第三十六話
魔王城の内部、盾のある部屋で魔王の執事との戦いが始まった。
リリィが巨大な鉄のハンマーに吹き飛ばされ、崩れた床の下へと落ちてからわずか数分。
レオン、ガルド、ミリアはリリィを欠いた状態で執事と対峙していた。
執事は黒いローブを纏い、骸骨のような顔に赤い目が輝き、左腕が異様に長い異形の魔物だった。
右手に持つ鉄のハンマーは錆びついていたが、先代の勇者の盾による結界で弱っているとはいえ、その一撃は石床を砕くほどの威力を持っていた。
レオンが剣を構え、「リリィがいねえ…だが、執事を倒さねえと先に進めねえ!」と叫んだ。剣の柄を握る手が汗で濡れ、執事の赤い目を見据えた。ガルドが戦斧を両手で握り、「くそっ、リリィの分までぶっ潰してやる!」と吼え、肩に力が入った。
ミリアは杖を手に「リリィちゃん、生きてて…私たちで終わらせるよ!」と涙を堪え、杖の先が微かに震えた。
一行は執事との戦いに挑んだが、リリィの不在が戦況を厳しくしていた。
彼女の素早い動きと冷徹な攻撃が欠けた今、執事の重い一撃を凌ぐだけで精一杯だった。
戦いは一進一退で始まった。執事が鉄のハンマーを振り下ろすと、轟音が響き、石床に亀裂が走った。破片が飛び散り、レオンが「下がれ!」と叫びながら剣を構えた。
ハンマーの先端がレオンの頭上をかすめ、風圧で髪が乱れた。彼は剣を斜めに構え、刃をハンマーの側面に当てて衝撃を逸らしたが、腕に伝わる重さに歯を食いしばった。
「くそっ、リリィの援護があれば隙が作れるのに!」と呟き、執事の横に跳んだ。だが、執事が素早く振り向き、ハンマーを横に薙ぎ払った。
レオンは床に転がり、背中に冷や汗を感じながら何とかかわした。
ガルドが「俺が引きつける!」と叫び、執事の正面に立ちはだかった。
戦斧を両手で振り上げ、執事の膝を狙って渾身の一撃を放った。刃が執事の脚に食い込み、骨が軋む音が響いた。黒い血が滴り、執事が「グアッ!」と唸って膝を曲げた。ガルドが「効いたぜ!」と笑ったが、執事の反撃が速かった。
ハンマーが弧を描き、ガルドの肩をかすめた。
革の鎧が裂け、血が滲み、彼が「ちっ、硬えな!」と歯ぎしりした。執事の脚を執拗に攻撃し続け、戦斧を振り下ろすたびに汗が飛び散った。
ミリアが「援護するよ!」と叫び、杖を掲げた。「光よ、敵を貫け!」と詠唱し、光の矢が執事の胸に突き刺さった。
光が炸裂し、執事のローブに焦げ跡が残ったが、執事は怯まずハンマーを振り上げた。
ミリアが「効いてるはずなのに…!」と焦り、次の魔法を準備した。執事のハンマーがミリアを狙い、石床に叩きつけられると、彼女は横に跳んでかわしたが、衝撃波で足元が揺れ、杖を握る手に力が入った。
リリィの不在が響き、一行は執事の攻撃を凌ぐだけで隙を作れなかった。
執事の動きは結界で弱っているはずなのに、異常な耐久力と力が一行を圧倒していた。
レオンが「このままじゃジリ貧だ! 脚を集中攻撃しろ!」と叫び、ガルドが「了解だ!」と応じた。ガルドが執事の膝裏に戦斧を叩き込み、刃が深く食い込んだ。執事が膝をつき、機動力が格段に下がった瞬間、ミリアが決断した。
「今だよ! 最大の魔法を!」と叫び、杖を高く掲げた。
「炎の神よ、全てを焼き尽くせ! ファイアストーム!」と詠唱すると、空気が熱を帯び、巨大な炎の渦が執事を包んだ。
普段は仲間への負担を避けて控えていた最大火力の魔法を、ミリアは全てを賭けて放った。
炎が執事に直撃し、ローブが燃え上がり、執事が「グオオオ!」と悲鳴を上げた。
炎が執事の体を焼き、黒い血が蒸発する音が響いた。
重症を負った執事の動きが止まり、レオンが「今だ!」と叫び、剣を振り上げた。
レオンは執事の首元に跳び上がり、剣を両手で握り、全力で振り下ろした。
刃が執事の首を切り裂き、骨が砕ける音が響いた。首が宙を舞い、床に転がると、執事の体が崩れ落ち、黒い血が石床に広がった。レオンが剣を突き立てたまま息を吐き、「やった…執事は死んだ」と呟いた。
ガルドが戦斧を肩に担ぎ、「リリィの仇を取ったぜ…いや、生きてると信じるがな」と笑い、ミリアが「リリィちゃん…」と涙を拭った。
執事を倒した瞬間、部屋の奥の壁が軋み、隠されていた扉が開いた。
暗い通路が現れ、魔王の間へと続く道が明らかになった。レオンが剣を収め、「これで執事は終わりだ。次は魔王だ」と呟き、ガルドが「リリィが落ちたままが気がかりだが…先に進むしかねえな」と呟いた。
ミリアが「リリィちゃんを助けたいけど…魔王が生きてるなら、ここで終わらせなきゃ」と決意を固めた。一行は盾を残し、通路を進んだ。
暗い石の廊下を抜けると、重厚な鉄の扉が現れ、開くと魔王の間が広がっていた。
魔王の間は広大で、黒い石の柱が立ち並び、中央に玉座があった。
そこに傷だらけの魔王が待ち構えていた。
体は巨大で、黒い鱗に覆われ、角と翼が生えていたが、右腕が欠け、胸に深い傷跡が残っていた。
先代の勇者との戦いで瀕死となり、執事に守られながら復活を待っていた姿だった。
魔王が「…新しき勇者か…執事を倒したか…だが、ここで終わりだ」と低い声で呟き、玉座から立ち上がった。
傷だらけの体が軋み、黒い血が滴った。
魔王が手を振り、黒い炎が一行を襲った。炎が渦を巻き、熱風が部屋を満たした。
レオンが「来たぞ! 構えろ!」と叫び、剣を抜いた。黒い炎が迫り、彼は剣を盾のように構え、炎を切り裂いた。
熱が顔を焦がし、汗が滴ったが、レオンは一歩も引かず魔王を見据えた。
ガルドが「でけえ野郎だな! ぶっ潰す!」と吼え、戦斧を振り上げた。
黒い炎がガルドを狙うと、彼は戦斧を回転させ、炎を弾き飛ばした。だが、炎の余波が肩に当たり、鎧が焦げ、「熱っ!」と顔を歪めた。
ミリアが「光の結界!」と叫び、杖を掲げた。光の膜が一行を包み、黒い炎を防いだ。
結界が揺れ、ミリアの額に汗が浮かんだが、彼女は「みんなを守るよ!」と歯を食いしばった。
魔王が「無駄な抵抗だ」と呟き、左手を振り上げると、黒い雷が落ちてきた。
雷が石床を砕き、レオンが横に跳んでかわしたが、衝撃で足元が揺れ、剣を支えに立った。
ガルドが「動きが鈍いな! 傷が効いてるぜ!」と叫び、戦斧を魔王の脚に叩き込んだ。
刃が鱗を砕き、黒い血が噴き出したが、魔王は怯まず雷を放ち続けた。
魔王は傷だらけで動きが鈍かったが、一撃の威力は凄まじく、部屋が揺れた。
レオンが「リリィがいれば急所を突けた…だが、俺たちでやるしかねえ!」と叫び、剣を握り直した。
ガルドが「脚を潰して動きを止めよう!」と戦斧を振り、ミリアが「援護するよ!」と光の矢を放った。
一行はリリィの不在を感じながらも、魔王との最終決戦に全力を尽くした。
彼女が生きていることを信じ、戦いは激しさを増していった。




