第364射:行軍前の情報収集
行軍前の情報収集
Side:タダノリ・タナカ
俺は結城君たちが冒険者ギルドから派遣されている人員と相談した結果を送って来たもの確認していた。
内容は今回の戦争参加において取得しておくべき情報というやつだ。
そんなの戦場の情報どころか、参加国はもちろん敵国の情報全部だよ。
っていうのが普通だが、現実的にそんな情報を集めることはできない。
だから取捨選択して、絞って情報を集めるしかない。
冒険者ギルドにただ情報を教えてくれーって言ってみて相手の動きを見るのも面白いのかもしれないが、こうして結城君たちが考えて動いているのも成長の証だろうな。
ということを考えながら、提案されている取得情報の確認を行っていく。
「ま、行軍ルートの確認は必要だな」
どのルート、どの国を通るのか、妙なところでお姫さんたちを始末しないとも限らない。
いや、戦車をぶち抜くほどの火力があるかは甚だ疑問だが、警戒は必要だ。
崖から落とされるなんてことは無いだろうが、戦車とかは穴に落ちれば動けなくなる。
そこら辺を狙われないとも限らないか?
いや木ですらなぎ倒して進む戦車だし、そこらへんは俺たちが確認していくから落ちること自体あり得ないか。
落ちたとしても自動制御の戦車が先に落ちるだろうし。
問題は川があった場合の渡河だな。
この世界の重量基準は馬車が最大級だ。
もちろん建設のために石材など運ぶだろうが、戦車ほど重いとは思えない。
つまり、橋を渡れないということになる。
その時は……。
「俺が鉄板でも出す必要があるか」
と、普通に言ってみたが、出せる物なのかと疑問に思ってしまう。
確かに船とかそういうのは出せたんだから出せてもおかしくはないが……。
「とりあえずやってみるか」
俺はそう呟いて部屋の空いているところに四方1メートルほどの鉄板をイメージすると。
ドスン。
と、音を立てて出たのが確認できた。
とりあえず厚さを確認すると大体5ミリほどで重さはかなりあるが……。
「いや、これは駄目だな」
確かに耐久はあるが、戦車の重みには耐えられないだろう。
つまり空中を渡すだけでは無理ということ。
となると、基礎として鉄骨出す必要があるのか。
その上に鉄板を敷く。
いや、鉄筋コンクリートの橋を設置するか?
まてまて、高さとかの調整はどうする。
先に作っておいた橋をポーンと出してもバランスが取れるわけがない。
ちょっとまて戦場じゃどうしてたっけ?
……そうだ、即席の浮橋があるんだっけか。
あれ、俺出せるのか?
とりあえず、あとで練習してみるとして、他は戦車自体半身が浸かっても動くことができる構造にはなっているから、浅いところを探すべきか。
「そうなると、やっぱり進攻ルートの確認は必要不可欠だな」
俺は改めてルート確認の必要性を感じて、即座に今までドローンで取得させていた地図を開く。
目的の戦場だけでなく周囲にもドローンを放っていて、もちろんのこと俺たちが通るであろうルートの撮影は済ませている。
「さて、予定されているルートはと……」
正式なルートではないが、冒険者ギルドが予想したルートなら信用はおけるだろう。
何せ、ハブエクブ王国としても戦車を戦力として換算しているんだから、通れないようなルートを選ぶはずがない。
選んだら敵対行動とみられかねないしな。
そんなことを考えながら提出されたルートを確認してみるが……。
「……地図が雑い」
地図は冒険者ギルドで所有しているやつだが、やはり地図が駄目すぎる。
いや、この時代に測量して正確な地形を書き込むとかはしないだろうけどさ……。
ハブエクブ王国からひょろひょろーと通る国と目的地である戦場を書いてあるだけのものだ。
まあ、俺たちに詳細な地図を渡すわけにもいかないだろうというのは分かる。
向こうにとっては詳細な地図はそれだけ貴重なものだしな。
とはいえ現代からすれば、ドローンを飛ばして、あるいは航空機を飛ばして撮影すれば終わることで、地図自体にそこまで大した価値はない。
敵拠点内部の地図ならいるけどな。
そんなことを考えながら、航空写真から落書き地図と一致するであろうルートを探していく。
幸い、目的地までのルートは分岐は分かりやすいものだったので、さほど苦労はすることなく特定することはできた。
「川が3つ。多くもなく少なくもないって所だな」
国を2つまたぐルートなので下手すると少ないともいえるかもしれない。
水利権は現代でも戦争の理由だしな。
その源となる川が3つしかないとか争いの最たる理由になりえる。
まあ、主流が3つ言うだけで、実際はかなり枝分かれしている可能性はあるけどな。
そんなことを考えつつ、わたる可能性がある地点を確認すると、そこには確かに橋が架かっている。
木造の心もとないレベルだ。
いつでも壊せる燃やせるといわんばかりのつくりだな。
いや、実際戦争になればすぐに破壊して足止めをできるようにしているんだろうな。
「いや、案外丈夫かもしれないな。近くのドローンを飛ばして確認してみるか」
上空からの映像しかないから詳細は確認できない。
木造だからと言って脆いとは限らない。
何せ魔法がある世界だからな。
要確認ということで、他に確認しておくべきことだが。
「さて、その間にほかの内容は通過する予定の国の情報は……」
ハブエクブ王国とはどちらも良好。
というか、ハブエクブ王国が国力が上なので、逆らうようなことはしないそうだ。
何でと思うが、これはこの2国を盾にしているんだろう。
ハブエクブ王国は山脈を挟んで隣にバウシャイの町を持つ国があるが、険しすぎるので攻め込んでくるには問題がありすぎる。
なので、ハブエクブ王国は北と西の国に警戒をしているだけでいいということになるわけだ。
元々ハブエクブ王国は海を擁している国なので、内陸部に王都はあるが、最悪海へ逃げて再起も図れる場所であり、後方を気にしなくていいという好立地だ。
まあ、海へ出ることがなければ逃げ場がないということでもあるが、それは考え方次第だろう。
ということで、ほかの国と違い四方八方を他国に囲まれることはなく、周囲は小国。
それを挟んで大国という構図になっているので小国には大国に対しての緩衝材、つまり先ほど言った盾の役割をしてもらっているというわけだ。
滅ぼすと大国と隣接することになるからな。
これは、小国を挟んだ大国も同じ考えなのだろう。
そうでもなければ、小国はすでに存在していない。
「問題は、結託して入り込む俺たちを袋叩きにする可能性だが、連合を組んでいる以上可能性は低いか」
魔族と戦うために戦力を集めている状態だ。
その時に他国侵攻を認めるような真似はしないだろう。
そんなことを認めれば援軍なんて望めない。
裏切りは無いとみていいか?
魔族が手を回していればと思うが、それならとうの昔にやっているだろうしな。
既にこの戦争は1年近く。
相手の背中を刺すなら、最初から集まらないようにするのがベストだ。
バウシャイの町が落ちたという後方かく乱を行っているから、そういう裏工作自体はやっていないんだろう。
「あとは、この連合の盟主。旗頭になっている国は……ノウゼン王国か。領土は東側の国で最大で同盟国も多い。そして西側の国も繋がりが深いか」
東側の大陸中央にドドンとある国で、今の国王が領土を広げて今に至っているようだ。
周りから反感を買って袋叩きに会いそうだがそういうのもないと。
どういうことだ?
それだけ国力が高いってことか?
とはいえ、四方八方から攻められるような状況になればそう簡単に動けないし、対魔族での旗頭に周りがなっとくするか?
まあ、四方八方から攻められる状況というのもそうそうないんだがな。
ちゃんと連携しないと、押しつぶされて終わりだ。
そうなるとノウゼン王国の外交が上手いってことか?
ここはちょっと詳しく調べる必要があるな。
ということで、さっそくお姫さんや結城君、ゼランに連絡を取るのであった。
出かける前には有力な情報があればいいんだが。




