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異世界美少女達よ、ぼっちだった俺を攻略できるもんならやってみろ~最強無敵の力はハーレムラブコメに使うらしい~  作者: 白銀天城
女王と姫と百合男子編

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義勇軍と女王イノ

 朝も早くから街を出て、義勇軍と一緒に敵を倒そう。義勇軍六十人で街道を外れて行軍中である。


「眠い……」


 イズミに起こされたが、寝起きがいまいち。寒いから外に出たくないのに、なぜこういうのは朝早くから動くのだろう。


「はい、目の覚めるお茶」


「悪いな」


 お茶はすっきりしていて体が軽くなるが、それでも眠い。


「いいかお前ら、敵は森の中に陣取っている。木でできた柵もある。どうやら罠もある。盗賊のくせに特定の道からしか出入りしてねえからな。作戦決行は6ブロックと9ブロックが戦闘を始めたらだ。賊は6ブロックに奇襲をかける手筈らしい」


「9ブロックが賊を雇っていると?」


「ああ最悪だな。だから叩き潰す! 奇襲を潰されれば、力負けで9ブロックは逃げる。追撃でも活躍して、姫に会うぞ!!」


「おおー!!」


 そして敵陣の背後に回り込み、準備を整えておく。陣内が騒がしくなり、遠くで軍が戦いを始めていた。


「数では9ブロックが上か。どこから集めているんだ?」


 賊の拠点から離れた場所を、6ブロックの軍が通っていく。今なら横から突き崩せる位置だろう。


「もう少しだ。オレらは少数。撹乱させて叩くのが理想だぜ」


 敵軍の先陣が拠点から出ていく。その瞬間をずっと待っていた。


「今だ! いくぜ野郎ども!!」


「おおおぉぉぉ!!」


 まず敵陣に攻撃魔法をぶち込みまくる。煙や火で同士討ちしてしまわないように、集中した狙撃がメインだ。


「うわあぁあ!?」


「敵だ! 敵襲!!」


「突撃!!」


「ボスライトでっかいやつ!!」


 ロングソードがオレンジに光って輝きを増し続けながら敵を切る。

 ぐるぐる回しながら振っているだけに見えるが、盗賊は倒れていく。


「姫! 姫のため! オレはやりますぜええぇ!!」


「いるいるああいうクソ迷惑なライブの客」


 ちなみにボスが超目立つため、義勇軍はそーっと敵を始末できるのだ。打ち合わせでそう説明された。やっぱ頭いいのかなボス。


「そこ、敵がいる」


 イズミの言う場所に鋼の棘が生え、壁の後ろから叫び声がする。


「おおー、アサシンすごい」


「もっと褒めるべき」


「はいはい、偉いぞ」


 会話しながらでも十分に殲滅できる敵だ。俺が元々ヒットアンドアウェイで隠れながらの離脱を得意とすること。敵がここに長くいるわけではないから地の利で勝つことができない点が功を奏している。


「よし、なんか俺でも勝てる!!」


「援護する。ブリザードスティング」


 イズミの作り出す吹雪の嵐が、急激に場を冷えさせる。そして敵の動きが鈍る。防寒装備を着込んでいる俺達とは違うのだ。


「いよし! さくさく狩るぜ!」


『ショット』


 ショットガンを作って魔力弾を撃ちまくる。乱戦じゃ使えないが、敵しかいない方向にぶっぱすると楽できる。雷魔法を自重しているので、こういう手段になるのだ。


「撃ち漏らしの掃討完了」


「ついでになんか証拠とか探すぞ」


「了解。あっちが敵ボスのテント」


 テントが少し豪華で周囲に空きスペースがある。なるほど、それっぽい。


「どうだ? 手がかりあったか?」


 家探ししながら会話もして、敵が入ってこないかも感じ取る。少し難易度が高いぜ。特殊な訓練とかするべきなのかな。


「まだない。残していないのかも」


「厄介な……」


「てめえら適当なところで引き上げるぞ! 正規軍にまとめて攻撃されちまうからな! 死んで認知されても嬉しかねえぞ!!」


 義勇軍がいるという連絡くらいは入っているだろうが、詳細は知らないはず。巻き込まれる前に離脱するべきだな。


「よし出るぞ」


「了解。ルートは任せて」


 全員でさっさと退場。賊はほぼ壊滅。残りも正規軍にやられていく。

 今は開けた場所で両軍の争いを見学している。ちょうどいい山とかあって助かった。こうして行軍を上から見るのは勉強になる。


「ボス、いいんですかい? もっと活躍できたでしょうに。オレらまだやれますぜ?」


「味方が少ねえだろ。あれ以上は高望みだぜ」


「ボス! お客さんです!!」


「ども、6ブロック正規軍遊撃部隊ッス」


 ガンマだ。護衛が数人いるが、姿を晒していいのか。無警戒じゃね。


「6ブロックの重鎮様じゃねえか。女王と姫は守らなくていいのかい?」


「ご心配なく。あいつらはオレが守らなきゃいけないほど弱くないスよ。それでも肩書あるやつが直接こないとまあ、礼儀とかあるっしょ」


「面白い。要件を聞こうか」


 ボスがにやりと笑うと同時に、ガンマが頭を下げた。


「まず義勇軍に感謝を」


「ここに賊がいることは知ってたんだろ?」


「けどうちの軍を削らずに決着付きましたからね。助かりました。怪我人なんて出ないに越したことはなし、ってね」


「そらそうだ。感謝確かに受け取ったぜ」


 まあ義勇軍って正規軍からすれば減っていい捨て駒だからねえ。そこは濁すが、まあ便利に使われる側だよな。ボスがそれを甘んじて受けるかは知らん。


「こっちで勝手に調べさしてもらいました。姫に知られたいとか。希望の報酬はライブで壇上に上がるとか、二人でお話するとかですかい?」


「ダメだ。認知されたいが、会場では皆平等にファンだ。1ファンとして行くことに意味がある。公式の発言で特別扱いはするな。そして姫に負担をかけるな」


「ボスめんどくせえな」


 ファン心理というやつだろうか。もうめんどいぜ。そしてちょっと面白くて嫌いじゃないぜ。


「6ブロックはこのまま9ブロックの城を攻め落とします。事情が変わりましてね。もう後先考えるより殲滅すべしと」


「5ブロックからの敵は?」


「3ブロックの方々に手伝ってもらってます。事件の解決が先決ってことでまあ、好戦的な人たちじゃなかったのもよかったスね」


 なら任せておくか。余程のことがない限りは詰まないだろ。手早く済ませて帰るとしよう。


「次の街に拠点を置き、そこから本城まで一気に攻めます。決着は早期に。会議がありますので、そっちからも何人か出席お願いするス」


「わかった。ザジ・イズナ来い。ガンマと知り合いだな?」


 どこで察したのかね。ゆるい空気でも出していたか。ボス妙な経験値あるっぽくてめんどい。


「ただ少し知り合いってだけさ」


「その人ならありッスね。では移動しましょう。この先の街に軍を移動させてるッス。話は通しておきました」


 そして街に移動。話が早く進んでいる。街の人間も6ブロック軍を歓迎している気がする。つまり前の街とは事情が違うのか。それほど離れているわけではないだろうに、ここまでの差が出るのはなぜだ。


「ここス。ガンマ、義勇軍連れて入ります」


 街の中にある大きな屋敷の会議室。そこに強そうな連中と、前にライブで見たイノがいる。なんとも女王様という雰囲気だ。こっちが本性でオタは擬態だなこりゃ。


「ようこそ、6ブロック女王イノです」


「義勇軍のボス、ロッシェ。お目にかかれて光栄です。姫はどちらに?」


 本名発覚。いや偽名かもしれんけど。


「ユミナは前線に立たせる存在ではありません。たまに出てきて兵を鼓舞することはあっても、戦場において活躍はできません。なので別の場所で保護しています。義勇軍のトップであろうとも、この場で会わせることはできません」


「それは承知しております。我々は姫を応援できれば満足です」


「あなたはユミナのファンでしたね。戦働きによっては面会の機会を与えましょう」


「それは光栄。ですが同じファンとして、ライブで見られれば結構です」


「そう、ならば何か別で褒美を用意させましょう。これからの決戦、士気を上げねばなりません。義勇軍として欲しいものをリストアップしておくように」


「ご厚意、ありがたく」


 めっちゃ普通に会話されると入り込む余地ないんだなあ。完全に部外者だからね。蚊帳の外とはこのことだぜ。


「さて、もう変装はいいでしょう。サカガミさん」


「そらバレるわな」


 急に話を振られると困るな。とりあえず邪魔くさかった変装を取る。さっぱりするなこれ。


「8ブロック国王アジュ・サカガミ」


「同じく8ブロック、イズミ・ウェルベリィ」


「やっぱ勇者科かおめえら」


「気づいていたのか?」


「オーラみたいなもんがちげえんだよ。義勇軍ってツラでもねえしな」


 そらそうだ。顔つきまで変える技術はない。そこまで真面目にやってもいない。義勇軍も楽しかったし、これはこれで思い出になった。


「こうして女王として会うのは初めてね。驚いたかしら?」


「ああ、あまりの変わりっぷりにな」


「そう、楽しんでいただけたら嬉しいわ。日常は些細な楽しさの積み重ねですもの」


 こちらを見る視線が珍しい。品定めとも怪訝な目とも親愛の情とも違う。あまりされたことのない見られ方だ。俺を値踏みしているわけではないようだが、その意図がまったく読めない。面倒な女王様がいたものだな。


「後でゆっくりお話をしましょう。そちらのギルドや、あなた達の辿ってきた道、冒険の日々、きっと楽しいわ」


「そういうレパートリーは貧弱でな。楽しませる自信はないぞ」


「構わないわ。四人の歴史が知りたいだけですもの」


 俺達を探っている? 弱点でも見つけようというのか。だが四人ばらばらの現状で必要なことなのだろうか。本当に思考が謎でめんどくさいなこいつ。


「イノ、そろそろ会議するぞ。イズミも大人しくしてろよ。下ネタ禁止ッス」


「了解。分別はわきまえている」


「ではここからは9ブロック決戦の打ち合わせになります。心して聞いてください」


 そして計画は語られていく。王都へと攻め込み、正門を街の兵士に、裏門を街の人間に開放してもらうらしい。


「街の人間が協力を?」


「9ブロックの国政は並レベルですし、最近の全国での異常もあります。もっといい領主が欲しいのでしょう。人員を割くのは面倒ですが、そちらと協力していけたらと思っています」


「まあ攻めるようなことはしない。領地を広げるつもりもないしな」


「それで十分です。街の中央の城へ攻め込み、敵の国王を捕縛。6ブロックの領地になると宣言すれば勝ちです。途中に存在する門や超人の配置されそうな場所もこちらの地図に記載してあります」


 こうして作戦会議は進んでいく。しばらくぶりに真剣な空気だ。実はこういう場所苦手だったりするぞ。


「本拠点を落とすまで、敵が分散してはいけません。街から逃さないように。各地で突発的な騒動はあるかも知れませんが……」


「そこは8ブロックも軍を出して鎮圧にあたる。難民もある程度コントロールしているから、時間は稼げるはずだ。こっちも追加で戦闘要員と超人を出す」


「いいでしょう。健闘を祈ります」


 こうして決戦は明日の朝となった。いよいよ敵の総大将へと迫る。謎の勢力と騒動について、何か手がかりでもつかめればいいんだがねえ。

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