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第三十八話


魔王城での壮絶な戦いを終え、魔王を倒した勇者一行――レオン、ガルド、ミリア、そしてリリィ――は、帝国の首都「アルテミス」に凱旋した。魔王の首こそ持たなかったが、先代の勇者の盾が勝利の証だった。城門をくぐると、石畳の道に花びらが撒かれ、民衆の歓声が響いた。

「勇者様!」「帝国を救ってくれた!」と叫ぶ声が絶えず、子供たちが旗を振った。レオンが剣を腰に下げ、疲れた顔に笑みを浮かべ、「長かった旅が終わったな」と呟いた。

ガルドが戦斧を肩に担ぎ、「やっとうまい酒が飲めるぜ」と笑った。

ミリアは杖を手に「みんな、喜んでくれてるね」と微笑み、リリィはスコップを握り、無表情で「魔王は死んだ」と淡々と呟いた。

一行は帝国軍の護衛に導かれ、城の広場へ向かった。そこでは盛大なパーティが準備され、長いテーブルにロースト肉、果物、葡萄酒が並んでいた。貴族や騎士団が集まり、楽団が華やかな音楽を奏でていた。皇帝の使者が「勇者一行の帰還を祝う!」と宣言し、民衆が拍手と歓声を上げた。

レオンが「こんな歓迎、初めてだ」と呟き、ガルドが「酒と飯がうまいなら最高だぜ!」と笑った。ミリアが「リリィちゃん、すごいね。私たち、英雄だよ」と優しく言うと、リリィが「わからない。魔王を倒しただけ」と無表情で答えた。



パーティは夜遅くまで続いた。

レオンは騎士団長と杯を交わし、魔王城での戦いを語った。

「執事のハンマーに吹き飛ばされたリリィが、戻ってきて魔王の首を斬った。あの瞬間は忘れられねえ」と笑うと、騎士団長が「その少女がそんな偉業を? 驚くべき勇敢さだ」と感嘆した。

ガルドは兵士たちと酒を飲み比べ、「俺の戦斧で執事の脚を叩き潰したんだぜ! あの硬さがたまらねえ」と豪快に自慢した。

兵士たちが「すげえ!」と拍手し、ガルドがさらに杯を空けた。

ミリアは貴族の婦人たちに囲まれ、「最大の魔法で執事を焼いたんです。でも、リリィちゃんがいなかったら勝てなかった」と謙遜すると、婦人たちが「なんて素晴らしい魔術師なの!」と褒めた。リリィはテーブルの端に座り、無表情でリンゴを手に持っていた。

新調された白いワンピースに青いベストが映え、銀髪が火の光に輝いていたが、紫の瞳は感情を映さなかった。

子供が「リリィお姉ちゃん、魔王を斬ったの?」と近づくと、リリィが「うん。首を斬った」と呟き、子供が目を丸くして逃げ出した。

皇帝の使者が「明日、王宮で勇者一行に勲章を授与する。魔王を倒した英雄として、王自らが表彰する」と告げ、一行は宿舎に案内された。

レオンが「勲章か…旅の終わりを実感するな」と呟き、ガルドが「酒と飯の次は勲章だ。悪くねえぜ」と笑った。

ミリアが「リリィちゃんも一緒だよ。嬉しいね」と言うと、リリィが「わからない。でも、ミリアが嬉しいならいい」と呟いた。

一行は疲れた体を休め、翌日の式典に備えた。


朝。王宮の大広間での勲章授与式が始まった。広間は大理石の柱が立ち並び、赤い絨毯が敷かれ、貴族や騎士団が列を成していた。王座には皇帝が座り、金色の冠と紫のマントを纏っていた。

レオン、ガルド、ミリア、リリィは正装に着替え、広間の中央に並んだ。

レオンの革鎧は磨かれ、剣が光っていた。ガルドの鎧は新品で、戦斧を背に担いでいた。ミリアは青いローブを纏い、杖を手に優雅に立った。

リリィは白いドレスに青いリボンをつけ、スコップを手に無表情で立っていた。

皇帝が「魔王を倒し、帝国を救った勇者たちに感謝を。

汝らに『聖光の勲章』を授ける」と宣言し、拍手が響いた。

一人ずつ王の前に進み、勲章を受け取った。

レオンが跪き、「帝国のために」と呟き、金の勲章を首にかけられた。

ガルドが「ありがてえ!」と笑い、勲章を受け取った。ミリアが「光栄です」と微笑み、勲章を手に持った。

そして、リリィが呼ばれ、王の前に進んだ。

リリィが無表情で王を見上げ、「魔王を斬った」と呟くと、皇帝が「旅の途中で加わった少女とは思えぬ功績だ」と笑い、勲章を手に持った。

その瞬間、リリィの背中に軽い衝撃が走った。

彼女が「…?」と首を傾げ、胸元を見ると、二つの刃が白いドレスを突き破り、胸から突き出ていた。血がドレスを赤く染め、リリィの紫の瞳が一瞬揺れた。

刃は鋭く、背中から胸を貫通し、血が絨毯に滴った。

彼女が「刺された」と呟き、スコップを握ったまま膝をついた。


リリィの背後には、黒いフードを被った暗殺者が立っていた。二本の短剣を手に、リリィの背中に突き刺した瞬間、レオンが「リリィ!」と叫び、剣を抜いて暗殺者に飛びかかった。

レオンが暗殺者の腕を掴み、力任せに引き剥がした。

暗殺者が「離せ!」と叫び、短剣を振り上げたが、レオンが剣の柄で暗殺者の顔を殴りつけた。暗殺者がよろめいた瞬間、ガルドが「てめえ!」と吼え、戦斧の柄で暗殺者の腹を殴り飛ばした。

暗殺者が石床に叩きつけられ、フードが外れ、若い男の顔が現れた。

彼は目を閉じ、昏倒した。

ミリアが「リリィちゃん!」と叫び、杖を手にリリィに駆け寄った。

リリィが膝をついたまま血を流し、ミリアが「動かないで! 今治すよ!」と涙を浮かべながら杖を掲げた。

「癒しの光!」と詠唱し、光の魔法がリリィの傷を包んだ。光が刃の刺さった胸を照らし、血が少しずつ止まった。

傷は深く、心臓の近くを貫いていたが、ミリアの魔法が即座に施されたことで致命傷は免れた。


しかし、リリィの顔が青白くなり、紫の瞳が閉じ始めた。

レオンが「リリィ! 目を閉じるな!」と叫び、ガルドが「くそっ、持ちこたえろ!」と暗殺者を睨んだ。ミリアが「お願い…リリィちゃん!」と魔法を続け、光がリリィの体を包んだ。傷は塞がり始めたが、深いダメージと血の喪失がリリィを蝕み、彼女が「ミリア…」と呟いた瞬間、意識を失った。

リリィの体がミリアの腕に倒れ、狩猟刀が床に落ちた。

彼女は昏睡状態に陥り、微かな呼吸だけが残った。


皇帝が「何事だ! 衛兵、暗殺者を拘束しろ!」と叫び、騎士団が動き出した。

衛兵が昏倒した暗殺者を縄で縛り、広間が混乱に包まれた。

貴族たちがざわめき、「勇者が襲われた!」「裏切り者か!」と叫び声が響いた。

レオンが剣を握り、「誰の差し金だ!?」と暗殺者を睨んだが、暗殺者は意識を失ったままだった。

ガルドが「リリィがこんな目に…許さねえ!」と戦斧を握り、怒りを露わにした。

ミリアが「リリィちゃん…生きてるよね?」と涙を流しながらリリィを抱きしめた。

彼女の魔法で傷は塞がったが、昏睡状態のリリィは目を閉じたままだった。

レオンが「ミリア、リリィを医務室に運べ。俺とガルドで暗殺者の背後を調べる」と指示し、ガルドが「この野郎、目を覚まさせて吐かせてやる」と呟いた。

衛兵がリリィを担架で運び、一行は医務室へと急いだ。



王宮の医務室で、リリィはベッドに横たわった。

白い包帯が胸を覆い、青白い顔に微かな呼吸が確認された。

ミリアが「リリィちゃん…私の魔法が遅かったら…」と涙を拭い、リリィの手を握った。

医務官が「傷は深いが、心臓は免れてる。昏睡状態だが、命は助かるだろう」と告げた。

レオンが「リリィの強さが助けたんだ。だが、暗殺者は何者だ?」と呟き、ガルドが「帝国に敵が潜んでるってことだ。

魔王が死んでも戦いは終わってねえ」と歯ぎしりした。

リリィは昏睡状態で目を閉じていたが、スコップはベッドの横に置かれていた。

魔王を倒した英雄としての凱旋は、裏切りの影に覆われ、新たな戦いの予感が漂っていた。

一行はリリィの回復を祈り、暗殺者の背後を追う決意を固めた。


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