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第三十九話

魔王を倒し、帝国の首都「アルテミス」に凱旋した勇者一行ーーレオン、ガルド、ミリア、そしてリリイーーは、勲章授与式で予想外の悲劇に見舞われた。

リリィが王の前で勲章を受け取る瞬間、背後から暗殺者に二本の短剣で刺され、胸を貫かれた。

レオンが暗殺者を引き剥がし、ガルドが殴り飛ばして昏倒させ、ミリアが即座に回復魔法をかけたが、傷は深く、リリィは昏睡状態に陥った。

それから三日間、リリイは目を覚ますことなく眠り続けていた。

王宮の医務室に運ばれたリリィは、白いベッドに横たわり、胸に包帯が巻かれていた。青白い顔に微かな呼吸が続き、銀髪が枕に広がっていた。スコップはベッドの横に置かれ、彼女の手から離れていた。

医務官が「命は助かったが、傷の深さと血の喪失で意識が戻らない。時間が必要だ」と告げ、一行はリリィの回復を祈った。


リリィが眠っている間、レオンとガルドは暗殺者の調査に走していた。

昏倒した暗殺者は王宮の地下牢に拘束され、若い男の姿が明らかになった。レオンが剣を手に宅の鉄格子越しに「誰に命じられた?魔王の手下か?」と問うと、暗殺者は目を覚まし、「知らねえ。金をもらってやっただけだ」と呟いた。ガルドが「ふざけんな!」と鉄格子を殴り、「リリィを刺した理由を吐け!」と吼えたが、暗殺者は「雇い主の顔も知らねえ。影の中の声だけだ」と繰り返した。

レオンが「帝国に敵が潜んでる。魔王が死んでも終わりじゃねえな」と呟き、ガルドが「暗殺者を操る裏切り者がいるってことか。見つけ出してぶっ潰すぜ」と拳を握った。

二人は皇帝に報告し、騎士団と協力して暗殺者の背後を追った。貴族の動向、帝国軍の動き、市場の噂を調べたが、手がかりは少なく、苛立ちが募った。

レオンが「リリィが目を覚ますまで、俺たちが守るしかない」と決意し、ガルドが「アイツが起きるの待つしかねえのかよ」と歯ぎしりした。

一方、ミリアはリリイの看病に専念していた。医務室の椅子に座り、リリィの手を握り、「リリィちゃん、目を覚まして...お願い...」と呟いた。彼女は杖を手に、毎日回復魔法をかけた。

光がリリィの傷を包み、包帯の下の傷跡が少しずつ薄れたが、意識は戻らなかった。ミリアが「私の魔法が遅かったら...リリィちゃんがこんな目に...」と涙を拭い、リリくの銀髪を撫でた。

医務室の窓から差し込む朝陽がリリィを照らしていた。


当のリリイは深い眠りの中で夢を見ていた。

暗闇が広がる意識の中で、突然、視界が開けた。目の前に赤い色をした大きな門が現れた。まっすぐな二本の棒に、横に一本が乗っかったシンプルな構造で、飾り気はなかったが、なぜかそこを通ると別の世界に足を踏み入れるような気がした。

リリィは無表情で立ち尽くし、紫の瞳でその門を見つめた。

スコップを手に持つ彼女は、以前魔術師に襲われ、痛めつけられて気絶した時に見た夢と同じものだと気づいた。

「また....この門」と呟き、ゆっくりとその下をくぐった。

門を抜けると、冷たい風が頬を撫で、木々のざわめきが耳に響いた。

目の前に不思議な建物が現れた。

屋根がふわっと曲がり、草や黒い板のようなものが敷き詰められていた。

屋根の端には尖ったものや短い棒がちょこんと乗っていて、それが何なのかわからなかったが、大事なもののような雰囲気が漂っていた。

壁はただの木でできており、色も塗られていないようで、触ったらザラザラしそうだった。

建物は地面から少し浮き、下に石が並んでいて、「これ、どうやって立ってるんだろう?」とリリィの頭がぐるぐるした。


周りには高い木が立ち並び、静かでひんやりした空気が漂っていた。

道の脇には石でできた変な形のものが立っていて、上に穴が空いているものもあった。何に使うのかわからないが、全部が自然にそこにあるように感じた。リリィは立ち尽くし、見たこともない場所をじっと見つめた。

二度目に目にするこの建物は、厳かで素朴で、ずっと昔からそこにあったような気がした。

胸の奥がざわざわし、怖いような懐かしいような、よくわからない気持ちが湧き上がった。


リリィはスコップを手に持ったまま、ゆっくりと建物に近づいた。

小さな足音が苔の上に響き、風が銀髪を揺らした。建物の中からは何の音も聞こえず、静寂が広がっていた。「ここ...どこ?」と呟いたが、声は風に呑まれて消えた。

彼女の心はいつも通り感情が薄く、ただ目の前の光景を観察するだけだった。

だが、胸のざわめきは止まらず、何か大切なものがここにあるような気がしてならなかった。


すると、リリイの目の前に一人の少女が現れた。

白い上着と赤いスカートのようなズボンを履いた少女は、リリィと同じくらいの背丈で、長い黒髪が風に揺れていた。

少女は無言でリリィに近づき、突然彼女を抱きしめた。

リリィは一瞬体を固くしたが、少女の腕から伝わる温かさに奇妙な感覚が流れ込んできた。

それは、かつて育ててくれた老夫婦に抱きしめられた時の感覚に似ていた。

おじいちゃんの大きな手、おばあちゃんの優しい声が頭に蘇り、リリイの紫の瞳が微かに揺れた。

紅白の衣服の少女がリリィの耳元で囁くように言った。

「あなたはもう大丈夫だよ。誰も傷付けなくても生きていける。優しくて強い人だから。」その言葉が胸に響き、リリィが「..?」と首を傾げた瞬間、少女の姿がかき消え、周りの景色がボヤけ始めた。

木々も建物も門も溶けるように消え、暗闇がび広がった。


次に目を開けると、リリィは知らない部屋で寝かされていた。白い天井と柔らかいベッド、窓から差し込む朝陽が目に入った。胸に包帯が巻かれ、スコップがベッドの横に置かれていた。

ミリアが椅子に座り、泣きそうな顔でリリィを見ていた。リリィが目を覚ました瞬間、ミリアの顔がぱっと明るくなり、「リリィちゃん!」と叫んで彼女を抱きしめた。

「目を覚ましてくれて...よかった...!三日間も眠ったままだったから、心配で、心配で....!」とミリアが涙を流しながら言った。

リリィは無表情でミリアを見つめ、「ミリア...泣いてる?」と呟いた。

ミリアが「うん、嬉しいからだよ。リリィちゃんが生きてて、戻ってきてくれて....」と嗚咽を漏らし、リリィの銀髪を撫でた。リリィが「夢を見た。赤い門と...少女がいた」と呟くと、ミリアが「夢? 大丈夫だった?」と尋ねた。

リリィが「わからない。でも....温かかった」と淡々と答えた。

その時、ドアが開き、レオンとガルドが入ってきた。

レオンが「リリィ、起きたのか!よかった」と笑い、ガルドが「お前、寝すぎだぜ!心配したんだからな!」と笑った。

ミリアが「レオンとガルドは暗殺者を調べてたよ。私はずっとそばにいたけど...」と説明し、リリィが「ありがとう」と呟いた。一行はリリィの目覚めを喜び、医務室に笑顔が広がった。


レオンが「暗殺者の背後はまだわからない。帝国に敵が潜んでるのは確かだ」と呟き、ガルドが「リリィが目を覚ましたなら、次はそいつらをぶっ潰すぜ」と拳を握った。

ミリアが「リリィちゃん、ゆっくり休んでね。私たちが守るから」と優しく言い、リリィが「うん。でも、私も戦う」と呟いた。彼女の紫の瞳に微かな決意が宿っていた。

リリィの夢の中の少女と赤い門は謎のままだったが、一行の絆は深まり、新たな戦いへの覚悟が芽生えていた。

魔王を倒した英雄たちの旅は、まだ終わっていなかった。

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