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塔の上の錬金術師と光の娘   作者: 雪白楽
第1章―嘆きの旅人―
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06 大空をこいねがう ⑤

 自分もリアと遊びたい、って子供みたいにダダをこねるライナスの首根っこを文字通り引っつかんで、魔法使い達が塔の中に消えてしまうと、さっきまでのにぎやかな感じが嘘みたいにシンと静まり返った。いつも通り二人きりになった僕とリアは、顔を見合わせて今日は何をしようかと考える。


 もぞり、と僕の腕の中で動いたリアに「自分で歩く?」と聞けば、うんうん、と頷かれてそっと地面に下ろす。リアは僕と手を繋いで歩くのがお気に入りで、今日もブンブンと元気よく前後に手を振って歩き出す。考えてみれば、あの魔法使いはあんまり外出とかしなそうだし、手を繋ぐのだって大変そうだと僕が見上げなきゃならないくらいの長身を思い出す。


 昨日はリアが作ったらしい雪の花が咲き乱れていた雪原も、今日は大人しく平らになっている。何もない……目が痛くなるくらいに雪の白がキラキラ輝いていて、そこを二人で歩くだけ。小さい子相手だったら、もっとこう色々してあげなきゃいけないのかなと思うんだけど、リアはこういう『何もない』散歩が一番好きだ。そういう生活をしてるからなのかもしれないけど……あとは、運動して遊ぶのは森だけで十分なのかも。


 しばらく歩き回って足跡をつけてみたり、足跡を踏み合ってみたり、雪の上にヒト型をつけて遊んでみたりしているうちに、午前中ずっと森で遊んでいたからか少しずつリアの足取りが重くなる。疲れちゃったかな、と思いながら顔を覗き込むと、表情がトロンとしてちょっと眠そうだった。


「お昼寝しようか?」

「ん……あそびたい」


 珍しく子供らしい返事をしたリアは、昨日もこんな感じで体力のギリギリまでねばって、おしゃべりしてる途中で寝ちゃったんだっけ。冬の間はお互い家の中にこもってなくちゃいけなくて、ずっとリアに会えなかったから、ずっと寂しくてたまらなかった。リアもそう思ってくれてたって事なら、嬉しいなとは思う。まあ、どこで眠ってもあったかい所には連れて行ってあげるつもりだけど、今日は父親の魔法使いが忙しくしてるから家に帰すにはちょっと早すぎるかもしれない。


 僕の家に連れて行くのは……やめといた方がいいだろうな。さすがに無神経な兄さん達も、こんなに小さな女の子に意地悪したり悪口を言ったりはしない、と信じたいけどわざわざお互いがイヤな気持ちになるような火種を持ち込むこともない。いざとなれば羊小屋があるけど、あそこで寝かせるのもかわいそうな気がする……いや、よくあの干し草の中で気持ちよさそうに寝てるの見たりするけど。チクチクしないのかなって、いつも思ってる。


 よく考えると、リアは眠ってばかりな気がする。本当に小さい子供って、そんな感じだったかなとホワホワ思っているうちに、リアが今にも眠りそうな感じになってきた。うーん……こうなったら。


「リア、少し座っておしゃべりしよう。どこかあたたかい所を知らないかな」


 これで伝わるといいんだけど、と思いながらリアの前にしゃがみこんでそう言えば、彼女は眠い目をこすりながら「うーん……」と考え込んだ。


「ここ」

「ここ?」


 自分の立ってる場所を指差すリアに、僕が首を傾げると、リアは自信を持って頷いた。


「おひさま、ぽかぽか」


 ニコニコと太陽を指差すリアに、僕はそうなんだけどね、と苦笑した。


「そのまま座ったら、雪が冷たくて風邪を引いちゃうよ」


 僕の言葉にもう一度「うーん……」と考え込んだリアは、いきなりパッと顔を輝かせて、またニコニコと僕を見上げた。


「ゆき、いらない?」

「えっ……うん、座ってお喋りする場所には、いらないかな?」


 何となくイヤな予感、というか前にもこの笑顔を見た事がある気がすると思いながらも頷くと、リアはスルリと僕の手をすり抜けてちょっと離れた所に走って行くと、ポスっと雪に右手を当てた。


 ボフッ


 いや、実際にそんな音がしたのかどうかは正直に言って分からない。僕が衝撃を受けすぎて、そんな感じの効果音を頭の中で付け加えただけなのかも。とにかく、その瞬間に彼女の周りから綺麗な円を描いて雪が『消え去った』


 ……ううん、良く見るとリアの周りだけ、凄く寒い日に空気がキラキラして見えるのと同じような感じになってる。多分、リアは雪を空気に『戻した』んだろうと思うけど、想像するのと実際にやってみせてしまうのでは話が違う。


(相変わらず、むちゃくちゃするなあ……)


 呆れ半分、驚き半分と言うか、ほとんど驚きかもしれない。リアがこういう事をサラっとやってのけちゃうような不思議な力(多分これが魔法って言うんだろう)を使う所は、出会ってから何度も、それこそ毎日のように見せつけられて来たはずなんだけど、いまだに驚きは新鮮なままで律儀に毎日びっくりさせられている。


 だってそれは、いつもこんな風に突然で、しかも思ってもみないような事をやってみせるんだから。たまには失敗することもあって、前なんて雲に乗りたい、なんて言い始めて白くて雲っぽいものを作ったのはいいけど、飛び込んだらすり抜けて地面にベシャって突っ込んで大泣きしたりもしてたっけ。



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