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学年一の美少女が僕に惚れてるなんて信じたくない!  作者: 蒼原凉
どうして義妹(姉)ができるんだ!
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前提から間違ってません?

 断る理由もないので、僕は結局旅行についていくことにした。樟葉先輩も行くらしく、深草さんと山科さんには十条さんから話をしておくとのことだった。まあ、その辺はもう任せよう。温泉地だという話なので、僕はゆっくり羽を伸ばせばいい……はず。複雑なことは考えないようにしよう。

 なのでとりあえず考えないように帰ることにした、つもりだったのだけれど。

 

 運命は僕に安息の時を与えてはくれないらしい。

 というのも、山科さんが僕の家の前で待ち構えていたからだ。いつかのごとく。

「伏見悠杜、前も話をしましたが、あなたはお姉さまの横に立てる人間です」

 嫌な予感がする。

「ですから、新たな計画を進めようと思います。確か、あなたの家はシングルファザーでしたよね?」

「そう、だけど」

 ただそれだけで偏見を持ってくる人とかいるかもしれないからあまり話さないようにはしているけれど、それがどうかしたのだろうか。というか、何が言いたいんだ?

「ちょうどよかったです。私もシングルマザーなのであなたの父親と結婚させるのに協力してください」

 は?

 何言ってるんでしょう、この人。

「いや、あの、どういうことですか?」

「ですから、あなたの父親と私の母親を結婚させる計画に協力してくださいと。つまりは、私があなたの義妹になるわけですね」

「いや、義姉だから」

 というか、そもそもどっから湧いて出てきたこの話。ですからって、なんで新たな計画になるんだ?

「そこはどうでもいいのです。重要なのは、親族になるということなのです!」

 力強く力説されても困る。そりゃ、山科さんくらいの年齢の子どもがいたら、二親ともいた方がいろいろと都合がいいとは思うけれど、だから何で僕なんだ? 意味が分からない。

「あの、ちょっと何が言いたいのかよくわからないです」

「ですから、伏見悠杜、あなたの義妹になれば私は真の意味でお姉さまの義妹になれます」

 ……なるほど。まったくわからん。

 何がお姉さまの義妹になる、だ?

「はあ、まったくわかっていないようなので説明しますが、あなたとお姉さまが結婚すれば、戸籍上でも私はお姉さまの義妹になれるというわけです」

「ふえぇぇぇ!?」

「お姉さまを慕う人々の中でも、私は真の意味でお義姉と呼ぶことができるわけです。これに勝る幸せがあるでしょうか、いや、ありませんとも。これは私と伏見悠杜の問題ですし、親衛隊の規則にも抵触しません。ですから、この計画をなんとしてでも成功させるのです!」

 け、けけけ結婚って、どういうことだよ!? というか、山科さんは僕たちをどういう中だと思ってるの!?

「頭が痛い! 割れそうだよ!」

 ああ、僕の脳が思考を拒否してる! 変なこと言わないで!

「あなたはお姉さまと一緒になるに足る人間です。ですから、こうして計画を」

「ああ、聞こえない聞こえない! 聞こえないんだから!」

 そんな話聞きたくないから! というか、やけに意味深な台詞は、そういうつもりだったの!?

「ですから!」

「嫌だ! 聞きたくない! というか、深草さんが僕に惚れてるはずなんかないんだから!」

「ここまで行くと筋金入りの馬鹿ですね。本人に許可はされてませんし」

 なんか言ってるけど聞こえないんだから。そんな話信じないんだから!

「ともかくです!」

 痛い! つま先踏みつけないで!

「話を聞きなさい!」

 嫌だ! 面倒ごとのにおいがする! 聞きたくない! 耳ふさいでるから聞こえないからね!

「だからその手を耳から外しなさい!」

 実力行使されても、絶対に外さないんだから!

 

 

 

 結局、帰ってきた父親にその様子を仲裁されて、話だけは聞くことになった。聞かされることになった。ちなみに、本人抜きで。

「簡単に言えば、計画というのは私の母親と、伏見悠杜の父親の関係が上手くできるように子どもの私たちがアシストしようということです」

「それ、僕にメリットってあるの?」

「大してありませんがそれが何か?」

 言い切りやがった! こいつ、言い切りやがった!

「まあ、別に協力することはやぶさかではないんだが」

「では、よろしくお願いしますね!」

「本人次第だからな!」

 本人たちほっといて勝手に話を進めるな! そりゃ、僕の父親が再婚することに反対はしないが、だからといって無理強いはよくないと思うぞ。

「わかってます。あくまでも、さりげなく、気を引かせてください。食卓で私の母親と会ったことなんかを持ち出してもいいと思いますよ」

「言っとくけど、成功しなくても僕のせいじゃないからね」

「わかってます。しかし、成功すれば、私たちは義兄妹です。あなたとお姉さまが結婚するのでこれで私の計画は完璧です」

「あの、前提から間違ってません?」

「間違ってません!」

「違うからね! 僕は認めないから!」

 その後、うるさいと飛び出してきた父親に、僕は止められることになるのだった。別に家族が増えることに反対はしないけど、深草さんが僕に惚れてるなんて信じたくないんだから!

たぶん、この章はこれがメインストーリーになると思います。

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