第363射:どういう協力の望むのか?
どういう協力の望むのか?
Side:アキラ・ユウキ
田中さんからもたらせた戦場の生の情報。
分かったことは多かったけど、逆にわからないことも多かった。
なぜか5つともぶつかり合っているということはなかったのだ。
お互い一定の距離を保ってにらみ合っているだけ。
まあ、休戦期間だと言われれば納得できるとは言っているけど、俺たちにはよくわからない。
とはいえ、俺たちにはそれを解明する情報源があるわけでもないので、これからのことを4人で話し合うことにする。
「まあ、普通に考えると冒険者ギルドに行ってルクエルさんから情報をまた集めるだよね」
「ですが、この情報をどこで手に入れてきたのかという話になりませんか?」
「だよな。シシルさんギネルさんにもどう説明したものか」
ちなみに、彼女たちは隣の部屋を取って待機してもらっている。
まあ、彼女たちならこちらの話を聞こうとしているだろうけど、そういうことは想定済みで魔術とか色々利用して防音したりしている。
向こうもやきもきしているだろうな。
「ヨフィアさんはどうしたらいいと思いますか?」
俺はこの場にいる中で俺たちよりも経験豊富なメイドさんに話しかける。
すると、ヨフィアさんは用意していたお茶を俺たちの前に出した後に少し首をかしげるように考え込み。
「まず、現状を整理した方がいいかと思います」
「現状の整理ですか?」
「ん? もう現状整理をして今話し合いをしているんじゃなかったっけ?」
「ですわね。何を整理した方がいいと?」
「いえいえ、戦場の状況を整理しただけで、すべての情報が揃っているわけではありません。ですからこうして話し合っているんですよね?」
「ええ、そうですね」
「では、足りない情報とは何かを考えましょう。冒険者ギルドに協力を求めるにしても何の協力を求めるのかは今の時点ではわからないのでは?」
「あ、確かにそうだね」
「少し焦っていたということでしょうか?」
ヨフィアさんの言う通りだ。
なんの情報を求めることすら決まってないんじゃ意味がないよな。
撫子のいうように、戦争しているところを見て焦ったんだろうか?
「まあ、あんな軍勢を見れば焦るのもわかりますが、軍も動いて抑えていますから今すぐ崩れるような感じには見えなかったですね。というか、私たちが慌てたところで即時あの現場に行けるわけでもないですから、今崩壊したらそれで終わりですよ」
「「「……」」」
ズバッといわれる事実に俺たちは口を閉じるしかない。
いや、事実は事実なんだけど、うん。
俺たちがまだ子供ってことだよな。
「えーと、ヨフィアさんのいうことは分かったけどさ。じゃ、具体的には何を聞いたらいいのかな?」
「それを考えるということですけど、私がパッと思いつく限りは参加している国とかでしょうか?」
「だな。5つの主要街道で戦いが分かれているならどこの場所でどこの国が戦っているって情報はいると思う。だって、このハブエクブ王国を元に交渉するんだし」
「まあ、それはいりますけど、そこらへんは私たちが集めても仕方がないと思いますよ。そういう戦闘の方針に関してはタナカさんがメインで姫様がそれにのっとって交渉するはずです」
あー、確かにそうだ。
俺たちが勝手にあれこれ決めるのはアレだよな。
田中さんが決めた方が安心できる……。
「あ、違うな」
「ん? 何が?」
「いや、さっきの話。確かに決めるのは田中さんとかユーリアだけどさ。俺たちは何も情報を集めなくていいってわけじゃない。俺たちが集めてきた情報をちゃんと伝えて、俺たちも考察するのは必要じゃないかって思った」
「なるほど。確かに田中さんたち任せもよくないですね。では、冒険者ギルドでも国際情勢とか参加国に関しての情報は集めましょう。多角的な情報はどのみちあっても問題ないはずです。ヨフィアさんいいですか?」
「はい。ちゃんと決めたものがあるのであれば私から言うことはないです。ですが、注意してほしいのですが、国の情報を探るということはそれ相応に危険があると覚悟してください。国を追われている人たちです。そういう風に周りを嗅ぎまわられていると知れば過敏に反応しかねませんからね」
なるほど、そういう危険もあるわけだ。
堂々と聞きまわるのもあまりよろしくないってことか。
だから冒険者ギルドを介してってことか。
そう考えていると、光が何か思いついたようで……。
「ねえ、それならシシルさんやギネルさんにどういう情報を集めるって聞いてみたらよくない?」
「それはこちらの情報を渡すことになるのでは?」
「いやいや、5つの主要街道で戦いが起こっているっていうのは皆が知ってることでしょ。魔物の編成とかそういうのは何も言わないよ。この状況で何の情報があるといいだろうってことで聞いてみるんだよ」
「うーん。言ってることはわかるけど、シシルさんとギネルさんを巻き込んでいいのかな? 一応俺たちとの連絡役ではあるけどさ」
俺としては光の提案にあまり賛成できないでいた。
裏切りとかではなく、連絡役にそこまで責任を求めてもいいのか?
いや、間違った情報を流す可能性もあるし、関らせることが問題じゃ?
「どう思いますヨフィアさん?」
とりあえずここは俺たちよりも経験を積んでいるヨフィアさんに意見を求めよう。
「そーですね。冒険者ギルドがどこまで協力してくれるか見ものですし、シシルさんギネルさん個人の戦争に対する認識を見るためにもいいんじゃないでしょうか」
意外にもヨフィアさんは2人から意見をもらうことには賛成のようだ。
話はまとまったので隣の部屋に待機している2人を招き入れることになり、先ほど話した内容を告げる。
「ふむ。これから軍として動くに際してやっておいた方がいいことですか」
「しかし、軍が動く以上その方針に私たちは関与できないのでは?」
と、ヨフィアさんが言ったことを言う。
考えることは同じだなと思いつつも。
「一応俺たちはお姫様には意見を言える立場だし、完全に無視ってわけじゃないんだ。だから、こうして冒険者ギルド側との協力者としているし、軍が全滅するような行動をして止められるかもしれないから、情報は集めておきたいんだ」
「なるほど。確かにそれならこちらでも情報を集めておくというのは有効ですね。どうにも軍は冒険者を毛嫌いしている感じですからね」
「そうなの? 一応、お互い領分は守っているって感じで聞いているけど?」
「上はそうですが、下はそうでもありません。お互い不要と言い合っていることが多いです。まあ、血の気の多い連中だけですが、そういうのが目立つということです」
「そういうことですが、まあ、別の組織である以上そういう軋轢は必ずあるということですね。下手をすると情報が回ってこないと」
「はい。その通りです。私たちのような下部の者が城の者に仕事だからと言って協力を求められても邪険に扱われることは多いです」
俺としてはそれで足を引っ張り合ってもなと思うけど、大人の世界はそういうわけにもいかないんだろうなと一応納得して話を進める。
「ということで、シシルさんやギネルさんからの意見が欲しいんだ。このままだとあやふやなままでルクエルギルド長に協力要請もできないし」
「確かに、戦争に対する情報を、と言っても様々ですからね」
「城の連中と情報が一致しているかというのを確認するのが一番有効かと」
確かに、ほかの組織から確認できる情報の方が確認もできるし有効か。
でもこれって前からやってなかったか?
いや、まあこちらから依頼したってのが大事なのかもな。
具体的に内容も決めるんだし。
「では、具体的にいうならまずは何を確認する方がいいと思いますか?」
ヨフィアさんはシシルさんとギネルさんに続きを促す。
自分たちなら何を聞くかを試しているってやつだな。
で、聞かれた二人は……。
「そうですね。でしたらまずは進軍ルートでしょう。主戦場のことではなく、ハブエクブ王国がその主戦場に行くまでのルートの確認です。いつそのルートを教えられるかはわかりませんが、そちらは此方の大陸は初めてのはず、どのルートを選択されても判断はできないでしょう?」
「確かにそうですわね。とはいえ、その話を聞くと妙なルートで奇襲されるという感じですね」
「ありえない話ではありません。どうしてもそちらは少数ですからね。そういえば、ヤマト様たちはルーメル王国の人たちと一緒に動くのでしょうか? ああ、いえ、同行するのでしょうか?」
そっか、一緒に動くつもりはあるが、同じように同行する必要はない。
何せ何かあればまとめてやられる可能性がある。
まあ、逆に考えると各個撃破危険性もあるんだけど、そこは俺たちがちゃんとできているかってことになるしな。
何より、冒険者ギルドとは相互協力体制でもある。
信じてやらないとだめだろう。
と、そこはいいとして返事をしないとな。
「いえ、まだその話はしていませんが、冒険者ギルドの関係を今しっかりと聞いた今、避けた方がいいですかね?」
「正直、私としては避けたいですね。上は一緒に動くことで仲がいいことをアピールしたいでしょうが、そこは私たちとは別でアプローチにして貰いたいです」
「ええ。ユウキ様たちはまだ城の者たちには詳細は知られていないですし、わざわざ目を付けられるようなことはするべきではないでしょう」
確かに、一応俺たちの存在は城の人たちには秘密になっている。
もちろん田中さんも。
これは利点でもあり不利な点でもあるから、これも要相談だな。
「わかりました。そういう旨は上に話しておきます。ほかにはありますか?」
「あとは、どの将軍が動くのかとか、私たちが、いえハブエクブ王国がどの戦線に投入されるかという予想を聞いておいた方がいいでしょう。味方に足を引っ張られたくは無いですし」
そんな感じで話し合いは続いていくのであった。




