の枝に擬態した蛇型の魔物が、一行に襲い掛かってきた。
レオンが「敵だ! 迎え撃つぞ!」と叫び、剣で魔物を斬りつけた。
ガルドが「てめえら、邪魔だ!」と吼え、大剣で魔物を薙ぎ払った。二人の連携は完璧で、魔物たちは次々と倒されていった。
しかし、魔物の数は多く、稀に討ち漏らしがミリアに迫ることがあった。
ミリアが魔力探知に集中していると、背後から蛇型の魔物が襲い掛かってきた。
「…っ!」とミリアが気付いた時にはすでに遅く、蛇が牙をむき出しにして彼女に飛びかかろうとしていた。
しかし、リリィが「…ミリア、ダメ」と呟き、素早く動いた。彼女はミリアのそばに控え、収納魔法で取り出した狩猟刀を手に持つと、一瞬で蛇の首を切り落とした。「…邪魔」と呟きながら、リリィの紫の瞳は鋭く光っていた。
ミリアが「リリィちゃん、ありがとう! 助かったよ」と笑うと、リリィが「…ミリア、守る」と呟き、無表情のままミリアのそばに戻った。
レオンが「リリィ、よくやった。ミリアの援護を頼む」と呟き、ガルドが「リリィ、ナイスだぜ! 俺たちも負けてられねえな!」と笑った。
一行は魔物を倒しながら、休息を挟みつつ、数日間かけて森の奥へと進んだ。
霧の中での戦いは過酷だったが、仲間との連携が一行を支えていた。
数日間の過酷な旅を終え、一行が森の奥にたどり着くと、突然霧が晴れ、森が開けた場所に出た。そこには古びた石造りの砦がそびえ立っていた。
砦は苔に覆われ、崩れかけた壁が不気味な雰囲気を漂わせていた。
門は巨大な鉄製で、クロノスの魔力が感じられるほど重厚だった。
レオンが「ここが森の砦…クロノスの拠点だ。気を引き締めろ」と呟き、剣を構えた。
しかし、門の前には大柄な甲冑が立っていた。
甲冑はまるで生きているかのように動き、門を守護するように構えていた。
甲冑が一行に気付くと、携えていた巨大な大剣を構え、戦闘態勢に入った。
「…敵」とリリィが呟き、スコップを手に持った。
ガルドが「お前が門番か! 俺が相手だ!」と叫び、大剣を手に突進した。
レオンが「ガルド、無茶をするな! 連携を取るぞ!」と叫び、剣を手に甲冑に近づいた。
甲冑は驚異的な力と素早さを持っていた。
巨大な大剣を振り回し、レオンとガルドを翻弄した。
レオンが「動きが速い…! 剣術も緻密だ」と呟き、甲冑の攻撃を剣で受け止めたが、衝撃で後退させられた。
ガルドが「くそっ、硬えな! 俺の大剣でも傷一つつけられねえ!」と叫び、大剣で甲冑の胴体を叩いたが、甲冑はびくともしなかった。
甲冑が大剣を振り下ろすと、地面が割れるほどの衝撃が走った。
レオンが「ガルド、横に回り込め!」と叫び、甲冑の注意を引きつけた。
ガルドが「分かったぜ!」と叫び、甲冑の背後に回り込もうとしたが、甲冑は素早く動き、ガルドを弾き飛ばした。
「ぐっ…!」とガルドが地面に倒れ、レオンが「ガルド!」と叫んだ。
甲冑の攻撃は容赦なく続き、レオンとガルドは段々と劣勢に追い込まれていた。
ミリアが「私が援護するわ!」と叫び、魔法で甲冑の動きを封じようとしたが、甲冑の魔力耐性が強く、魔法がほとんど効かなかった。
「…効かない…!」とミリアが呟き、リリィが「…ミリア、守る」と呟き、ミリアのそばに立った。
リリィは戦いを見ながら、甲冑の動きを冷静に観察していた。
彼女の無感情な性格ゆえ、戦闘中でも冷静さを失うことはなかった。
リリィが「…甲冑…腹部」と呟き、紫の瞳が鋭く光った。
彼女は甲冑の腹部に微かなヒビが入っていることに気付いた。
甲冑の動きが激しい中でも、リリィの観察力は鋭く、弱点を見逃さなかった。
リリィが「…そこ…狙う」と呟き、収納魔法を使って、魔王城の地下で拾った金属製の火薬を使った武具を取り出した。
それは円錐形の金属塊を発射する、爆発的な威力を持つ武器だった。
リリィが「…撃つ」と呟き、武具を甲冑に向け、引き金を引いた。
爆音と共に、目にも止まらぬ速度で金属製の円錐形の塊が2発、甲冑の腹部のヒビに向かって飛翔した。
1発目がヒビに直撃し、甲冑の装甲を貫通すると、2発目がその傷口をさらに広げ、甲冑の中の本体にダメージを与えた。
「…グオオオ!」と甲冑がうめき声を上げ、動きが一瞬止まった。
ガルドが「今だ!」と叫び、大剣を手に甲冑に突進した。
甲冑の首を狙い、力いっぱい大剣を振り下ろすと、甲冑の首が刎ねられ、そのまま地面に倒れ込んだ。
甲冑は動かなくなり、戦いは一行の勝利に終わった。
レオンが「リリィ、よくやった! お前の観察力が勝利を呼んだ」と呟き、ガルドが「リリィ、すげえな! 俺も負けてられねえぜ!」と笑った。
ミリアが「リリィちゃん、すごい! ありがとう!」と笑い、リリィを抱きしめた。
一行は甲冑との戦いに勝利した喜びを分かち合った。
ガルドが「やったぜ、リリィ! お前のおかげだ!」と叫び、リリィの頭を撫でた。リリィが「…ガルド、ありがとう。ミリア…無事でよかった」と呟き、無表情のまま小さな笑みを浮かべた。
ミリアが「リリィちゃん、私を守ってくれてありがとう。やっぱりリリィちゃんは頼もしいね」と笑うと、リリィが「…ミリア、嬉しい」と呟き、紫の瞳に微かな温もりが宿った。
レオンが「クロノスは砦の中にいるはずだ。この門を突破したことで、一歩近づいた。気を引き締めて進もう」と呟き、一行は砦の巨大な門に近づいた。
ガルドが「よし、開けるぜ!」と叫び、門を力づくで押し開けた。
門が軋みながら開き、砦の内部が姿を現した。クロノスとの決戦が近づいており、一行の絆はさらに強くなっていた。




