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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第291射:上陸前の打ち合わせ

上陸前の打ち合わせ



Side:アキラ・ユウキ



「本当に、無事みたいだな」

「ええ。よかったです」


俺と撫子はモニターの向こうに移るシャノウの港をみてほっとしている。

バウシャイの港町はまさにゴーストタウンになっていたから、ちょっと心配だったんだよな。


「だから言ったじゃないですか。大丈夫だって」

「ヨフィアさん。ありがとうございます」

「はい。信じることが大事ですね」


どうもバウシャイの光景がラスト王国の貧民街を思い出させてあれだったけど、ヨフィアさんはシャノウの町が駄目だったらどうしようと悩む俺たちに心配はいらないと航海中いってくれた。

おそらく相当暗かったんだろうな。

いけないな。ヨフィアさんたちに迷惑をかけている。

もっと、撫子の言う通り信じてちゃんと希望をもって顔を上げていよう。

田中さんを見習おう。何が起こっても動じないあの姿勢は見習うべきだ。


「ん? どうした、結城君?」

「いや、田中さんは動じないからかっこいいなと」

「ああ、まあこういうの慣れだ。いつか慣れる。慌てたところで現実は変わらないからな。嘆いて気分が落ち着くのを待つよりも行動を起こす方が大事だっただけってやつだ。そうでもなければ死体になっているからな」

「あはは……」


相変わらず帰ってくる返事はハードすぎるんだよなー。

とはいえ、田中さんがいるからこそこんな状況でも落ち着いてられる。


「で、田中さん。これからの会議はシャノウの港へどうアプローチをするかということですよね?」

「ああ、そうだ。まあ、前々からこれは決めていたことだが……」


田中さんがそう言いながら視線を向けるさきにはゼランさんが座っていて。


「私がまずは商会の連中を連れて自前の船で知り合いの商会に会いに行く」


そうゼランさんがはっきりという。

うん、確かに前々からこっちの人たちとの交流はゼランさんを通じてってきまっていた。

いきなり遠くの大陸からやってきましたなんて言ってもこの世界じゃ信じてもらえないから。

まったく、こういうのは面倒だよなー。

まあ、魔族って敵がいるんだし、あのシャノウの町も警戒している可能性もあるから、当然といえば当然なんだろうけど。

と、そんなことを考えていると、ゼランさんは説明を始めていて……。


「……ということで、今回は私が先に向かって知り合いの商会へ交易品をもって話し合いに行こうと思うんだけど、聖女様に、女王様、そしてお姫様は許可してくれるかい?」


話を有利進めるため、エルジュたちが持ってきた交易品を持っていきたいといっていた。

その希望を聞いた3人は悩むことなくうなずいてくれる。


「はい。構いません。もとより国と話ができないのであれば意味のないものですからね」

「ええ。そもそも、手付金というのも必要だと思っていますし」

「何より。この状況なら、恩を売れるというのもあるでしょう」


最後のリリアーナ女王はちゃんと今後のことも考えて頼もしいといえばいいのなか?

とはいえ、元からこういう交渉で使うことは考えていたようで、無理な出費になっていないみたいだ。

やっぱりお付き合いにはお金がかかるんだな。


「そして、護衛に、タナカ殿についてきてほしい」

「は? 俺か?」

「ああ、何があるかわからないからね。タナカ殿がいれば安心さ」


その言葉に、全員が納得する。

田中さんが一緒に行くなら安心できる。


「だめかい?」

「ふむ」


あれ? 即座にOKするかと思ったんだけど、なんか田中さんが考えこんでいる。


「何か心配なことがあるのでしょうか?」

「まあ、思うところはあるが、結局誰かが行かないといけないって話だよな」

「そうだね。あの町が敵の手に落ちているって可能性もある。だからこそ、タナカ殿がいると心強い」


うん。田中さんが行くなら何とかなるって思えるもんな。

それは光や撫子も同じ気持ちで、というか全員が頷いていた。


「わかった。俺も一緒に行こう。しかし、交渉事はしないぞ。俺にはそういう知識はないからな」

「ああ、そこは私に任せてくれ。じゃ、さっそく準備を始める。物資の方は……」

「今回は私の方から、ルーメルの方から出しておきます。こちらの顔を立てていただかないと問題ですから」


ルーメルの顔か。

ただ交易品を運ぶだけでも気にしないといけないっているのは大変だな。


「わかったよ。物資はルーメルのモノから持っていく。で、持っていくものだが……」

「それでしたら、そちらで価値の高い物を持って行った方がいいでしょう。その方が持ち物を多くもっていかなくて済みます」

「確かにな。あとは、武装が必要だろう。それがなければ舐められる」


そんな話をしながらゼランさんとユーリアはCICから出ていってしまう。

さて、残された俺たちは……。


「一体何すればいいんだろう?」

「なんだろうな?」

「何だろうね?」

「えーと、どうしましょう」


居残り組は何をしていいのかわからずに立ち尽くしていると、ゴードルさんが普通に席について……。


「じゃ、タナカ。おいらたちは周囲の方にドローンを飛ばそうと思うがどうだ?」

「ああ、頼む。町だけ警戒しても意味がないからな。しかし、ゴードルはもうドローンの使い方に慣れてるな」

「別にドローンを使い慣れてるってわけじゃなくて、目的地に行くときは周りの状況も確認するって戦いの中じゃ基本だべ」

「そうだな。ということで、結城君たち、ノールタルたちも次の行動はわかったな」

「「「はい」」」


相変わらず、引き続き偵察がお仕事みたいだ。

あー、これからつらい偵察作業か……。

光も、撫子も目から光がなくなっている。

まあ、当然だよな。何もない映像を見続けるのは本当につらいからな。

と、そんなことを考えていると、田中さん続けて口を開く。


「索敵場所を決めてローテーションを決めたら、全員休んどけ」

「え? どういうことだい? 私たちが直接ドローンで警戒しろって話じゃないのかい?」


ノールタル姉さんの言う通り、俺たちはこのまま地獄のドローン監視をすることになると思っていた。

なのに田中さんの口から出てきたのは、ローテーションを決めて俺たちは休んでおけって言ってる。


「いざという時は救出隊を出す必要がある。俺が向こうにいるんだ。こっちを動かすのは、このメンバーの誰かになるだろう。だから……」

「なるほど。その救出にすぐに動けるように私たちは休んでおくということですね」

「そういうことだ。いざという時に指揮官たちが疲れて寝ていますとかシャレにならないからな」


確かに、疲れていて正しい判断をくだせないっていうのはだめだよな。

田中さんは地図を広げて指をさしていく。


「それで、ドローンの監視範囲だが、こことここ、そしてここだな」

「なんでここだけ? 全周囲を警戒しなくていいの?」

「した方がいいが、今回の目的は敵の軍隊が向かってきているのを察知する事だからな。軍っていうのは、道がないところには特殊部隊でもなければ入らない。進行するトラブルが起こりやすいしな。だから、道がちゃんと作ってあるところを通る。つまり……」

「そうか、道を監視していれば、敵の動きがわかるっていうことか」


俺がそう納得していると、撫子は納得していないのか、難しい顔を口を開く。


「田中さん。軍隊はそれで発見できるでしょうが、バウシャイに攻めてきたのはごく少数だと聞いています。ノルマンディーへやってきた魔族もわずか一名。その監視体制では……」


確かに、撫子の言う通り魔族の連中は数人で町の兵士を圧倒するから、このままの監視体制じゃ無理があるか。

でも田中さんは特に困った様子もなく。


「別に魔族を探そうってわけじゃない。周りを包囲されるのを防ごうというだけだ。どうせ、監視をしようにも、発見したところで報告するのが俺とゼランぐらいしかいないからな。町の連中に忠告する術をもってない」

「確かに、そうだね。私たちが発見しても町では対処のしようがないか……」


あー、そういうことか。

ノルマンディーなら俺たちのいうことを信じてくれて避難とか、色々助けることができるだろうが、シャノウの町は信頼も何もない。

今回が初めての訪問だ。


「下手に忠告すれば魔族と組んでいるとか言われかねないしな。魔族が侵入して暴れてきた時は初めて聞いたふりをして、俺たちは撤退した方がいいだろう」

「え? 退治しないの?」

「俺たちが頼まれてもいないのに倒すのは問題なんだよ。まあ、ゼランが話を纏めてくれているのなら助けるのも手だろうが、それでも厳しいな」

「いやいや、田中さんならどうとでもなるでしょう?」

「俺がやったのがバレたら、ここでも主戦力扱いで常に最前線送りだぞ?」

「「「……」」」


あー、うん。それはまずい。

俺たちはゼランさんたちを助けたのは事実だけど、魔族と戦争をしに来たわけでないんだよな。

とはいえ、このままだとここに来た意味がない気が……。


「しかし、タナカ殿の実力を鑑みれば、ここで力を見せることでヒカルさんたちの帰る手段を見つけるためのわかりやすい一歩になりませんか?」


リリアーナ女王のいうことは一理あるんだけど、そうなると俺たちは魔族と全面戦争になるってことだからな。

田中さんはそこも考えているんだよなー。


「まあな。今後のこの大陸の国相手に優位に立ちまわるにはいいことだが、魔族の勢力や強さがはっきりとしないうちに安請け合いすると、使い捨てられるぞ? というか死ぬぞ」

「あはは、否定できませんし、私としても耳が痛い限りです。連合軍を率いてはいましたが、ナデシコたちが侵入しているというのも計算に入れていましたから」


田中さんの言葉に、エルジュも苦笑いしている。

とはいえ、ラスト王国に俺たちが忍び込んだのは自分たちの意思なんだよな。

あの時は必死だったけど、今考えるとかなり無茶していたよな。


「そういうことか、となると、私は無茶はいえないね」

「だべな。だからこそ軍での包囲だけは回避するって所だべ」

「そうなると、嫌でも俺の武装を使う必要があるからな。それかこの船から砲撃だな。うまく砲撃できるか?」

「「「無理」」」


速攻で答える。

敵軍だけを狙い撃てる自信はない。


「はぁ。どこかで兵装を使う訓練しとかないとな。ま、その時は遠隔操作で俺がやるか」

「あ、そういえばできるって言ってたね。ちゃんと使えるの?」

「多分な。ま、死ぬよりましだろう。ということで、色々起こる可能性があるから、そこは気を付けとけ。俺も準備に入る」


そう言って、田中さんが出ていってしまい……。


「じゃ、俺たちも準備しようか」

「そうですわね」

「うん。頑張ろう」


何事もないといいんだけどなー。



無事であれば、それはそれで警戒するご一考。

というか田中。

まあ、戦力は使われてこそですからね。

とはいえ、命を懸けるに値するかを調べることも必要です。


田中は上陸してどうするのか?


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