第143話 世界最強ー3
起き上がったアーノルド、空手の構え。
それを見て、ガラハッドは笑った。
背筋の凍るような殺気、冷たく張り詰めるような殺気。
アーノルドから迸るそれは、先ほどまでの荒々しい抜身のナイフのようなものではない。
磨き、研ぎ澄まされ、鍛え上げた本物の剣。
他の円卓が剣を抜くが、ガラハッドが前に出た。
「良い覚悟だ」
切りかかるガラハッド、受けるアーノルド。
先ほどまでとは明らかに違う動きをする。
ガラハッドがその眼帯を外した。
ぎょろっとした目がアーノルドを見る。
まるで未来が見えているかのような動きをするガラハッド。
しかし。
「ははは! ここまで止められたのはアーサー以来だ!」
それでも食らいつくアーノルド。
そしてその剣が、アーノルドの腹部を貫いた。
勝利を確信する。
だが、止まらない。
「……見事だ」
ガラハッドの突き刺した腕を、ぐっと掴むアーノルド。
笑うアーノルド。
逃げ場がない。
逃げられない。
振りかぶった拳が、ガラハッド目掛けて振り抜かれるその瞬間。
「ごふっ……」
円卓の騎士達が、四方八方からアーノルドを突き刺した。
目から光を失っていくアーノルドを見て、ガラハッドは剣を閉まった。
申し訳なさそうに眼帯を閉じる。
「すまないな。これは戦争だ……」
絶命。
全員が、そう感じたその瞬間。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
まるで恐竜のような雄たけび。
アーノルドが、血を噴出しながら走り出す。
円卓達は切りかかるが止まらない。
最後の力を振り絞って、目指すはトリスタン。
「ちょ、ちょ、ちょっと! 誰か止めて!! 俺が戦えないの知ってるっしょ!?」
前に立ちはだかるは副騎士団長ガラハッド。
無視することはできない強敵、だがそこに落ちてきたのは。
「――!?」
「あんな我がまま大王でも苦楽共にしたダチだ。花道ぐらい作ってやるさ」
中華の大英雄――王偉。
血を吐きながら、死線を超えてガラハッドを受け止める。
トリスタンは、慌てて剣を抜いてアーノルドを突き刺すが。
「と、とまれよぉぉぉ!!」
止まらない。
そのままトリスタンの頭を掴んだ。
こいつは殺さなければいけない。
灰にとって、致命的なスキルを持っているこいつだけは。
「ひっ!?」
そして、アーノルドは大きくこぶしを振りかぶり。
「HEY……BOY。借りは返すぜ」
笑った。
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名前:アーノルド・アルテウス
状態:獣神化(全ステータス+30%)
職業:ベルセルク【真・覚醒】
スキル:回復阻害、超回復、獣神化
魔 力:1753000(鍛冶神の加護により+50万)
攻撃力:反映率▶75%(+70%)=2541850+500000
防御力:反映率▶75%(+70%)=2541850+500000
素早さ:反映率▶75%(+70%)=2541850+500000
知 力:反映率▶25%(+70%)=1665350+500000
・装備
龍王の首飾り=全反映率+40%
鍛冶神の加護により全ステータス+50万
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そして、彩のアーティファクトと鍛冶神の加護によりさらにバフ。
防御を一切すてて、すべてを攻撃に振ったアーノルド。
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属性:スキル
名称:獣神化
効果:
・全ステータス30%上昇
・超直観:自身より魔力の低い存在の位置を常に把握できる。
・攻撃時のみ知力を攻撃力に合算させる。
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攻撃時に、すべての知力を合算させる。
つまり、その攻撃力――500万越えの拳がまっすぐと放たれる。
ドン!!
その一撃は、トリスタンを確実に殺した。
そして、アーノルドの眼からは光が失われた。
「最後までやりたい放題やっていったな……」
と同時に、王偉もガラハッドに切られて膝をついた。
「――敵ながら見事」
アーノルドの道を作った英雄も、副騎士団長ガラハッドの前に散る。
虚ろな目で、しかし確かに未来を見て。
「…………後は頼んだぜ、灰」
ザシュッ。
◇
「――!?」
彩は、気づいた。
「どうした、彩」
でも今は言えない。
アーティファクトを通して感じていた王偉とアーノルドとのつながりが完全に途絶えたことを。
それは灰を同様させるだけだから。
「何でもありません。急ぎましょう」
灰がいない間の5年間。
ともに戦い続けた二人。
王偉は実の兄のように、慕っていた。
アーノルドも味方になってみるとこれほど頼もしい人はいなかった。
二人とも好きだった。
どうにか押しとめようとしても、涙が溢れてきてしまう。
レイナも灰も、その涙の意味がわかったが口には出さす、唇だけを噛みしめて。
前を向く。
そこにしか未来はないから。




