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塔の上の錬金術師と光の娘   作者: 雪白楽
第3章―真実の書― 学院都市篇
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04 見送る背中 ㉑


 発案者を置いて勝手に盛り上がり始めてしまった私達に、呆気(あっけ)に取られたような顔でボンヤリと成り行きを眺めていたシエロは、少しだけ気が抜けたみたいに笑って、おもむろに身を乗り出して参戦して来た。


「それだと何が『雑草』なのかの条件指定が曖昧(あいまい)過ぎるでしょ。そもそも、自然界に干渉し過ぎるのは『書き換え』に限らず禁忌に触れがちだから」


 あとエマおばさんが大変だって悩んでたのは何だっけ、と村にいながら意外とみんなの生活を把握してなかった自分に気付いて苦笑がこぼれる。エルは基本的に塔の中から出なかったし、私は半分くらい森で生活していたようなものだったから経験が偏っている。


「だが、あまり規模が小さいと評価の対象にならないだろう」


 何より『面白くない』と顔に書いてあるシドに、私もどうせやるなら強烈なのが良いよねと頷く。


「うーん……それじゃ、天気とか?」

「確かに、日照りは大きな問題だと言えるな。我が国でも特に」


 一面が砂に埋もれた『砂漠』を隣国に抱えてるらしい、シドの故郷イスカーンにはとにかく雨が降らないと聞いたことがある。


「ちょっと、天候操作とかもっての他じゃないの」

「……まあ、森の(ことわり)には反するよね」


 メクトゥシ母さんなんかに今の言葉を聞かれてたら、きっと『リアも人間になっちまったねぇ』とか嘆かれたに違いない。どこかを無理に(ゆが)めれば、必ず他のどこかに皺寄せが来て『良くないこと』が起きる。世界はそうやって回っていて、だからこそ理に反してはいけないと、まだヒナの頃から教え込まれるし……骨の髄まで染み込んでいたはずで。


 私も少しずつ変わって来てるのかな、なんてボンヤリ考え込んでいると、同じく何かを考え込んでいたらしいシエロが、ふと顔をあげた。


「確かにその規模なら、森どころか世界への反逆だろうけど……範囲と物量を限定したとしたら?」

「……例えば、植物の生育に最低限の雨量か?」

「陣で範囲と量を指定をしておけば、今すぐにでも出来るよ」


 ガリガリと想定される陣をざっくりと書いて見せれば、複雑そうな表情でシエロが唸る。


「それだと、魔法使いがいなければ起動が出来ないでしょ。魔法の開発じゃなくて、あくまで『物』の発明だから条件満たせないし……要はそれって水を呼び出すってことだから、魔法としては基礎中の基礎。そもそも普通に考えて、農村に魔法使いが常駐してるとか有り得ないから。もし居たとしても、辺境伯とかで国防に役立つ仕事が振られてるはずだし、そんな雑事に従事する奴はいないと思うけど」

「つまりは魔法を使えない人でも、使えるようにするってこと?」


 そんな魔法とか魔道具なんてあったかなと、頼りない知識を総動員しても思い浮かぶはずもなく。頭を絞って目を回してる私を横目に、シエロが呆れたような溜め息を落とす。


「……そんなトンデモ技術、あったらとっくに特許を国が買い上げてるでしょ。最低限の条件として、魔力を保持しておく機構と、魔力を引き出す火種、魔法として発現させるための仕掛けが必要なんだし」

「宝石魔法ならば、魔力の保持は難しくないが」


 さらりと告げたシドに、シエロは言葉を失ってガタリと立ち上がった。


「それって、本気で言ってる? いや、そもそも軽々しく口にして良いヤツ?」

「そもそも隠すようなことでもないし、この学院でも相応の書物を紐解(ひもと)けば書かれていることだぞ。世の岩石には、他の物質に比して魔力を封じやすいことが分かっているが、逆に取り出すのに一手間がかかるから、その程度の魔法ならば自前の魔力の方が手っ取り早い。単純に実用的ではないから、取り沙汰されないだけだろう」


 シドの説明に、私はエルから宝石に関して教わったことを思い返しながら、そう言えばと口を開いた。


「でも、魔力を蓄積した石から力を引き出すんじゃなくて、ほんのちょっとのキッカケで石から直接魔力を魔法に送り込めるようにしたら……例えば魔法陣とかで」

「……我が国の魔法陣は、一種の芸術品として好事家連中には嗜まれるが、この国のように実用的なものではなくてな」


 つまりは、誰も考えたことがなかっただろう、と珍しく顔を引きつらせてシドが言う。




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