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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第223射:交渉の場へ

交渉の場へ



Side:アキラ・ユウキ



「あー。……眠い」


光が心底眠たそうに言う。

まあ、それも仕方がない。

既に日は沈んでいて、辺りは真っ暗。

今朝からずっとドローンを使って情報収集をしていたのだから目は限界だ。

普通なら監視のローテーションを組んで寝ている時間だけど、今日はそうもいかない。


「光さん。シャキッとできないなら寝てください。本気で邪魔です。今日の行動には町の人たちの命運がかかっているのですから」

「はい!! しゃきっとしました!」


流石に撫子も今日は光の冗談を流せる余裕はないようだ。

なにせ、撫子の言う通り、今から始める交渉の結果次第で、町の人の命運が決まるといっても過言じゃないからな。


「まあまあ、撫子。光なりに私たちに気を使っただけだよ」

「そうそう。ノールタル姉さんの言う通り! だから、撫子そんな怖い顔しないでよ」

「……はぁ。こんな時でもそんな状態を保っていられる光さんが羨ましいですわ。ねえ、晃さん」

「まあな。光の心臓には毛が生えているとしか思えないな」

「なにをー!? 僕はつるつるだー!!」


……なんか危険な発言な気がするけど、ここは触れるべきじゃないだろう。

そう思っていると、田中さんがこちらにやってきて……。


「さ、緊張もほぐれたところで、まずは、作戦の再確認だ」

「うわー。田中さんガチ装備じゃん」


光の言う通り田中さんはやる気の装備品だった。

どこかの戦争映画とかで見たことがある防弾チョッキに弾倉をたくさんつけて、迷彩柄の服にヘルメット、そしてアサルトライフルを持っていて、腰にはハンドガンが二挺ホルスターに入れてある。

どこかに戦争にいくのかという装備品だ。

で、そのフル装備状態の田中さんの反応はというと……。


「そりゃ、フル装備だよ。これからメルについていくんだからな。で、作戦の説明をしていいか?」

「あ、はい。どうぞ」


いたって普通だ。いつもの田中さんにしか見えない。

なのにフル装備でやる気は見えるというなんか不思議な感覚。


「じゃ、改めて説明するぞ。まず本部に残って双方の連絡を取る役割、情報司令部ってところだな。それが、結城君とヨフィア、リカルド、キシュア……」


俺たちの後には、魔族の女性たちの名前が呼ばれる。

結構人数が多いのは、ドローンで監視して現場のみんなに情報を届けるためだ。

で、現場に向かう人が……。


「で、外の食糧庫に向かうのは、光と撫子、ノールタル、セイールだ」

「おっけー。任せて。ちゃんとノールタル姉さんとセイールは守ってみせるよ」

「はい。無事に彼女たちを守って見せます」

「森の方に行くからな。速度も必要だが周りの警戒も必要だ。魔物が出てくる可能性もあるからな。で、交渉はノールタルとセイールに任せる」

「任せてくれ。ちゃんと成功させるよ」

「うん。まかせ、て」


田中さんが言うように護衛が光と撫子、交渉役でノールタルさんとセイールさんが森の倉庫の方へ行く。

正直、女性ばかりで心配だ。

ほんとなら、田中さんが護衛としていくはずだったんだけど……。


「本来なら俺が行く予定だったが、メルが実家の協力を得られそうだからな。そっちにいく。普通なら時間を掛けるところだが、今回はそうもいかないからな」


そう、田中さんはメルさんの家族を頼りに、富裕層でのレジスタンス活動の交渉に行ってくるつもりだ。

もう連合軍が進軍してきているから、メルさんの話はこっちとしても嬉しかったんだけど、代わりに森の方へ向かう戦力が少なくなってしまった。


「まあ、そっちは女性だけの方が警戒されないだろうからな。敵に見つかっても倒す以外の方法があるかもな」


田中さんは俺の心配をよそに、そんなことを考えている様だ。

確かに、男よりも女性のほうが相手も警戒しないよな。

特に光とノールタル姉さんはどう見ても子供だし……。


「晃。なんか変なこと考えなかった?」

「そうだね。私たちを見る目がなんか怪しかったね」

「いやいや、心配してただけだよ」


本当にそうだ。

子供にしか見えないから、相手も軽く考えるだろうしな。


「だから、田中さんは大丈夫みたいに言っているけど、敵に見つからない方がいいに決まっているからな」

「ま、そりゃそうだね」

「兵士を一人二人どうにかしても、状況が変わるわけでもないからね」

「でも、そういう不意の遭遇を避けるためにも、ここで映像監視をしている晃さん、お姫様たち、頼みます」

「おう。任せてくれ」

「はい。お任せください」


今日はお姫様も起きて参加していることから、どれだけ真剣かわかるだろう。


「雑談はいいとして、この外に出るメンバーはレジスタンスを作るための交渉だ。方法は任せる。なるべく敵を作らないような」

「「「はい」」」

「時間制限は2時間。絶対に長引かせるな。援護にも限度があるからな。難しい気もするが、現地人の協力もあるから、なんとかやれることを祈ろう。では、作戦行動を開始まで、あと……」


あと、作戦開始時刻まで10分。

意外と余裕があると思うべきなのか、それともたった10分なのかわからない。

だけど、これからラスト王国の住人の命運をかけた作戦が始まる。

俺が全体の情報管理。

……やれるのか?

今更ながら、重要なところに自分が配置されたことに対してプレッシャーを感じてきた。

そんなことを考えていると……。


「ま、落ち着いてやればいい。特に俺とメルの方はそこまで気を配らなくていい。何かあれば連絡をする。結城君はルクセン君たちの方を注意してやるといい」

「田中さん。でも、大丈夫なんですか?」

「情報が欲しい時は連絡するって言っただろう? ルクセン君たちはこういう作戦行動は初めてだからな。どこのタイミングで情報を聞いていいかわからないはずだ。そこを結城君が補ってやるといい」

「なるほど。でも、俺もそこまで情報を上手く伝えられるかどうか……」


なにせオペレーターの経験なんてないからな。


「慣れだ慣れ。今回の事を経験にするといい。色々言ったが問題はそうそう起こらんさ。何かあれば俺に情報を回してくれれば指示も出すしな」

「わかりました。その時はよろしくお願いします」


少し気が楽になった気がする。

と、そんなことをしていると、残り時間が……。


「作戦開始まであと3分。そろそろドアの前に行くか」

「「「はい」」」


いよいよ作戦開始時間が来る。


「結城君。近くに見回りの兵士とか人影はないか?」

「あ、はい。特に映像には映っていません。リカルドさん、キシュアさんは?」

「こちらも問題はありません」

「同じく、こちらも問題はありません」

「よし、じゃ後は頼むぞ。あ、しつこいようだが、この拠点が襲われた時はさっさと逃げるように。俺たちがいないときに襲撃されるってことは、相手に動きが筒抜けと思った方がいいからな。迎撃するよりこっちに連絡して逃げろ。その場合の集合場所は……」

「わかっています。ゴードルさんのところですよね?」

「そうだ。さて、おっさんのくどい話はここまでだ。作戦開始まであと30秒」


カウントダウンが始まる。

30秒を数えるだけのことなのに、やけに長く感じる。

その時間ただ一点だけを見ていることが出来ずに、光に視線を向けると、光も落ち着かないようでこっちを見てきて親指を立てる。

俺も同じように親指を立てて返す。

そして、光と一緒に撫子に視線を向けると、撫子もこちらに視線を向けていたようで、苦笑いしながらそれでも親指を立ててくれた。


「なんだい。結構余裕があるじゃないか」

「結構なことだ。さ、5、4、3、2、1、ゼロ。作戦開始だ」


ノールタルさんと田中さんは俺たちの姿を見てそう言っていると時間が訪れた。


「よし、メル。行くぞ」

「はい」


田中さんとメルさんが先に外へと出て夜の闇に消えていく。

ドローンでは確認できているからいいか。


「では、私たちも行きましょう」

「おっけー」

「ああ、行こうか」

「はい。いきましょう」


そして、田中さんの後を追うように撫子、光、ノールタルさん、セイールさんも外へと出ていく。

で、残った俺はすぐにドアを閉じて、振り返り……。


「状況報告」

「周囲に敵影なし」

「タナカ殿たちも問題なく進んでいます」

「ヒカリ様たちも問題ありませんわ」

「よし、じゃみんな二階に戻って引き続き警戒だ」


俺がそう言うと全員頷いて、二階へ戻っていく。もちろん一階にはトラップが仕掛けてある。

田中さんが出ていくときに言ったけど、俺たちが襲われる可能性もあるから、一階で足止めをできるようにそういう準備はしている。

最悪フラッシュグレネードも預かっているから、なんとかなるとは思う。

まあ、その時は田中さんが言ったようにもう詰んでいるから、色々あきらめないといけないんだろう。

……と、そんな嫌な想像をする前にやることをやらないと。

俺はそう切り替えて、椅子に座って改めて状況を確認する。


「田中さん、光たちは?」

「タナカ殿たちは既に貧民区を抜けています」

「ヒカリ様たちも防壁を越えて森へと進んでいます」


早いな。

いや、これぐらいの速度じゃないと無理か。

レジスタンスを作るための説明と協力を求めるんだから。

……普通に考えてたった2時間でレジスタンスなんてできるわけない。

……ん? 今思ったけど、たった2時間でレジスタンスなんてできるのか?

ああ、いや、きっかけを作れってことだよな。

普通に考えて組織が2時間でできるわけもないし。


「城の動きは?」

「特に動きはありません。デキラが出てきた様子もありません。もう少しドローンが近づければわかるかもしれませんが……」

「いや、それはだめです。デキラたちにいま俺たちの事に気が付かれるわけにはいかないですから。キシュアさんたちは俺たちのいる拠点と周りの様子を、引き続き警戒お願いします」

「わかりました」


そう、色々やることはあるけど、慌てる必要はない。

まずは、目の前のことを着実にこなす。

俺がやることは有事の際の指示だ。

何もない方がいい。

そう思っていると……。


「タナカ殿たちが、メル殿の家に到着したようです」

「こちらもヒカリ様たちが食糧庫の方に到着したようですわ」

「早いな本当に。よし、リカルドさんはそのまま田中さんたち周囲の監視を。俺たちは光のサポートに集中する。何かあった場合は、光たちが優先。田中さんたちは何とかするって言ってるからな」

「「「了解」」」


とりあえず、無事に到着したみたいだ。

交渉は頼んだぞ光、田中さん。

どうか無事に出てきてくれ。俺はそう願いながら、タブレットで監視を続けるのであった。





こうして二手に分かれて、状況の確認と協力の要請へ動く。

果たして上手くいくのか?

そして、連合軍が到着するまでにレジスタンスの結成は成るのか?


あ、そしてご報告、ちょっとした事情がありまして、未だに週一の更新速度となっております。

理由はあと一か月もすればわかるのではないかなーと思います。



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