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Where Or When  作者: 春隣 豆吉
深緑色にとらわれて
20/32

改革のスカート丈

「この世界にガーゼ素材がある…わわ、チェックにストライプ柄まで!!この生地もかわいい…」

 キワが生地見本を見て歓声をあげた。なるほどあの肌触りがよく涼しげな素材は異世界にもあるのか。ガーゼって呼ばれてるのね~。あ、フロリーになんて名前の生地か聞くの忘れてしまったわ…ま、ガーゼでいいか。

「ねえキワの世界ではガーゼって素材はなにに使うの?」

「もういろいろだよお。包帯につかったり普通に洋服や赤ちゃん服に子供服、それにパジャマとかね。肌触りがいいからって人気の素材だよ。寝具にだって使われるし。私も夏になるとガーゼケット使ってたもん。あーあ、向こうから持ってこれたらいいのに」

 そう言ってため息をつくキワ。よっぽどその“ガーゼケット”が気に入っていたみたい。

「こっちで似たような物が作れるんじゃないかな。なんだったらうちの店で作るわよ」

「え!ほんと?!あ…でも私の給金で払えるかしら」

「そこは見積もりだすからさ、検討だけでもしてみたら」

「そうね、お願いしてもいいかな。色はこの色で…」

 そう言ってキワが説明した“ガーゼケット”なるものはガーゼを何枚も重ねて縫い合わせるもので、薄くて軽いらしい。これって夏に売れそうな気がする。まあそれはともかく、キワは自分で支払う気満載だけど、ヴィンシェンツ様が知ったらそれはないだろうな~。

 “そんなにキワがほしかったとは知らなかった。俺がプレゼントするよ”とか言って知らないうちに支払済ませてそうだよな。で、それを知ったキワが怒ると…想像できちゃう。

「フラン、どうしたの?」

「へっ?!ああ何でもない。さて、スカートの生地もついでに選んでみてよ」

「あ、この薄いグレーに紺色の細いストライプが入ってる透け感のある生地がすてき」

 そう言ってキワが手に取ったのは実は私が一押ししようと思っていたやつだった。


「よかったー、それをオススメしようと思ってたんだよ。それ1枚だとちょっと透けすぎなんだけど、こっちのグレーか白の生地を下に重ねて、歩くたびに優雅に広がる感じにしようかと思ってるわけよ」

 そう言って、昨日ぱっと思いついて書いたデザイン画を見せる。スカートは動きに合わせてエレガントに揺れる感じに。

「うっわー、素敵!!これいいじゃない!!この生地も手ざわりいいのね。さらりとしてる」

「そうなのよ。私もその手ざわりが気に入ったの。で、アクセントに同じ布でリボンを前結びにつけるわけ。で、スカート丈なんだけど、思い切ってミモレ丈にしてみようと思ってるのよ」

「ええっ、急に短くなるね」

「100年前に異世界から人がやってきたときにこの国の生活はいろいろ変わったと聞いてるわ。ということは異世界から来たキワがこの国で生活している今が改革のとき!!キワが教えてくれたスカート丈と、ガーゼを始め生地の種類が増えてきているこの状況はまさに好機!!ただねえ、これに伴って問題が浮上してるの」

「そんな大げさな。問題って?」

「ミモレにすると、靴が丸見えでしょう?今、靴といえばこの黒のぺたんこが主流だわ。だけど、服によっては似合わなくなる可能性がある。ねえ、キワの世界の靴ってどんなものがあるの?」

「それはもういろいろよ。でもねえ、私の持論だけど靴は黒とベージュと茶色があれば何とかなる。それに、この靴は私の世界でいうところのバレエシューズに似てるから服を選ばないかも。フランたち側室様がはいてたようなかかとの高い靴もあるし、夏用につま先やかかとが開いてるものもあったし」

「もしかして異世界って服飾の選択肢がものすごく豊富?」

「そりゃもう千差万別だよ。でもね、一定の流行があってだいたい皆同じような恰好が多いから、この世界と変わらないよ」

「そっか。なんか安心した。じゃあまずは、このスカートを完成させるから着てみてくれる?」

 私はキワに改めてデザインを見せた。

「うん、いいよ。下のスカートはグレーがいいな。同系色のほうが上の柄が変に浮かないと思う」

「なるほど、このスカートなら紺とか白、はっきりした色のブラウスでもいいわね。襟なしのふんわりしたものでも、襟付きのかっちりしたものでも似合うよ。ついでにブラウスも作ってみていいかな」

「うん、フランに任せる」

 キワと私は顔を合わせて笑いあった。


 細かいところを打合せしてキワが帰ったあと、私は改めてデザイン画に取りかかった。今までのマキシ丈のスカートも好きだ。でも、選択肢がいろいろあってもいいんじゃない?

 そんなことを私の服で訴えることができたら素敵過ぎる。わくわくしてたらアイデアだって湧いてくる。私はひたすらデザイン画を書き続け…気づいたときには怖い顔したフロリーが食事を載せたお盆を持って目の前に立っていた。

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