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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第91射:犯人は現場に戻ってくる

犯人は現場に戻ってくる



Side:タダノリ・タナカ



「まったく、尋問官どもが、私をこんな目に合わせて、ただで済むと思うな……よ」


そう言ってこちらを向いたドトゥスは固まる。

俺たちがいるとは思わなかったようだ。

しかしながら、尋問官の話のように口を割らないというのはいまだに信じられんな。

そこまで根性があるのなら、銃口を向けて空撃ちして気絶するか?

まあ、耐性がなかったといえばそれまでだが、小物がここまで耐えるか?

というか、ただで済むと思うか、と言っているし何か助かる手段があるわけか……。

ああ、そういうことか。俺は俺の中で何となく答えを見つけた。

さて、どう追い込むべきかな。

俺は一旦様子を見ることにした。

お姫さんや結城君たちが喋らせてくれるのであれば、それはそれで手間が省けていいからな。


「私がここに来ている理由は言わずともわかりますね? 正直に知っていることを全て喋りなさい」

「私は無実でございます。あの女のことなどまったく……」

「タナカ殿に、とどめを刺してもらってもいいのですよ?」


お姫さんがそう言うとドトゥスはびくっとしてこちらにおびえた視線を向ける。

俺は本当にこの城ではどう思われているんだ?

牢屋番の兵士といい、尋問官といい、このドトゥス……は、銃で脅したから仕方ないか。

あれだ、ジョシーと同じように見られているんだろうな。

だが、あれと同じとか心外極まりない。


「……そのような。陛下のご意向を無視して良いわけがありますまい」


しかしながら、ドトゥスはおびえながらも正論で返す。

だがな、今更お前が正論を言ってもな……。


「私や勇者様たちに対して暗殺指示を出しておいて、極刑を避けられるとでも思っているのですか?」

「何度も言いますが、それは誤解です。もうすぐ、もうすぐ私の疑いが晴れるのです」

「何がもうすぐなのです。あなたを弁護するような意見は何も出ておりませんよ。そもそも、ここから出たとしても無事でいられると思うのですが? 魔族と繋がりがあった貴族のように、私刑による死が待っているはずです」

「伯爵である私がそのようなことにはなりますまい。あの貴族は位も低く、何らかの役職もなかった。だから、私は安全ですな」


そう自信満々に答えるドトゥスを見て思った。

やはり、こいつはあの事実を知らないな。

まあ、よくよく考えれば当然か。

俺たちがリテアに行っている間は、俺に対する暗殺指示で謹慎処分を受けていたからな。


「……そのあとの栄達はなにもありませんよ? それで何を……」


さらに問い詰めようとするお姫さんに対して俺が間に入る。


「まて、お姫さん。ここからは俺が代わろう」

「タナカ殿。しかし……」

「気持ちはわかるが、このドトゥスは自分が助かると信じているからな。そうだろう? 助かって出世する予定もあるんだろう?」

「無論だ。この無実が晴れれば、逆に私は出世するのだ」

「これ以上の出世ね。どこからその自信が来るのかはわからないが、俺たちが死んでなかった時点でもうその予定は崩れていると思うぞ? 報告書の件は何も知らないんだろう?」

「報告書? なんのことだ?」


本当にドトゥスは知らないようで、首を傾げる。

しかし、その様子を見てお姫さんは怒りをあらわにする。


「まだとぼけるのですか!! 報告書を盗み出せるのはあなたしかいないではないですか!!」

「報告書? なんの話ですかな?」

「なにをふざけたことをっ!!」

「まあまあ、落ち着け。ドトゥスは本当に報告書のことを知らないんだよ。そうだな?」

「あ、ああ。報告書とは何の報告書のことでしょうか?」

「だから、魔族と貴族がつながっていた貴族が処刑された件が書かれていた話です。それがあの女の襲撃時に盗まれていたのです!! あなたしかいないじゃないですか!!」

「はぁ、盗まれていたのはわかりましたが、私は陛下からの処罰で家で謹慎しておりまして、報告書が姫様に渡されていたのは知りませんでしたし、報告書を盗む意味は何があるのでしょうか? 魔族と繋がって貴族がリンチされて死んだだけでしょう?」

「なにを……って、まちなさい。あなたはリンチされて死んだと知っているの?」

「ええ。まあ、普通に貴族たちから話を聞きましたが」

「……私の報告書には尋問官が処刑をしたと……」

「はあ、なんとも変な改変をするものですな。あり得ない話ですな」

「「「?」」」


なんとも全員で首を傾げる。

何が目的かわからなくなってきたという感じだ。

確かに意味不明に見えるが、実はそうでもない。


「おそらく、報告書の矛盾点に気が付いて、聞いてくるのを待っていたんだろうが。宰相が」

「宰相が?」

「……」


あからさまに動揺して口を閉じるドトゥス。

ま、そこは放っておいて、説明を続けるか。


「まあ消去法だな。さっきから話をまとめると、報告書を渡したのはルーメル王、宰相、そしてお姫さんだけだ。この中で、わざわざ情報を歪めて伝える可能性があるのは宰相だけだからな。多分、もうすぐ来るんじゃないか? 案外もう聞いているのかもな。なあ?」


俺がそう扉の向こうに話しかけると、それにこたえるように、武装した兵士が中へと入ってきた。


「おお、宰相様」


ドトゥスが喜びの声を上げる。

本当にわかりやすい。こいつが色々動いていたわけだ。


「……これはどういうつもりなのでしょうか? 宰相」

「これは姫様。ご機嫌麗しく」


そう言って宰相は恭しく頭を下げて挨拶をする。

見てくれだけは立派な紳士だよな。


「全然ごきげんではないのですが、なぜあなたが報告書を改変したのか聞きたいですわね。それに明らかにドトゥスに指示を出したのはあなたのようですが?」


ここまでくればこの宰相が黒幕だとわかったのか鋭い視線で、お姫さんは宰相をにらむ。


「いや、姫様がここまで鈍感だとは思いませんでした。下々の者どころか貴族たちと話を聞く余裕もなかったようですな。予知のことで頭がいっぱいでしたかな?」

「……私のスキルを知っているのですか?」

「陛下から噂程度には。しかし、国政に関与させないと言っておりましたから、安心していたのですが。そもそもそんな眉唾な力を信じるわけにはいきませんよ」


まあ、当然の話だな。

こんな力を信じて動けば問題が出てくるのは目に見えている。


「しかし、本当に残念です。もうちょっと早ければ、姫様と手を組むことができたのですが、そちらの役に立たない勇者どもを暗殺できませんでしたからな。せめて一緒に散らせてやろうかと思ったのですが。まさか、あの女を倒してしまうとは……」

「意外だったか?」

「ええ、非常に。まあ、おかげで報告書を回収しておいてよかったと思いましたな。あのまま報告書が残っていれば、疑いのまなざしが私に飛んできたでしょう」

「残念だったな。そこまでやっても結局、お前さんにたどり着いたぞ」

「いえいえ。先ほども言ったように、これはこれでありがたいのですよ。姫様が地下牢に踏み入ったと知って、慌てて兵士と共に来る私。そして、そこでは尋問官の誤解によって切られている姫様たち。それを見た私はあまりの怒りのため、動揺して尋問官をその場で処刑してしまう。それだけです」


宰相がそういうと、後ろに控えた兵士が広がりこちらに武器を向けてくる。


「……あなたがドトゥスに指示をだしていたのはわかりました。しかし、何が目的でこんなことを」

「先ほどもいったでしょう? もうちょっと早ければ姫様と手を組むことができたと。私の目的は魔族の殲滅。今は亡き、キーフォル陛下の意思を、願いを、平和を果たすためです」

「……叔父様? まさか、貴方は、魔族の魔王退治をあきらめていなかったのですか?」


ああ、話に聞いた、ルーメル王の兄の信奉者か。

そして、姫様の言葉に意外そうな顔をして口を開く。


「姫様が何をおっしゃっているのですか? そちらの役には立たないとはいえ、勇者を呼び出したということは、魔王を倒すためでしょう? キーフォル陛下が掲げた魔王を倒すという意思を汲んで、呼び出したのでしょう?」


そっちかー。

だから、手を組めると思ったのか。

だから、ドトゥスを通じて支援のような形をとっていたのか。

魔王を倒す同志だと思っていたから。


「しかしながら、今の陛下の意思も尊重いたします。キーフォル陛下の時に行われた征伐で喪失した将兵、物資、資金へのダメージは計り知れないモノがありました。それを回復するために内政を行う。当然のことでございます。今は雌伏の時だと。ですが、そんなとき、姫様が勇者を呼び出した」

「……それで、魔王を倒そうと思ったわけですか?」

「ええ。正直、私が生きている間にめぐってくるとは思っていませんでした。陛下もキーフォル前陛下とは仲は悪かったのですが、それでも仇は討ちたいと思っていてうれしくも思いましたよ。ですが、その勇者殿たちは……」


結城君たちというか、俺が戦いを避けたな。

理不尽すぎる内容だったしな。

ということで、文句を言っておこう。


「よそから人を呼び出して、殺し合いに行けといわれていくような人間は正気の沙汰じゃねえよ」

「確かに。ですが、この機会を逃すわけにはいかないのですよ」

「だから、俺の暗殺から始まり、魔族までけしかけたわけか。貴族も1人死んだぞ?」

「そこは仕方がありません。大義の為です。だからこそ、姫様も勇者殿たちを誘拐した。ちがいますかな?」

「……」


宰相にそう言われて、沈黙するお姫さん。

まあ、目的の為に手段を選ばなかったのは変わりないからな。

そもそもの原因もお姫さんが召喚を成功させたところにあるといえないこともない。


「正直、魔族をけしかけた時点で、勇者殿たちは魔族に対して警戒を抱き、魔王討伐へと赴いてくれると思っていたのですがね」

「あんな変な位置で襲われれば不信感を持つさ。それに被害はほとんどなかったからな」

「ええ。意外でした。正直、タナカ殿が身を挺して庇って、そのまま死んでくれると思っていたのですが、生き残ってしまいましたからね」

「残念ながら、ああいう修羅場は何度も経験しているんでね」

「おかげでこちらも予定が狂いっぱなしですよ。我が国の立場が根幹から揺らぐ羽目になりましたし、手駒を1つ処理する羽目になりましたからね。しかも、他の勇者を召喚するという案は、姫様に断られてしまい、あなた方に執着しているというのが、つい最近分かったのですよ」

「だから、今になって別で召喚したわけか」

「そういうことです。もうこうなれば、全部始末して魔族の仕業と言えば、皆沸き立つでしょう。魔王を倒すべしと」


まあ、お姫さんに勇者たちが魔族の不意打ちでやられたといえば、民意は魔王と対決へと向かうだろうな。

それだけ危機感がでてくるからな。


「そして、犯人はそこに転がっているドトゥスで。あの貴族と同じようになってもらった方がいいでしょう」

「な、なにをっ!?」

「おいおい。さっきはこっちの尋問官を犯人っていってなかったか? 予定がブレブレだぞ?」

「ドトゥスがトップで、尋問官が部下。そして油断している所を襲われた。それでいかがでしょうか?」

「いかがでしょうかと言われてもな。死にたくはないな。それに魔族とぶつかるのはほぼ確実だと思うが、協力しようとは思えないか?」

「今までの行動を見るに信用なりませんね。さて、お話はここまででいいでしょう。タナカ殿がいくら強くても、この狭い空間で戦えるわけもありませんからね」


そうか。そこはちゃんと考えてきたわけか。

まあ、この距離なら確かに銃を引き抜いて撃つよりも、ナイフを投げた方が早いといわれる距離ではあるが、制限されるのは何も俺たちだけじゃない。宰相たちも狭い空間にいるから、条件としては同じだ。


「では、さよなら。もっといい出会いがしたかったですよ」

「そうかい」


宰相と俺がそう言いおわると、兵士がこちらに向かって武器を突き出して……。


ダンッ!!


俺も引き金を引いた。

いやー、地下空間だと音が響いて耳に痛い!!

鎧に穴が開いて倒れた兵士のことより、俺にとっては耳がいかれないか、それが心配だった。








犯人が戻ってきたとういか、始末しに来た。

お姫様を煽ったのもドトゥスだけではなく、宰相の支援あっての事でした。


そして、普通であれば大ピンチ。

しかしながら、そこには鉄の鎧なんて貫通しうる田中がいたのです。

狭いところで人が固まっている。


まとだね!!


あ、そういえば、私事ですが、結婚しました。

本日無事に上げられたかな?

前日投稿なんで30日の報告待ちかな?


いや、オタクでも結婚できるらしいよ?



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