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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第317射:色々考えるけどまとめて……

色々考えるけどまとめて……



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



「くかー」


自分の寝息が聞こえる時ってあるよね。

今がまさにそんな感じ、でもうざいとかそういうことは全然思わなくてそのまま寝られるっていうのが分かる。

というか、今もまさに寝ているんだけど。

そんなことを考えなが寝ようとしていると……。


「……リさん、起きて。ヒカリさん起きてください」


なんか僕を起こそうとしてくる声が聞こえる。

嫌だよ。散々ドローンで偵察していたんだから、田中さんのツッコミを貰うまでは必死に敵の侵入を止める方法を探していて疲れているんだ。

寝られるときに寝るのが仕事だって田中さんも言ってるし、僕は断固として起きない。

そう決意を固めて寝ようと思っていたのに……。


「魔族が動きだしました。領主軍の偵察隊は全滅、冒険者のみなさんは半分が……」


その冷静なようで、悲鳴を上げるような撫子の声にあっという間に僕は覚醒した。

目をぱっちりと明けて、辛そうな顔をしている撫子を見つめて口を開く。


「どういうこと?」

「……どうやら夜の間に偵察隊が接触したようです。それで現在偵察隊の生き残りが必死に戻ってきているところです」

「撫子はいつ知ったの?」

「たった今です。ヒカリさんにも伝える必要があるので、起こしに来ましたわ」

「ありがとう。すぐに行くよ」


僕はすぐに体を起こして身だしなみを整える。

はぁ、ゆっくり寝られるのは全部終わった後かな?

そんなことを考えつつも、撫子と一緒に部屋を出て会議室に到着すると、大きいモニターには街道を埋め尽くす……ほどでないけどそれなりの集団が進んでいるのが確認できる。

遠く過ぎてどんな状況下はさっぱりわからない。


「あ、光。起きたのか?」

「おはよう晃。で、なんかものすごいことになっているね。ある意味予定通りってやつ?」

「まあなー」

「で、撫子が領主軍は全滅、冒険者のみんなは半分がって言ってたけど?」


聞きたくはないことだけど、どうせ聞くことになるから僕の方から聞いておく。

まあ、撫子があんな声音で言ってたんだから結果は……。


「んだ。冒険者たちは、撤退中に魔族に追いつかれただ。それで半分が殿にのこっただよ」

「それで残念ながら全滅してただいま進行中って所だね」


ゴードルのおっちゃんとノールタル姉さんの説明で納得。

モニターの軍勢が普通に進んでいるのはすでに冒険者のみんながやられたからか。

色々思う所はあるけど、冒険者は自業自得だし、事前に情報はしっかり与えていた。

というか領主軍は何やっていたんだかと思う。


「……それで、田中さんは?」


終わったことを今言っても仕方がない。

今は一応予定通りに魔族とゾンビはこちらに誘導できている。

だけど、相手を全滅する手はずが整っていないととんでもないことになる。

いや? 実はそうでもないのかな?


「光さん、どうしたんですか? 首をかしげて何か?」

「ん? いや、魔族は確かに強いけどさ。ゾンビに関してはそこまですごいって数でもないよね? ほらアスタリの時とか数十万だったし」


そうアスタリ防衛戦の時と比べると少ないし、なんか意外と落ち着いている。

自分でも不思議だけど、これなら何とかなるかもっていう気持ちだ。


「あー、あれはおらたちがいたこともあるだよ。油断は禁物だべ」

「だな。まあ数が少ないのは事実だが、魔族っていう厄介なのもいる。だからしっかり道中で全滅してもらう」

「あ、田中さん」


何より僕が安心している一番の理由はこの田中さん。

さっき言った道中で全滅してもらうっていうのは本当にやるからね。

まあ、油断するはだめだ。

だからちゃんと確認しておく必要がある。


「それで、どういう予定になってるの?」

「昨日と変わらない。キルゾーンに軍が入ったら爆弾を起動して全部吹き飛ばす。それだけだ」


うん。ものすごい単純だよね。

今回は敵しかいないから使えるんだよね。

だけど問題が一つ。


「ねえ。領主軍は全滅。冒険者たちは半数だけ戻ったって言ってけど、連絡がこのシャノウに到着しない内に全滅とまずいんじゃないの?」


そう、今回の目的は敵を全滅させることも目的なんだけど、それを利用してシャノウの領主とかに私たちが信用できると示すためでもあったはずだ。

勝手に全滅させましたじゃ、色々駄目な気がする。


「それは心配いらない。スラムチームがギナスの方に報告をしている。それに残骸は残るからな。ギナスに言って必要な素材は回収してもらう手はずになっている」


ああ、そういうのもちゃんと予定にしているわけだ。

えーと、そうなると……。


「僕たちって何したらいいの?」


起きてきたのはいいけど、この分だと出番はなさそう。

前みたいにアスタリのみんなと協力して戦うなんてこともないし。

だって今回はキルゾーンに入ったら全部まとめて吹き飛ばすから手伝うこともできない。


「やることは沢山あるぞ。キルゾーンで仕留めるとは言ったが、生き残りが出ないともかぎらないし、抜けてくる奴もいるかもしれないからな。ドローンであたりを囲んで監視だ。一人でも抜けたらシャノウが襲われると思ってくれ」

「うげ……」


それはそれで意外ときつい仕事だ。

ドローンで監視って本当に辛いんだよねー。


「そう嫌がらなくていい。今回に限っては場所がはっきりしているからな。動きがある分退屈はしないはずだ」


そういわれて、田中さんが用意している監視用のドローンを覗いてみるけど、遠すぎて詳細はわからない。

ゾンビがのんびり進行しているぐらいしかわからない。

というか……。


「ゾンビが日中に歩くってなんか変な感じだね」

「ああ、わかるわかる。なんか夜とか雨とかの薄暗いイメージがあるよな」

「ですわね。そういえば魔族は一緒にいるのでしょうか?」

「確認している。魔族の連中はここだな」


田中さんがそう言って操作すると、カメラがズームして軍の後方寄りの中央を映し出す。

そこには、ゾンビとは違う異形の形をした、いやなんか無理やり人の部位とか動物の手足をくっつけたような物体が存在している。。


「本当に気味の悪い連中だね」


ゼランさんはそう言って嫌そうな顔で見つめている。

うん。本当に気持ちが悪い。

なんであの付け方で別の部位が動くのかさっぱりわからない。

そんなことを考えていると、ノールタルさんがゼランさんに対して話しかける。


「そういえば、あの連中はバウシャイを襲ったんだろう? ゼランが見た魔族はいないのかい?」


あ、そういえばそうだよね。

ゼランさんはバウシャイに寄港中に襲われて脱出してきたって言ってたから、あの魔族の中に見覚えがある人がいてもおかしくない。


「……いるよ。衛兵をあっという間に殺した奴だ」


そう言ってゼランさんが指を向けた先には、腕が動物の太い腕に代わっている人がいて、ゾンビを食べながら歩いている。

……うん、やっぱり見ていると気持ちが悪くなってくるんだけど。

ゾンビをスナック菓子のように適当に食べていくとか意味わかんないし。


「本当に何が目的なのかわかりませんね」

「はい。この人たちはなんでせっかく手に入れた戦利品を消費しているのでしょうか?」


その光景をみて普通に感想をいっているリリアーナ女王とエルジュはきっと特殊だと思いたい。


「今回に限ってはその考察は無駄だからやめておいた方がいいぞ。偶然生きのこれば情報は集めてみるが、可能性は低いからな」


田中さんがそういうと本当に全滅するんだろうなーって思う。

やると言ったら絶対にやる人だから。


「そうえば、田中さん具体的なキルゾーンってあとどれぐらいなんですか?」

「そうだな。あのペースだと小一時間って所か」


意外と時間があるなー。

その間ずっと見張りか。


「幸い、馬鹿どもがこうして堂々と進んでくれているんだ。情報を集めておく。時間は少ないぞ」


ということで、僕たちは早速情報収集を開始する。

とはいっても魔族たちの行動はただの子供の遠足みたいで、いたずらにゾンビを壊したりして遊んでいて胸糞悪いことこの上ない。

さらには、領主軍、冒険者たちの亡骸をもてあそんでいるから僕としても怒りでどうにかなりそうだ。

でも、そこで……。


「あの魔族が何かしたら死体が動いたな」

「ですね。おそらくあの魔族がアンデッド化の魔術を使ったのでしょう」


そう、一人の女性の面影がある魔族みたいなのが領主軍の死体に手をかざすといきなり死体が動き出した。

これがアンデッドを作りだす方法?


「ですが、これで町全体をアンデッド化するのは無理かと……」

「だよねー」


あんな一人一人死体の前で作業するとか時間が掛かるし、町の人を余さず改修できるとは思えないよ。


「別の方法があるとみていいじゃろう。魔術とは効率化しないとすぐに魔力が枯渇するからのう。今回は情報でも得るためにゾンビ化をしたんじゃなかろうか?」

「ちょっとまて、爺さん。死体から情報を抜けるのか?」


マノジルさんの言葉に田中さんが鋭い目つきを質問をする。


「うむ。できるときもあればできないときもある。ほれ、ゾンビがどれだけ優秀かで変わるからのう。知性があれば喋ることもあるじゃろう。何せ死体は術者の言いなりじゃからな」

「なんともまあ便利なことだな」

「とはいえ、アンデッドになる元の素養の問題じゃからな。なんじゃタナカ殿は情報が漏れることを警戒したのかのう?」

「そうだ。情報が抜かれて俺たちの情報までたどり着くとは思えないが、罠と思われる可能性もあるからな」

「え? それってまずくない?」


下手したらこのままこの魔族たち逃げるかもしれないんだよ?

そう思っていると……。


「ああ、それは問題ない。もう、敵はキルゾーンに入った」

「「「え?」」」


唐突な宣言に僕たち驚いていると。

田中さんはタブレットをもって何かをタッチすると、前面モニターにカウントダウンが現れて……。


5、4、3、2、1……0。


そして……。


ズドーン!!


そんな大爆音がドローン越しでも聞こえてくるどころか、僕が使っていたドローンが爆風の衝撃に耐えられなくて墜落した!?

外のモニターも何機か墜落していて、あとは舞い上がった土煙で何も見えない。


「墜落した機体は消した。外周のドローンに切り替えろ。それなら安心して見れるはずだ」


そう言われてドローンを切り替えると、いまだに土煙が晴れない爆心地が存在していた。

一体どれだけの火薬使ったんだよ……。



とりあえずすべて吹き飛ばせば解決するっていいよね。

爆発オチってやつなのかもしれない。


え? ちがう?

とりあえずここで生き残れる魔族はいるのか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 手足を殖やしている魔族ですが、ついつい解剖学的見地で考察したくなります。 イラストでも有尾人とか有翼人とか、デザインやポーズ優先で、中の骨格がおかしく成っているのを見かけます。筋肉の付き具…
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