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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第320射:同僚との交渉開始

同僚との交渉開始



Side:タダノリ・タナカ



目の前にあるのはジョシーの遺体だ。

見事にに頭をぶち抜き、胸を二度ぶち抜いているので綺麗な穴が開いている。

改めてみて、この女も人だったかと思うのだ。

こいつが生きてた頃は本当に死ぬのかと思ってたぐらいだからな。

行方不明になったときも結局死体は出てこなかったもんな。

それがこんな世界で会うことになるのは、微妙な気持ちだ。


「しっかし、自慢するだけあってスタイルはいいな」


ジョシーの遺体は検分の時のまま全裸で保管されている。

普通ミイラになりそうなものだが、そこは魔法、いや魔術のおかげで綺麗なままの遺体だ。

胸は大きいし、腰は締まっていて、尻もでかい。

性格さえどうにかなればいい女だっただろう。


「えー、こんな女より私の方が立派ですよー。ね、アキラさん」

「は? なに晃。まさか……」

「この女よりヨフィアさんが立派だとわかるんですか?」

「いやいや、そんな暇ないって! 俺に言われてもよくわからないです!」


相変わらずヨフィアは結城君をからかっている。

まあ、ちゃんと場を和ませているので俺が何かを言うつもりはない。

そんなことを考えつつ、傷の確認をしているとあることを思い出す。


「なあ、爺さん。腕の機能が傷によって機能していない場合はゾンビになっても動くことはないよな?」

「それはもちろん動かないのう」

「そうなると問題だな。遺体の傷が激しい場合はどうやって利用するんだ? そのままじゃ使えないだろう?」


ジョシーをゾンビとして利用しようと思うのは主に、戦闘での働きに期待してだ。

それが体の欠損で動きが鈍るのならあまり戦闘では期待できない。

何せこのジョシー、俺に頭と胸をぶち抜かれる前にとっさに腕を盾にしていたからな。

そのおかげでジョシーの腕には綺麗な穴が開いている。

このレベルの損傷だと腕を動かすこともできないだろう。

だから、魔術的な何かがあるかとおもっているんだが……。


「その問題に対しては解決策がいくつかある。英雄の遺体を防衛機能として使うとはいったが、やはり欠損などがあるからのう。その場合は英雄自身が持っている魔力を利用して本人が動かない体を動かす方法じゃな。これがごく一般的じゃ」

「こいつには無理だな。魔力なんてものはこっちに来てからだろうし、戦闘の時には一切魔術を使わなかったからその手段を練習していたとも思えない」

「あとは、魔術師本人が魔力を分け与えて動かない部位を動かすようにする。魔力が足りない分を補うというやつじゃな。とはいえ、魔力をコントロールできなければ使えない」

「それも無理だな。魔力なんざ使ったことはないだろう」


やっぱりジョシーを使うのは無理があるか?

まあ、片腕だけは使えるようになっているから、戦えないこともないだろうが。

というか、腕はとかは動かない割には心臓が動かなくて頭に穴が開いていても動くっていうのは色々不思議だよな。

マノジルの言う通り魔力か何かで補っているんだろうが、どうもよくわからん。

そういう物だと思うしかないか。


「あとはゾンビ化の適正がどれだけあるかじゃな。魔力を扱う才能がなくてもゾンビとしての適正がアレば普通に動かせるとは聞いたことがある」

「結局不安定ってことか。まあ、その方がいいのかもな」


俺がそういうと、ルクセン君や大和君が頷きながら……。


「だよねー。あの女がまた敵になるかもしれないんだし」

「人としてはどうかと思いますが、今までやってきたことを考えるとそういう枷は必要だと思います」


すぐに俺の意見に賛成を示す。

どれだけ嫌いなんだよと思うが、まあそれも当然かとおもう。

撃たれたんだからそうそう好きにはなれないよな。

傭兵だと酒場でお互い顔を合わせて仕事場じゃないから乾杯ってのもよくあるが、そういう精神を持てというのは酷だろうしな。


「元々戦闘奴隷として扱う予定なので構わないでしょう。今後の働き次第、そして私たちに対する扱いで対応を変えればいいのです」


お姫さんはそう言いきる。

今悩んでも仕方がないってことだな。


「よし、お姫さんの言う通りだ。そろそろ伝令から持ち帰った情報で大慌てしているようだし、戦果確認にもいきたいところだからな。さっさとジョシーをゾンビにしてしまおう。何をするにもそこからだ」


俺がそういうと全員が頷く。


「じゃ、爺さん頼む」

「わかった。何かあれば助けてくれるとありがたいのう」

「フォローできるならしてやる」


そういうと爺さんはむにゃむにゃ何かを言い始めた。

多分ゾンビ化するために必要なことなんだろうな。


しかし、爺さんを守るね。

ジョシーが敵対してきた場合はかなり難しいことになるとは思うけどな。

なので、ジョシーを蘇らせるのに立ち会うのは俺とマノジル爺さんだけだ。

何かあった際に最小の方が俺としても動きやすいからな。

まあ、ちゃんとゾンビ化する前に両手両足は拘束しているけどな。

精神病患者用の強烈な拘束具でな。


「外の結城君たちも準備はいいか?」

「大丈夫です」

「いつでも狙えるよー」

「はい、問題ありません」


結城君たちも壁越しに小窓から銃口をジョシーの遺体に向けている。

つまりいつでもヤレル準備はできているということだ。

後ろの聖女さんや女王さんも控えて回復魔術の援護もできている。

いやー、当たり前の警戒だとはいえ……。

お前も随分偉くなったよなーとも思う。

俺たちなんて、ただの使い捨てだしなと苦笑いしていると、ジョシーが横になっているベットの下に大きな魔方陣が現れ、小さい光の玉がジョシーの体の上に現れたと思うとすっと体の中に入っていく。


「タナカ殿。成功したぞい。あとは目を覚ますか、話を聞くかじゃな。あとは任せる」

「わかった」


俺はそう返事をしつつ、ジョシーの顔を見ずに声をかけることにする。

敵の視界に入るなんて真似はしてやらない。


「おい。ジョシー聞こえるか?」

「……」

「なんだ、喋れないのか? それともゾンビ化して言葉が理解できないか?」

「はぁ? 映画の見すぎかダスト? ゾンビなんているわけないだろう?」


俺の言葉に心底不思議そうな返事をする。


「お、意外としゃべれるもんだな。それで、ジョシー俺はお前を拘束している。その前後の理由は分かるか?」

「んー? ちょっとまちな。なんか妙な夢を見ていた気がする。剣と弓、鎧とか冗談のような連中に頼まれてお前と戦う話だ」


なるほど、あれを夢だと今は認識しているわけか。

いや、まあ、普通はそうか?


「そうだな。結局ドンパチして俺が勝ったわけだ。そして、お前は拘束されているっていうのはわかるか?」

「マジか。ダストに負けたって? あれも夢じゃないって? ここはどこだい? というか、この拘束具はずしな」

「馬鹿だろ。あれだけ暴れて、人を撃っておいて拘束を外すとかするかよ」

「あー、確かにそりゃそうだ。というか、私が生きているなら契約は続行中ってことか。ならダストとあの乳臭い小娘たちを殺さないとな」

「いや、その件だがお前さんがこうして拘束されている間に雇い主はこっちが仕留めた。つまり仕事は失敗ってわけだ」

「あちゃー」


とりあえず、仕事をちゃんとこなすという矜持はあるようで、そこはやっちまったという声を上げている。


「さらに言えば背後関係もしっかりわかっているので、特にお前から聞きだしたい情報もない」

「なんだい。つまりは私は要らないから殺すってことか?」

「だったら拘束なんてしないで、そのまま墓に埋めてる」

「だろうな。じゃ、そうなると私の引き抜きってことか?」

「察しがよくて助かる。傭兵じゃよくあることだろう?」


仕事をしている最中に本拠地が襲撃されて契約がご破算になるやつ。


「まあなー。わざわざ別口の仕事を探すのも面倒だし、断ると墓の下ってことだろう?」

「察しがよくて助かる。お前が敵に回ると厄介だからな。消させてもらう」

「だよなー。私も同じことをする。……ん-、分かった。まだ世の中で遊びたい盛りだからな。そっちと契約するよ」


意外とあっさり契約を了承してくれた。

いや、こいつも紛いなりに傭兵だからこういうことは当然か?


「ちゃんと契約書は用意しているんだろうね? 口約束の取引は応じないよ。使いつぶされるのがおちだからね」

「お前、そういうことに注意はあったんだな」

「何をいっている。マイケルが傭兵団に入る前はソロでやってたんだ。それぐらいはちゃんとやる。まあ、面倒なことはしたく無い主義ではあるけどね」

「それは同感だ。マイケルがどれだけうまくやっていたかって話だからな」


しみじみと当時のことを思い出してしまう。

本当に傭兵を単独でやると面倒なことこの上ないからな。


「ほら、さっさと拘束を解きな」

「いやだね。と行きたいが、そっちの現状も詳しく把握してもらう必要もあるか……。妙な真似するとハチの巣だからな?」

「わかってるって」


ということで、拘束具を解くと……。


「んー。って、なんで私裸なんだ?」

「いや、お前服だけでも武器にするだろう?」

「そりゃね。ま、そういうことならいいか。それでって、ちょっとまちな。私の腕に穴が開いているんだ? いや、これってダストに撃たれたやつだな? となると胸も穴が開いているぞ? なんで血が出てないんだ?」


流石は傭兵。

すぐに自分の状態を確認して違和感に気がついたようだ。

とりあえずさらに追加をしておこう。


「ほれ、手鏡で自分の顔見てみな。面白いものが見れるぞ」

「なに? って、額に穴。しかも貫通している。……ヘッドショットやられてるじゃん。なんで生きてんだ?」


自分の頭をペタペタ触って穴が後ろにもあることを確認して首をかしげるジョシーが非常に面白い。

いや、俺でもびっくりするか。


「とりあえず、そこら辺の説明もするから、座れ」

「いや、プラスチック冷たいから流石に服よこせ。あとその爺さんだれだ?」

「ほらよ。ついでに上も着とけ」


そう言ってシャツとズボンを渡して、ようやく話が始まるのであった。

意外と血を見ないで済みそうなだな。

というか普通に手足は動かせそうで何よりか?



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