表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

394/527

第391射:降伏か死か

降伏か死か



Side:タダノリ・タナカ



結城君たちは随分心配をしてくれていたようだ。

まあ、普通に考えれば1対多数なんて普通に考えれば負けること請け合いだ。


『いやー、ヒカリたちがまともな思考の持ち主でよかったな』


と、無線からジョシーの言葉が聞こえてくる。


「ああ、全くだ。あれで一緒に行きますとか言われたら困ったもんだった」


そうならないように叩き込んではいるんだがな。

大人数に囲まれるような位置につくなって教えてきたしな。

それを覆す勇者のスキルが多数あるからこそ、それを潰してきたのがよかったと思うべきだろう。

いつか手に負えない状況に追い込まれるのが目に見えているしな。


『でも、あの力ならやれそうだけどな』

「正面から重症負わせた奴がなにを言ってるんだか」


結城君たちも魔力の障壁っていうのを作ることは出来るが、無意識下は無理だ。

いや、ジョシーに襲われてから緊急展開の訓練をしはじめたからできないことはないだろうが、油断は禁物だ。

危ないところに踏み込むってことを避けることは大事だ。

そしてそれは俺たちも同じ。


「よし。こっちも突っ込ませるぞ」

『ああ、私の方もいく』


俺たちは戦車の中で警戒しながら、上空に待機させている無数のドローンの数機を降下させて銃撃しながら屋内に飛び込む。

そう、俺たちがわざわざ敵のど真ん中に飛び込むような真似はしない。

俺たちだって無敵ではない。

敵が多数いるような場所に飛び込むなんてのは自殺行為だ。

だからこそ無人機を突っ込ませて、その後に、手榴弾を持たせた機体を放り込む。

自動操縦自爆機体ってやつだな。

そして手榴弾ドローンが入ったあとずれて爆音が響く。

二か所だ。

俺とジョシーの二台が無事に自爆したようだ。


「よし、これで少しはましになったか? こっちはクリアだ」

『私の方もクリアだね』


偵察用ドローンも突入させているので、爆破の影響の受けないところに待機させていたのを移動して現場を確認する。

そこには呻いている兵士たちもいて、こと切れている兵士もいる。

そしてバリケードのような残骸もある。

普通手榴弾ごときでこの手のバリケードが粉砕されるかというとそこまで威力は無いが、そこらへんは考えて一台当たり5つほど持ち込んでいるのでこういう被害になったのだろう。


「生き残りはいるな。トドメ刺すか?」

『どうだろうね。迂闊に止めを刺すと恨みを買うよ?』

「攻撃を受けると面倒なんだがな。こういうやつらは忠誠心とやらで奮起する奴はいるからな」

『まあねー。それなら、先に領主とやらに降伏勧告をして受諾させればいいんじゃないかい?』

「それしかないな」


結局の所やることは変わらない。

ただ、生き残る人が増えるかぐらいの話だ。

俺たちは侵入をせずに大量のドローンを突入させて、撃ち爆発させ敵兵を排除しつつ領主館内の奥へと進む。

ああ、もちろん領主がいるであろう執務室の窓は監視していて、目標の姿は確認している。


「しかし、この状況で逃げないとはな。真面目なのかね?」

「さあ、多少善戦して譲歩案を引き出すつもりとかじゃないか? そうでもなければ門が吹き飛ばされた時点で逃げ出しているだろうし」

「確かにな」


最後の守りともいえる門が吹き飛ばされた時点で敗北は確定だ。

それなのに逃げずにこもっているのはこちらと何かしら話すことがあるか、離れられない事情があるということだ。

まあ、逃げられるような真似はさせないけどな。

ドローンを上空展開していて、逃げるやつがいれば追えるようにしている。

戦車と人の足じゃ話にならないから逃亡は不可能だ。

つまり、最初から詰んではいるってことだ。

相手はそれを知らないから、そういう意味では最適解を取っているかもしれない。

逃げた奴なんて誰も支持しないだろうしな。

町の連中にはおいて逃げたとでも言って見せしめにできたんだが……。


「じゃ、そろそろ声をかけるべきか?」

『ドア越しで声をかけても温いだろうさ。ここはしっかりドアを吹き飛ばしてこっちが圧倒的強者であることを示したうえで話した方がいい』

「おまえ、こういう所遠慮ないよな」

『遠慮じゃない。安全確保のためだ。ダストがそこまでしない方が驚きだよ。なまったか?』

「鈍ったわけじゃないが、こういうのは追い込みすぎると徹底抗戦になるだろう。そこは考慮しないのかって話だ」


脅すのは賛成だが、やりすぎれば恐々状態になって話すどころじゃないことになる可能性もある。

圧倒的恐怖というのは人の理性を壊すのだ。

何も耳に届かなくなることがある。


『それも考えてだよ。あっちはファンタジーの住人だ。武装解除させたうえで話し合いのために出てきてもらうぐらいしてもらわないと話にならないよ』

「確かにな」


俺たちが知らないスキルなんてものがあるかもしれない。

大軍を押し返す力はなくとも、人一人二人を殺すぐらいはやってのけるぐらいはあってもおかしくない。

なので、ここは武装解除の上の降伏勧告を飲ませるべきだな。

そうでもなければ資料などは惜しいが、領主館ごと吹き飛ばすしかないだろう。

そして向こうは此方の実力がよくわかっていない。

いや、門を吹き飛ばすぐらいの力は分かっているのに負けないというのはないだろう。

やっぱり、ジョシーの言うようにこちらから譲歩案を出させるための籠城か。


「下手に交渉を持ちかけると足元を見られる可能性があるな」

『そうだよ。だからさっさとやっちまおう』

「わかった」


とはいえ、こうした雑談をしつつもドローンが侵入して各部屋を全て制圧していく。

使用人などもいたが、それらも領主館の前へと移動させていき、最後は領主の執務室のみとなった。

普通なら地下道とか隠し通路から逃げてもいいと思うが、結局最後まで逃げようとはしなかった。

なので、俺たちは遠慮なく執務室のドアをドローンの手榴弾で粉砕し、中に踏み込む。

ドアが粉砕された余波でドアの付近に配置していたであろう兵士たちが転がっている。

やはり待ち伏せはしていたか。

とりあえず牽制射撃を行い、奥で守られている男にカメラを合わせて声をかける。


「こちら、東側連合の田中だ。改めてそちらに対して降伏を勧告する。そちらはよく戦った。私たちとて無益な殺戮は望んでいない。まだ生きている者たちもいる。そちらの判断次第で降伏してくれた生き残りの命運も決まるだろう」


率直にお前が参ったと言わないと多くの人が死ぬと言ってやる。

カメラの向こうにはこのドローンを見て驚いているのか、それとも音声が出たことに驚いているのかわからないが、回答を貰わなければ意味がない。


「返答が欲しければ目の前のドローン……使い魔に言えばこちらに聞こえる。どうする?負傷している者に関しては時間をかければかけるほど死体になるだけだが? それとも誇りと共に死にたいのであれば10数える間に黙っているといい。それで死ねる」


幸い、放火をして書類を全部始末しようという意思はないようだし、血にまみれるぐらいは仕方ないと判断した。

死にたいのなら止めても無駄だしな。

ということで、俺は即座にカウントを始める。


「1、2、3……」


その間にジョシーの操るドローンが複数入ってきて、窓の外にもわかりやすいほどドローンが集まる。

相手には逃げ道などないということが分かっただろう。

そして、こちらは本当に温情で話しかけているということも、10数え終わればあっさり殺しにかかることも。


「5、6、7……」


領主と思しき男は口を悔しそうにつぐんでいる。

こりゃ、皆殺しか?

そう思っていると。


『こ、降伏いたします! 私たち、ノスアムは東側連合の田中様に降伏いたします!』


なぜかその男ではなく、横にいた若い……いや少女がそう叫んだ。

しかし、領主の判断でない限り、その発言は無効と言えるが、降伏を申し出た相手を撃ち殺すのは結城君たちが怒りそうだし。


「そちらの少女は攻撃対象から外そう。しかし、領主の回答がない限り少女以外は始末するがいいか? もう10は数え終わった時間だ」


俺はためらいなく攻撃を指示……。


『ち、違います! か、彼はおじ様で、わ、私がこのノスアムの領主、ジェヤナと申します!』


はい?


「どうする?」

『どうするも、確認の必要性もあるから、とりあえず領主館の前に出て来いでいいんじゃないか?』

「そうだな」


ということで、戸惑いつつも、降伏するのであれば非武装の上、領主館前に出てくるようにと告げる。

さあ、大人しくこれでおわるかね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ