第五十一話
帝都アルテミスは年に一度の盛大な祭りで賑わっていた。
帝都の繁栄を願う意味が込められたこの祭りは、街全体が色とりどりの飾り付けで華やぎ、住民たちが笑顔で通りを歩いていた。
石畳の通りには出店が立ち並び、焼き菓子の甘い香りや、肉を焼く香ばしい匂いが漂っていた。
広場では大道芸人が火を吹き、子供たちが歓声を上げて手を叩いていた。
魔王とその右腕である執事を倒した勇者一行――レオン、ガルド、ミリア、そしてリリィ――も、この祭りに参加していた。
レオンが「クロノスの調査も大事だが、たまには息抜きも必要だ。祭りを楽しもう」と提案し、一行は帝都の中心街へと繰り出した。
レオンは剣を腰に下げ、普段の鎧姿ではなく軽装で街を歩いていた。
ガルドはいつものように大剣を背負い、祭りの雰囲気にテンションが上がっていた。
ミリアは淡い緑のドレスを着て、長い金髪を風になびかせていた。
リリィは白いワンピースに白タイツといういつもの姿で、スコップを手に持っていた。
ミリアが「リリィちゃん、祭りって楽しいね! いろんなお店を見て回ろう!」と笑うと、リリィが無表情で「…うん。ミリアと一緒…楽しい」と呟いた。
彼女の白銀の髪が陽光に輝き、紫の瞳が初めて見る祭りの光景に微かに輝いていた。
レオンが「こういう賑わいは久しぶりだな。魔王との戦いが終わって、ようやく平和を感じる」と呟き、ガルドが「へっ、祭りはいいぜ! 何か面白そうな競技でもねえかな!」と叫んだ。
一行はまず、焼き菓子の出店に立ち寄った。店主が「勇者様、いらっしゃい! シナモンのクッキー、いかがですか?」と笑顔で言うと、ミリアが「ありがとう! リリィちゃん、食べる?」と尋ねた。
リリィが無表情でクッキーを見つめ、「…シナモン…甘い?」と呟くと、店主が「甘くて美味しいよ! 試してみな」と答えた。
リリィが一口かじり、「…美味しい」と呟き、紫の瞳に微かな光が宿った。ミリアが「よかった、リリィちゃんが気に入ってくれて」と笑い、リリィの頭を撫でた。
次に一行は、アクセサリーの出店に立ち寄った。
ミリアが「リリィちゃん、この髪飾り似合いそう!」と紫色の花の髪飾りを手に持つと、リリィが「…ミリアが選ぶなら…付ける」と呟いた。
ミリアがリリィの白銀の髪に髪飾りを付け、「可愛い! リリィちゃん、似合ってるよ!」と笑うと、リリィが「…ミリア、嬉しい」と呟き、小さな笑みを浮かべた。
通りすがりの住民が「ミリア様、妹さんかい? 仲が良くて微笑ましいね」と言うと、ミリアが「ありがとう! 妹じゃないけど、大切な仲間なの」と笑った。
レオンとガルドは、別の出店で弓矢の射的競技に参加していた。
レオンが冷静に矢を放ち、的の中心を射抜くと、店主が「さすが勇者様だ! 景品をどうぞ!」と小さな木彫りの人形を渡した。ガルドが「俺も負けねえぜ!」と叫び、力任せに矢を放つが、的から大きく外れてしまった。レオンが「ガルド、力だけじゃダメだ。冷静になれ」と笑うと、ガルドが「くそっ、次は絶対当ててやる!」と悔しがった。
一行が広場を歩いていると、大きな歓声が上がった。
広場の端では、樽投げ競技が行われていた。ルールは簡単で、参加者が樽を後方の壁の上方へ投げ、どれだけの高さに達するかを競うものだった。壁には目盛りが付けられており、これまでの最高記録は10メートルの高さに達していた。
競技の主催者が「さあ、次は誰が挑戦するかな!? 豪華景品を用意してるぞ!」と叫ぶと、ガルドが「お、面白そうじゃねえか! 俺に任せろ!」と嬉々として手を挙げた。
ガルドが競技場に立つと、周りの住民たちが「でかい男だ! これは期待できるぞ!」と囁き合った。
ガルドは大きな樽を手に持ち、「へっ、こんなもん、軽いぜ!」と叫び、勢いよく樽を投げ上げた。樽は高く舞い上がり、壁の目盛りを超えて12メートルの高さに達した。
「おおおっ!」と観客が歓声を上げ、主催者が「新記録だ! 12メートル! すごいぞ!」と叫んだ。
ガルドが「どうだ、見たか!」と笑いながら戻ってくると、ミリアが「ガルド、すごい! さすがだね!」と拍手した。
リリィが無表情で「…ガルド、強い」と呟き、ガルドがリリィの頭に手を乗せて撫でながら「リリィもやってみるか!?」と冗談混じりに言った。
ミリアが「え、リリィちゃん、ガルドより高く投げられるかな?」と笑うと、リリィが「…やってみる」と呟き、壁の前に立った。
小柄なリリィの登場に、観客たちの反応は様々だった。
ある男が「なんだ、あのガキ! 無理だろ!」と煽り立て、別の女性が「可愛い子だけど、樽なんて持てるのかしら?」とどよめいた。リリィは無表情のまま樽を手に持ち、「…重くない」と呟いた。
彼女の小さな体躯からは想像もできないほど、樽をヒョイと軽々と持ち上げた。
リリィが「…投げる」と呟き、勢いよく樽を放り投げた。
樽は驚くべき速さで高く舞い上がり、ガルドが先ほど更新した12メートルの高さを軽々と超え、13メートルの目盛りに達した。
「うおおおっ!」と観客がこれまで以上の歓声を上げ、どよめきが広場を包んだ。
主催者が「信じられない! 13メートルだ! 新記録だぞ!」と叫び、観客たちが「すごい! あの子、誰だ!?」と口々に叫んだ。
ガルドが「…マジかよ、リリィ! 俺を超えやがった!」と驚きながらも笑い、レオンが「リリィの実力なら驚くことじゃないな」と冷静に呟いた。
ミリアが「リリィちゃん、すごい! やったね!」と駆け寄り、リリィを抱きしめた。
リリィが「…ミリア、嬉しい」と呟き、無表情のまま紫の瞳に微かな光を宿した。
観客の一人が「ミリア様の妹、めっちゃ強いな! 見た目からは想像もつかねえ!」と叫び、広場は拍手と歓声に包まれた。
その後も何人かが挑戦したが、リリィの記録を超える者は現れなかった。
主催者が「優勝はリリィちゃんだ! 景品をどうぞ!」と叫び、リリィに商品を渡した。
景品は、帝都のお店の商品を一つだけ無料で引き換えできるチケットだった。
リリィが「…チケット…何に使う?」と呟くと、ミリアが「リリィちゃんが決めるといいよ! 何か欲しいものある?」と笑った。
リリィが「…ミリアと…何か食べたい」と呟き、チケットを手に持った。
ガルドが「いいね、リリィ! 俺も腹減ったぜ。なんか美味いもん食おう!」と笑い、レオンが「祭りの屋台で使える店もあるだろう。探してみよう」と提案した。
一行はチケットを持って、祭りの出店を見て回った。
一行はチケットを使って、焼き肉の串焼きを無料で引き換えた。
ミリアが「リリィちゃん、これ美味しいよ!」と串焼きを渡すと、リリィが一口かじり、「…美味しい…ミリア、ありがとう」と呟いた。
ガルドが「リリィ、よくやったな! お前のおかげで美味いもん食えたぜ」と笑い、リリィの頭を再び撫でた。
レオンが「祭りを楽しむのもいいが、クロノスの動きも忘れるな。明日からまた調査を進めよう」と呟き、一行は頷いた。
夜が更け、祭りは最高潮に達していた。
広場では花火が打ち上げられ、夜空を色とりどりの光が彩った。
ミリアが「リリィちゃん、花火綺麗だね!」と笑うと、リリィが「…うん。初めて見た…綺麗」と呟き、紫の瞳を輝かせた。
レオンが「魔王との戦いが終わって、こうやって祭りを楽しめる日が来るとはな」と呟き、ガルドが「だな! 俺たち、最高の仲間だぜ!」と叫んだ。
リリィが「…ミリア、レオン、ガルド…仲間、嬉しい」と呟き、無表情のまま小さな笑みを浮かべた。
ミリアがリリィの手を握り、「私もリリィちゃんと一緒で嬉しいよ。
ずっと一緒だよ」と笑った。一行は花火を見上げながら、絆をさらに深めた。
祭りの夜は穏やかに過ぎ、勇者たちは新たな戦いに向けて力を蓄えた。




