第136話 中国inS級キューブー1
俺達は外に出た。
レイナ、彩、俺、王兄、そしてアーノルドさん。
合計五名は、地下施設から外に出る。
「人類の希望、頑張ってくれ。みんな」
「儂らはここから応援しかできんが、ここにいるものは守って見せるぞ! がんばるんじゃぞ、灰君」
田中さんと会長、そして凪を始めとした多くの生き残り達が俺達を見送ってくれる。
時刻は夜9時、星が出ている時間。
「みんな、すぐ帰ってくるからね!」
俺は彩と手を繋ぐ。
移動手段はどうするんだという話になったが、彩以外は全員各々の移動手段を持っている。
王兄は槍の上にのって空を飛べる。
レイナは銀色の鎧で飛翔できる。
アーノルドさんは、笑ってしまいそうになるが海の上を走れる。
まぁ会長もやってたし、思いっきり水面を蹴ればコンクリート並みの硬さともいうしな。
だから彩だけは俺が真・ライトニングで転移しながら進むことにした。
レイナの上に乗るという方法もあったのだが、男としてそれはどうかなと思ったからだ。
まぁさっきたくさん上に乗られたんですけどね、とかいう下ネタはおいておいて俺達は夜の海を各々の力で渡っていく。
人口の光が消えて久しい中国、王兄の案内の元俺達は陸に到着した。
真っ暗だ。
夜とはここまで暗かったのかと思うほどに真っ暗だ。
神の眼があるので、魔力はわかるから不意打ちは食らわないがそれでもここまで暗いと少し不安になる。
「よし、ここからはいつ奴らに遭遇してもおかしくない。出会ったら即殺せ」
「了解」
そんな物々しい発言をしながら俺達は、陸上をやはり飛ぶように移動する。
中国のS級キューブ、場所は香港。
闘神ギルドがあった上海から随分と南にある場所だ。
俺達は息を殺しながらも海岸を移動する。
すると少しばかり灯りも見えるようになってきた。
この世界に多くいる人類は全員皆殺しというわけではない。
首都などは占拠され、高位の魔力保有量を持つ人間は闇の眼で操られ奴隷のような生活をしているらしいが大多数が放置なのだそうだ。
この地球上にいくらでもいる人類すべてを殺すのは確かに大変だし、それをするメリットもないということだろう。
もちろん目につく場所にいる場合は別のはず。
彼ら、黒の帝国は数はそれほど多くないと彩は言っていた。
おそらく数十万といったところだろう、その数で世界を支配できるわけがない。
だが魔力が多く、闇の眼で多くの人間を操ることで自分達の食料や住処を建設させる奴隷として扱う。
俺はそれを聞いて早く解放してあげなければと強く思った。
今日本では、モードレッドによる支配のみだったので、多くが解放され人類解放軍に保護された形だ。
だがその状況はすぐに黒の帝国にも伝わっている。
俺達の狙いはバレていないだろうが、それでも警護は強くなっているのではないだろうか。
「……灰。どうだ。まだ数キロあるが……」
俺達は物陰からそれを見つけた。
遠くに見える紫の禍々しいアメジストのようなキューブ。
実物を見るのは、実は初めてのS級キューブだ。
俺は遠くのそのキューブのステータスを閲覧する。
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残存魔力:1000000/1000000(+10000/24h)
攻略難易度:S級
◆報酬
初回攻略報酬(未):魔力+500000
・条件1 一度もクリアされていない状態でボスを討伐する。
完全攻略報酬(未):魔力+1000000
・条件1 ソロで攻略する。
・条件2 一度もダメージを受けずにボス部屋までいく
・条件3 帝種を100体討伐する。
・条件4 条件1~3達成後解放(エクストラボスを討伐する)
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それは間違いなくS級。
残存魔力が限界値なのは、5年前からずっとだろう。
S級キューブは一度たりとも攻略されていない。
5年前、龍神が単独で現れたことはあったがあれは無理やりマーリンが封印を解除した結果。
ならば今日人類は初めてS級キューブを攻略することになる、しかもソロだが。
そして俺は周りを見渡す。
黒の騎士が何人か見張りとして立っていた。
ステータスを閲覧する。
魔力が80万や70万がデフォルト、いよいよインフレが当たり前レベルになってきているが彼らでも下っ端なのだろう。
とはいえ、スキルは大したことないし反映率も低い。
これならアーノルドさん達なら簡単に倒せるはずだ。
「黒の騎士が10人、全員魔力70万越え。いける? 王兄」
「一般兵士なら余裕だ。こっちには彩ちゃんもいる」
彩のアーティファクトは全員に配られている。
血を飲む行為をしたのは少しだけ嫉妬してしまうが、まぁそんなこと言っている場合ではないので気持ちは切り替える。
さらに彩の真・覚醒スキル、鍛冶神の加護は彩がアーティファクトで強化した分だけ周囲の味方を強化する。
実に50万の魔力強化は、もはや神の眼すら超えるチートな気もするがそれがあれば問題ないだろう。
「……ふぅ。じゃあ俺の合図でいくよ。急ぐけどS級キューブだ。二時間は見て欲しい」
「了解だ。おい、我儘大王、全力だせよ」
「わかっている」
そして俺達は全員がキューブを見つめて力を発動させる。
「最優の騎士……ランスロットさん。力を借ります」
俺は白き透明な鎧を身に纏い、ランスロットさんの力を発動する。
それに合わせて、全員が力を解放していく。
「――戦乙女!!」
「――斉天大聖!!」
「――獣神化!!」
「――鍛冶神の加護!!」
S級を超えた超越者達の力が解放され、魔力が光となって周囲に漏れる。
それに気づいた黒の騎士が警報を鳴らし、仲間を呼んだ、時期に円卓の騎士達も現れるだろう。
時間との戦い、ならば迷いなく突き進め。
「――真・ライトニング!!」
バチッ!!
稲妻のごとき速度を持って、S級キューブの周りの黒の騎士を一瞬で薙ぎ払う。
彩にもらった新しい剣は、いつも通り俺の手に馴染み、その力を増幅させた。
凛とした音と共に揺れる紫の宝石のような壁、俺は躊躇なく踏み込んだ。
慌てて叫ぶ残りの黒の騎士達、それをなぎ倒す四人の超越者。
一方的に蹴散らして、誰もキューブには入れないと立方体の四辺を、それぞれ守護する人類の希望達。
俺は一切振り返らずその背を託す。
恐れなく前に進め。
真っすぐと自分のやることを見ろ。
ここは前人未踏のS級キューブ、かつて中国を滅ぼしかけた鬼の住処。
龍の島には神がいた。
ならばおそらくここにだっているのだろう。
神の名を冠する理外の化け物が。




